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3 センジ、戦う。(湖は鏡にはならないよ)

 

 【四ツ目熊】と会って二日、それからも何度か格上の獣と遭遇しかけた。


 けど【霊感】にも慣れてかなり離れた場所からでも正確に察知出来る様なったし、咄嗟に使えるようなった【保護色】と【超五感】を組み合わせて安全に逃げれてきたよ。


 小動物は数匹見かけたんだけど、恐怖は感じず……むしろ野生動物とはいえ有り得ない距離からコッチを感知し逃げていくんだよね。 もしかして【霊感】を使ってる?

 だとしたら【霊感】は格上にしか働かず、格下には使えないのか……ん?



『グルル……』



 初めて見る、小型犬以上中型犬以下サイズの狼っぽい生き物だ。

 【霊感】を感じないから格下───



『グオォォ!』



 おわっ!?

 【狼擬き】の足元の土が盛り上がったかと思うと、その土塊が飛んできた! 何だ今の……もしかして超能力?

 なんで格上の俺を襲って……?


 よく見ると目付きがおかしく涎もダラダラと垂らしてるし、狂犬病か?

 なら絶対噛まれちゃイケないぞ。

 確か狂犬病ウイルスは唾液にも含まれていて、噛まれたら傷口から感染し致死率は非常に高いとか。


 だけど逃げようにも幼児と狼の足じゃあな……隠れるのも無理っぽい。 【狼擬き】の方が格下だから、【霊感】で俺の位置は丸分かりで【保護色】も効かない。


 なら運動神経で倒すしかない、か。

 取り敢えず杖、兼、武器の棒を構える。

 コッチは幼児だしパワー攻撃は意味がない。 格闘技をやってた頃、一番小さかったのに一番強かった磯山君は手数の多さと正確に弱点に当てる動きが凄かった。

 磯山君と比べても、このホムンクルスの体の運動神経は負けないだろう。



『ギャイン・・ッ』



 【狼擬き】は離れてると土を飛ばしてきて、近いと牙や爪で攻撃してくる。

 慣れると見切りやすい単純な攻撃なので、楽々かわしつつ八度目の攻撃が脳天に決まった時……ソレは起こった。

 【狼擬き】が輝きながら消えてゆく。

 最そして最後の光の中から、【石】が落ちる。




「この【石】は───わっ!?」




 掴んだ手に【石】が吸い込まれた。

 そして産まれる充実感。

 ……今、俺はこの【石】を食ったんだ。

 ホムンクルスは、パンを食わずにこの【石】を食うんだ。


 屋敷で、骸骨の机の上にパンがあったということは……この宇宙の生き物が皆【石】を必要とする訳じゃないと思う。けどあの【狼擬き】が【石】を落としたってことは……奴も【ホムンクルス】なのか?


 ……あー、駄目だ。

 この手のファンタジーはさっぱり分からん。 元妻はそういうのが好きだったんだけどなぁ……。

 俺が知ってるのは───

 魔女が配達するやつは、なんかTVCMでデッキブラシを使って空飛んでたし、魔法の学校のはやっぱTVCMでホウキを使って空飛んで虫を必死こいて追ってた。


 子供の頃に母の付き添いで見た、嫁一家が魔法使いの番組も……誰かや何かをワープさせたり変身させたりしか覚えてない。

 どれも超能力の参考には成らないね。

 取り敢えず念じてみる。


 棒にまたがって、飛べ!

 ……飛ばない。

 土、飛べ!

 ……飛ばない。

 俺、行け!



◆◆◆



 ソレからも【狼擬き】の他、風を飛ばす【兎擬き】、水を飛ばす【よく分からんブニブニ】といった【霊感】が働かない格下が襲ってきた。


 どいつも共通してるのは───

 目付きや挙動がおかしい。

 異様な迄の殺意。

 超能力を使う。

 仕留めると光って【石】になる。

 ──ってトコか。


 自然界の動物は、自らの危険をかえりみずに獲物へ固執するといった事はない筈。 やっぱ【石】を食う生き物は、普通とは違うのかなぁ。


 ……んで、【石】を食わずに触れる様になってきた。

 普通食うならクチからだよなと咥えてみた所、一瞬甘みを感じて消えたんで練習。

 今は飴玉代わりに舐めている。

 幼児だからかなぁ……甘いのが嬉しい。

 自分で凄ぇニコニコしてるって分かるんだよね。


 今、本物の飴をくれるっつったら知らないオジサンについて行きそうで恐えぇよ。



◆◆◆



 麓の湖に着いた。

 喉も乾いたし、水筒の中身を補充したいんだけど……細菌とか恐いんで煮沸しなきゃ。


 水を汲もうとして、まだ自分の顔を見てないことを思い出したんで湖を覗いてみるも───この体勢だと自分自身に光が遮られる上、mm単位の波が立つ。

 ソレだけで顔の細かいパーツが分からない。


 仕方無く鍋に水を汲み、素人知識ゆえの悪戦苦闘をしながら煮沸に火の準備をしてると───



『~~~~?』



 街がある方から、ボロボロの作務衣みたいな服を着た左腕が無いジイサンとその孫らしき幼女が籠を背負って歩いてきた。

 野菜か薬草かな?

 背負い籠に例の山で見た気がする植物を入れている。

 ジイサンが朗らかに話し掛けてくるけど……やべえ、日本語じゃない。

 

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