16◆センジ、絶望する。(他にやりようは無かったのか?)
16◆センジ、絶望する。(他にやりようは無かったのか?)
◆◆◆
俺の誕生日から約二ヶ月後の深夜、睡眠中に突然【霊感】で多数の格上が集落に駆けて来るのを感じ、二人を慌てて起こす。
覚悟のようなモノを感じるジイサン。
訳が分からずオロオロする幼女。
「大丈夫、俺が守るから!」
俺の言葉を自分に染み込ませるかのように受けとめ、ニコッと笑う幼女。
・・うん、じゃあ俺も訳が分からんけど出来る事をしよう。
集落に在中しているホムンクルス達の顔を思い浮かべ、ありったけの念を送る。
今だに俺の【テレパシー】は言葉を伝えられないけど、反応があったんで落ち合い、状況を伝えて集落に住む人々を避難誘導。
集落を脱出する途中、【超五感】の視力が複数飛んでくる火矢を捉えた。
◆◆◆
集落が燃えている。
何だ・・何だコレ・・!?
やがて現れたのは例の白銀の騎士逹。
ジイサンも騎士達に気づいたらしく、この険しい表情には・・覚えがある。
【四ツ目熊騒動】の時に見せた、まるで相討ちを覚悟したかのような・・顔。
「だっ・・駄目だっ!」
狼狽える俺にジイサンは・・優しい笑顔で俺を撫でる。
・・チカラ無く呆然としてる俺に幼女が寄り添い、ジイサンは最近は幼女が使っていた古びた剣をかがげて飛び出す。
◆◆◆
『~~~~~!!』
『~~』
ジイサンは必死に何事か叫びながら、一際キンキラな鎧兜の騎士団団長みたいなのは・・ヘラヘラ笑いながら、剣を交わしている。
事情は分からない。
ホムンクルス伝いに聞いてもジイサンは済まなさそうにして答えてくれなかった。
四ツ目熊の時と同じ、俺には何も出来無い。
そして
数合の後、
騎士団団長が
『つまらん』といった感じで
──ジイサンの首を落とした。
◆◆◆
騎士団の拍手喝采。
ソレに軽く手を挙げ答える騎士団団長。
ジイサンにすがり付く俺と幼女。
ソレを見て笑う騎士団。
◆◆◆
──その時、ジイサンの剣が光輝いた。
【石の獣】が死ぬ時の様に。
騎士団団長が目に手を当て『ククク・・』と、声を押し殺すように笑い・・『さあ、見ろ』と言わんばかりに光を指差し両手をバッと広げる。
◆◆◆
訳が分からない。
辛い。
悲しい。
怖い。
──綺麗。
俺も幼女も言葉無く、目の前の光輝く剣を眺め、痛い程強く手を握り合う。
唯々・・涙を流し続けながら。
◆◆◆
ジイサンの剣から出た光が俺と幼女を照らす。
──ふと、いつものように撫でられた気がした。
剣に手を伸ばす。
気付いた騎士団団長が『フン』と鼻で笑う。
騎士団団長の剣が俺達に振り下ろされる。
◆◆◆
・・と、同時にリーダーが現れた。
俺と幼女を連れ去ろうとしたんで、咄嗟にジイサンの下に行こうと暴れる。
・・が、片手で一瞬の内に押さえ付けられた。
◆◆◆
《逃げた者 山奥 無事》
「そう・・」
例の強い【テレパシー】の持ち主に案内されて辿り着いたのは集落民でも極一部の古株しか知らない、余りに使い勝手が悪いんで放棄された旧集落。
逃げた集落民逹と街から脱出したっていう人達がいた。
今も集まりつつある。
《騎士団多い 廃墟組 救助隊 勝てない》
騎士団が夜襲装備で集落の方角へ駆けるのを発見し、慌てて救助隊と廃墟組が分散しつつ追ってきたと、【テレパシー】で伝えられる。
だけど非戦闘員の人数が多くコッソリ街を脱出しなきゃいけないんで時間がかかり、自分一人で来たが間に合わず、ジイサンが殺された・・らしい。
色んな思いで頭がグルグルする。