12.5◆とある隊長の語り。
12.5◆とある隊長の語り。
◆◆◆
私の人生が変わった運命のあの日、一発の救助要請信号弾から始まった。
見張りからの緊急連絡。
信号弾が打ち上げられた、場所は西第二集落、色は赤、とのこと。
西第二集落・・【魔の山】で薬草採取をする人々の集落か。
赤色は大型獣出現、この時期こんな場所に?
駆け付ける途中、数人とだけすれ違う。
追いかけるのは、この辺りでは最強たるグレートベアで子育て中の今、縄張りから絶対出てこない筈。
・・そういえば、すれ違った一人が何かを抱えて・・まさか子熊の密猟!?
最近この街の金持ち連中に、そういったブームが有ると聞く。
救助隊にも依頼が来たらしい。
事務員の女性が『街の警護任務優先』と答えると『汚らわしい外人如きが』と返されたそうだ。
やはりこの国の民は選民意識が高い。
なんとか撃退成功し、(この時使う毒薬に対し、街人がまた煩い。
危険が迫っているのに、原因は自分達の街の金持ちかもしれないのに、だ。) 簡易治療所を見る。
隊員、集落民の怪我人を治療班が治すその周りで幼児二人が走り回っていた。
遊び場と勘違いしているのかと一瞬思ったが、手伝ってくれているらしい。
しかも中々手際が良い。
幼女の方は頼まれた荷物を運ぶだけだが怪我人と治療員のひしめく中、的確なルートを荷物を揺らさず走る。
かなりの足腰とバランス感覚・・うむ、ウチに欲しい。
もう一人の方は包帯の巻き方、添え木の当て方、共に早く正確だ。
しかも通じぬ異国の言葉なのに、治療員と幼女に確実な指示を出し、苦しむ者に笑顔で応援をしている。
・・うむ、ウチに欲しい。
其処で隊員が報告してくる。
やはり子熊の密猟らしい。
しかも目撃したのは例のあの子か・・事情聴取をしたいが流石にジェスチャーだけではな。
取り敢えず、重傷人もいる。
早く街へ帰らねば。
◆◆◆
──確かに色々あり、冷静では無かった。
しかし、この子がホムンクルスと見抜けなかった事は一生後悔してもし足らない。
密猟犯罪者が言い逃れの為にこの子を利用し、結果・・暴動が起きた。
罪有る者が無罪となり、罪無き者が有罪となる。
やはりこの街の・・この国の未来は明るく見えない。
◆◆◆
幼児二人が巻き込まれ、其れでも立ち上がってからの歩みは凄かった。
私はこの二人が救助隊に入ればより良く変わると思っていたが、彼等ならば救助隊よりも、もっと大きなモノが──
私の人生が変わった運命のあの日は・・本当は沢山の人間の運命が変わった日だったのかもしれない。