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帰還

 その後、幼女をゲイリ-さんが抱え、俺は水が滴る汚い男コーネリアスを背負って、クラウディア邸を脱出。アリスはスヤスヤと寝ているエスタちゃんを叩き起こして、その場を離れた。



「じゃ、ラルフ君。そいつ頂戴!」

「ああ、はい……」


 アジトに着くや否や、ゲイリーさんは幼女を降ろし俺からコーネリアスを受け取った。


「ゲイリ-さん、何をするつもりなんですか?」

「何って……ナニに決まっているじゃない……うふっ」

「えぇ……」


 なぜか腰をくねらせるゲイリーさん。正視に耐えかねる光景だ。


「マスターの専門は拷問よ。あんたもやってもらったら?」

「いいわよん! ラルフ君ならいっぱい可愛がってあげるからいつでもいらっしゃいね」

「え、遠慮しておきます……」


 ゲイリ―さんのウィンクを苦笑いしながらそれをかわす。大体何をされるかが想像できてしまった。もし俺の正体がバレたら……これ以上考えるのは止めよう。


 ゲイリ-さんがコーネリアスを抱えて地下に潜っていった。そして、しばらくすると――。


「うわあぁああああああ!!!! マ”マ”ァアアア――!! マッッッマぁぁぁぁぁああああああーー!!!!!!!!」

「うっ……」


 何も聞かなかったことにした。が、幼女はひどくおびえた様子だ。


「ううっ……」

「大丈夫だからね。心配しなくてもいいからね」


 あんな絶叫を聞いてどれだけ信用できる言葉なのかは分からなかったが、とりあえず、声をかけるしかなかった。


「あ、あのお兄さん……」

「どうしたのかな? ええっとお名前は……」

「みう……」

「ミウちゃんって言うんだね。可愛い名前だね。俺はラルフっていうんだ。よろしくね」

「よろしくお願いします! お兄さん……」

「ちょっと……」


 アリスが会話に割り込んでくる。なぜかその視線は冷ややかだ。俺何かしただろうか……。


「あんたも小さい女の子に変な事したら許さないから」

「するわけないだろ……」

「本当に?」

「本当だよ……」

「……あっそ……今日の活動はもう終わりだから帰っていいわ」


 この女。魔力を使い切って助けたというのに、なんていう横暴な態度なんだ。少しぐらいはねぎらってくれてもいいのに。


「お兄さん、お疲れ様」

「ああ、ありがとうミウちゃん……」


 それに比べて、ミウちゃんンはもう天使か何かだろうか。でも、これに甘えていると、コーネリアスのようになってしまうんだろうな。魔性の女だよ、ミウちゃん……。


 ミウちゃんに頭なでなでをしてもらい癒された。が、冷たい視線を突き刺してくるアリスに気づいて咳ばらいをし、ごまかす。

 ミウちゃんはアリスを怖がって、部屋の隅のソファーに隠れてしまった。


「ところで、ミウちゃんはこれからどうするんだ。まさか、そこらへんに放り出すわけじゃないだろう?」

「ええ、うちで面倒を見るから安心して。このロリコン」

「だから、俺はそう言うのじゃないから!」


 でも、ミウちゃんの生活が保障されるなら安心だ。俺も身バレする危険があるため、ミウちゃんを預かるわけにはいかないし。だから、ミウちゃんには悪いがこの女に慣れてもらわないといけない。


「そんなことより……帰る前に血を補給しときたいんですけど……」

「え? ああ、エスタ」

「……」

「エスタ―ってば、起きなさい!」

「あ、はい! ご飯にしますかお風呂にしますか?」

「もう寝ぼけて。こいつが血を吸いたいみたいから服を脱ぎなさい!」

「え、ああ、分かりました」

「ちょっと、待った!」


 俺は脱衣しようとするエスタちゃんに待ったをかけた。


「何よ。服が汚れたら嫌だって言ったじゃない」

「違うって。ここだとミウちゃんが見ちゃうかもしれないだろう。せめて別の部屋で」

「あんたね。血を吸うだけよ……何もいかがわしいことをするわけじゃないんだから……」

「ああ、分かってるけどさ。俺が血を吸うことをあんまり他の人に見られたくないんだ」

「あっそ、じゃあ、あっちの部屋でやってこれば」

「ああ。ごめんね、エスタちゃん」

「いえ……」


 俺はエスタちゃんと別室に移動。そこで服を脱ぐエスタちゃん。服の上からは分からなかったが意外とナイスバディだ。


「じゃあ、失礼します」

「初めてなので優しくしてください……」

「お、おう……」


 俺は彼女の柔肌に歯を立てた。彼女が吐息を漏らす。


「うう……んん……」


 甘みと酸味が口内に広がっていく。うん、新鮮な味だ。サラサラとしていて飲みやすい。うーん、上手い。


「ん……んんっ……んあっ!」


 一口飲むごとに力がみなぎっていくのがわかる。魔力が体に充填されて、疲れが体から溶けてなくなっていく。


「あ……はぁはぁ……あっあっ……ああっ!」

「って、何してるの! 二人ともっ!」

「え、何って、血を恵んで……」

「そんな感じじゃなかったわよ。エスタ!」

「ごめんなさい。血を吸われるのって、トリップする感じがあるみたいなので、つい……」

「つい……じゃない! もういいわよね。今日の輸血は終了! じゃあ、次は毒よ、エスタ」

「はーい……」

「そうか。毒カ……」


 そうして、また俺は体をボンレスハムのように縛り上げられると、魔力に反応する毒を飲まされた。今日の活躍じゃあ、まだまだ信用が得られないってことか。長期戦になりそうだな。


「じゃあ、明日の夜くらいにまた来なさいよ。何か動きがあるかもしれないから」

「分かった。じゃあ、また明日」

「お疲れ様でしたー……」


 エスタちゃんに見送られ、俺はこっそりと王宮に戻った。しかし――。


「もう! どこ行っていたんですかっ! ロイ様ぁーー!!」

「ごめんごめんって」


 が、抜け出していたことがバレていたらしく、クリスにまた泣きつかれてしまったのであった。

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