19◆センジ、偉そうになる。(でも締まらない。)
19◆センジ、偉そうになる。(でも締まらない。)
◆◆◆
『ホムンクルス軍、伏兵に気づいていたと思われる動きで次々と此方の出足を止められて──』
『戦場の真反対を正確に理解しているとしか思えない動きで連携され──』
『おのれぇぇ・・たかがホムンクルス如きが率いる【軍擬き】に、何故こうも此方の動きが読まれる!?』
『敵総大将の異常な意思疎通能力の噂・・本当だったらしいですな』
『馬鹿を申せ!
この距離で此方の動きを正確に察知した上、一瞬で戦場の全てのホムンクルスに指示を出している、など・・!』
『防壁、破られました!
まるで戦場の全ての僅な乱れを正確に見抜いているかのような──』
『止まら・・ない・・!?』
『化け物──』
『クソッ・・正当なる継承者たる我から聖剣を長く奪っていた薄汚い盗っ人共ごときがあぁぁ・・っ!
副長、何をしている!?
さっさと全軍による総攻撃の準備に行けっっ!!』
『はっ!
(・・矢張、本当だったようだな。
敵軍にはこんな・・偽者ではない、本者のグランドマスターが二人居るという噂は・・)』
『我が・・我こそが真の──』
◆◆◆
《北北西592番隊、その角を曲がったら敵軍の横腹に出るよ》
《北東214番隊、そこのちょい右・・もうちょい・・うん、そこ敵軍の隙間だから》
《ソコで上手く撹乱して・・はいソコー、敵の落とし穴に敵を落としちゃって》
俺は目の前のシンドラ連合国軍をみすえ、周囲四十kmを【探索】する。
【探索】ってのは格下には効かなかった【霊感】と【テレパシーネット】と組合せて更に鍛え上げた超能力で、大概の戦場なら敵味方共に把握出来る。
ウチが人間の軍と違うとこ──
それはウチの軍が、一個の巨大生物の如く振る舞えるという点か。
奴等は、たかだか2~3Kmの距離を伝令で一つ一つ馬鹿丁寧に各隊に馬を走る間に、コッチはノータイムで全軍に指示出来る。
今の俺なら戦場なんて、テーブルの上の粘土を捏ねるみたいなモン。
手触りだけで・・全体の形も、柔いとこ固いとこも、ほんの極僅かな傷も・・全て分かる。
或いは、軍事レーダー?みたいなんを使ってるようなモンか?
前世で付き合いでチラッと見た映画に、ヘリや戦車で戦国時代の軍を圧倒する内容があった。
でもこの景色を見ると、戦車も恐いけど『コッチが一方的に万事を知る』のも敵にとっては恐そう。
まあ軍略家じゃないんで作戦は作戦班に任してるんだけどね。
《ん~・・、
やっと奥の本軍が動く準備をしてるっぽい》
『ならば私が相手を務めよう』
『あらアナタ、いくら夫婦と言えど此処は譲れなくてよ。
この一戦は我等ホムンクルスの未来を決める一戦ですもの』
《ハイハイ、喧嘩しない。
この戦は、文字通り世界中が注目する大一番。
正々堂々、奇策でも奇跡でも無く実力で、本命に本命で勝つ。
二人の隊は隠れてるつもりっぽい、伏兵に当たって貰うから》
『仕方ありませんな』
『すっかり我が軍最強の座は彼女に取られましたからね』
で、その我が軍最強部隊隊長が居ない。
飯か。
また飯か。
朝にあんだけ食って、間食まで摂って、まだ足らんか。
年頃の娘にしちゃあ色気より食い気の方がヒドスギる。
(といっても、タマに人のベットにINしてきて──あー、いやいや、なんでも無い)
『あれ~? 何で皆もう集まってんの~?』
《正午前に開戦するって言っただろ・・》
『え~、もうお昼~? 大変だ~、まだオヤツ食べてな~い!』
嘘・・だろ?
あの時のアレが間食じゃ無かっただと・・!?
──ってそんな事はどうでもイイ。(食費的にはどうでもよくはないけど)
《遂に連合国軍の本隊が出て来たぞ、しかも総大将は・・あの時の白銀騎士団団長だった奴だ》
『・・ふ~ん、そうなんだ~・・』
流石に反応した、か。
まあ因縁の相手だ。
俺だって私怨タップリ、自らの手で今直ぐにでも殺してヤりたい相手だ。
だけど今の俺には立場ってモンが有る。
ホムンクルス逹の奴隷解放の為に、ホムンクルスの良き隣人として生きていきたい人間の為に。
ホント、頭よくもないのにこんな司令官みたいな似合わないポジションで軍隊なんか作ってさ。
あの日から15年。
最後の戦いだ。
(・・と、良いな。)




