第1章ー1
こんにちはー、これからはちょくちょく更新していきたいと思います。
ーーいつも、 見上げた空はからりと晴れ、青々と広がっていたーー。
いつも、いつも、自分はなにかに追われ、追い詰められて、必死に逃げるように走っている気がする。
引っさげた登校鞄を蹴りながら、中学校の制服を着た少年ーー白崎白夜は既に高く昇った太陽を睨見つけながら、全力で学校へと続く道を走っていた。
今年で中学生になった白夜は、親に送ってもらって間に合った入学式を除いて、ちゃんと時間通りに登校出来たことなんて、片手で足りる程度しかない。今日も、昨日と一昨日と似たような状況下で、街路樹がざわめくのを耳にしながら、こうやって真新しい制服に包まれた脚と腕を動かしていた気がする。これぞ負のループという奴だ。
自分で褒められ点といえば、毎朝ちゃんと朝ご飯を食べて、スッキリとトイレを済ませてから学校へ行く点であり、比べて反省すべき点は、寝癖を整えずにただでさえ剛毛を決め込んでいる黒髪がぴよぴよと跳ねている事だ。白夜の髪はその上、白髪が多く、白髪を抜くことを怠れば、瞬く間に繁栄を許してしまうことになる。白夜はそれをして、学校で笑われるのが大嫌いだ。
何とか、白夜は学校前の坂を駆け上がると、靴が上下逆の状態などお構いもなく、未だ慣れない少し背の高いロッカーに脱いだスニーカーを突っ込むと、この中学校の最上階にある四階の教室を急いだ。気も遠くなるような折り返しのある階段を抜けると、吹き抜けになった開放的な廊下が視界一杯に広がる。脇に設置された水場では、蛇口の筒が日射で眩く輝いている。
白夜はどたどたと廊下のコンクリートを走り抜けると、目当ての教室の扉を、息付く間もなく開け放った。
「おはよぉございます!!」
「……こんにちは、白崎白夜君。」
白夜がせめてと礼儀良く、大きな声で挨拶すると、担任の池田が薄いフレームの厚いメガネレンズの奥で、にっこりと笑い返してきた。手に持ったチョークはぱき、と音がなったような気がしたが、白夜は気にしない。
「こんにちは!!」
白夜は真面目に言い直すと、池田はぱっかりと割れた前髪をおでこに撫でつけながら、溜息を吐いた。
「……相変わらず、君は皮肉も通じませんね。」
あはは、と教室が軽く湧く。白夜の遅刻した事を笑ったというよりも、いけ好かない担任に一つ膝を地につかせたことが、この時間の何よりも痛快な出来事だったことで起こった笑いであった。
「すみません。」
白夜はしおらしく謝ると、もういいでしょう、と池田は顎で白夜の席を指した。池田の眉根をやや下げた情けない顔は、明らかに諦観を表していた。
白夜がよろよろと席に座ると、隣の女子がくるりと片手のシャーペンを回して、笑った。
「あんた、サイコーだわ。」
「ありがと。」
しかし、白夜は少しも褒められた気はしなかった。
「白夜!」
キーンコーンカーンコーン、と相変わらずどこにでも流れる授業の終わりを知らせるチャイムは、白夜の張り詰めた意識を解すのには十分だった。そんな中、大きく溜息を吐いて、机に顎を立ててうだりだした白夜の名を呼ぶ声が、窓の方から聞こえた。
白夜ははっと身を起こし、声のした方へ思い切り振り返ると、そこには、一人の見知った少年がニッカリと笑って手を振っていた。
「よっ、元気か?」
白夜は元気一杯なのに、どこか落ち着いた彼の声に頬を緩ませると、記憶にある彼の名を呼んだ。
「海暗」
少年ーー黒宮海暗は後ろに低く括った長髪を靡かせながら白夜の元まで歩いてくると、呆れたような顔で、くすりと笑った。
「その様子だとーー、元気そうにないな。」
「……あるわけないでしょ。」
そう言って、白夜はポリポリと頭を掻いた。頭には鞄の中にしまわれた、数枚のとある紙の事で一杯だった。
二人は鞄を持って、そさくさと中学校のもんをくぐると、坂を降りた先の川辺の草原に訪れた。
どかりと向かい合うように座ると、自分の鞄を中央に引っ張ってきて、とある用紙をせーの、で足元の草の絨毯に叩きつける。白と黒と赤のコントラストが少し頭の低いオレンジ色の太陽できらきらと輝く。
ーー叩きつけたものは、毎週定期的に行われる小テストの答案だった。
二人は互いのテストを舐るように眺めると、一つ喉をどちらからともなく鳴らすと、堰を切ったように、お互いの公表を始めた。
主人公は白崎白夜君です。友達は黒宮海暗君です。
まだまだ、でます。
全然、ファンタジーじゃないですね……がんばります。