10◆センジ、他のホムンクルスと会話する。(悲しむ。)
10◆センジ、他のホムンクルスと会話する。(悲しむ。)
◆◆◆
【三人組騒動】を見て、俺達がココへ来るのが想定済みだったんで、入口の四人を用意してたのか。
「じゃあ、俺達がココへ来た本題・・の前に、俺もそのテレパシー使える?」
使えるなら、俺も幼女とちゃんとした会話が出来るかもしれない。
(言葉を覚えて会話しろって意見は・・今は聞けないんだ・・悲しいね。)
《使ってる 微弱 感情のみ》
えっ、もう使ってんの?
幼女とのデタラメ会話や他の人達とのジェスチャーが簡単に伝わるのもそういう助けが有るから?
どうやったら言葉を伝えられんの?
《我 上級マスター 作成》
上級マスター?
上級っつう位だから人間国宝みたいなモンか?
そんな凄い人に造られたホムンクルスだからリーダーのテレパシーは凄いって訳ね。
【霊感】でも、今まで出会ってきた中でトップクラスの格上だ。
(【四ツ目熊】には負けるけど。)
なら仕方ない、本題の【石】を一個取り出す。
すると幼女の横の人はまたもハッとした後トロけた顔をし、俺の横の人は無表情でヨダレを啜る。
リーダーすらも目を丸くする。
あれ?
ホムンクルスだったら【石】、簡単に手に入るんじゃないの?
「俺、【石の獣】を退治したら普通にコレが出んだけど・・」
《普通!?》
同時になんか叫ぶ。
すると二階にいたホムンクルスのほぼ全員が反応する。
中には《嘘つき》と、言ってくる (飛ばしてくる) 奴もいる・・。
この【霊感】や【テレパシー】は心を直接繋げるような感覚なので嘘はつけない。
つまり本気で嘘と思われてる。
ホントだよ。
届けテレパシー。
幼女も何の話しか分からずとも俺への嘘つき扱いにキーキー怒る。
可愛い。
《・・確認 同行 獣退治》
・・確認?
◆◆◆
下水道を通って救助隊詰所の近く、人目の無い場所。
リーダーが幼女にこの道と自分達の事を絶対に話さないよう念を押している。
首を傾げ、『え~なんで~?』といった幼女に、俺の方をチラッとみて何事か。
途端に幼女は首を上下に高速シェイク。
面倒見の良い人らしいし、記憶のフラッシュバックを起こすような言葉以外で『俺に迷惑がかかる』とでも言ったんだろう。
リーダーと街の外で落ち合う約束をし、救助隊詰所へ。
「ただいま~」
『レエカ~』
俺と幼女が詰所の扉を開けると皆の驚き顔と、ジイサンのホッとした後に安心顔。
幼女がスッ飛んでいき超速甘えで撫でてもらう。
俺も近づき改めて挨拶。
ジイサンに撫でられ喜ぶ自分がいるが・・まぁ、この幼児の体 (心) になって半年以上、素直に受け入れられる。
だが救助隊隊長の撫で撫ではノーサンキュー。
俺は安い幼児じゃない。
・・さて、ジイサンへの挨拶も済んだし幼女が撫でられてるのに夢中になってる間にソォ~っとリーダーんトコに行こうとして・・バレる。
当然ついてく気マンマンだ。
後、何故か救助隊隊長も。
杖、兼、武器の棒を演武っぽく降りながら【石】を見せる。
未だよく分かってない【テレパシー】を意識しながら。
ジイサンは例の山の境界線を知ってるからジェスチャーの意味を理解さえすれば幼女を止めてくれると思ったんだけど・・伝わってない。
・・と、思ったら伝わってる?
え?
なんで?
伝わってんのに幼女を止めないの?
いや、確かに俺でも【石の獣】は倒せるけど・・【四ツ目熊】が出るトコまでは行かないけど・・?
『ウロヤヲレコ』
ジイサンがいつも腰に着けた短剣を幼女に渡し、幼女はキョトンとしつつ短剣を受け取る。
『イワタッモヲンケ、ラカイラグンコモシワ』
ジイサンが染々言った台詞に幼女が『へ~』顔をし、救助隊隊長は腕組みで『うんうん』と、頷いている。
救助隊隊長のデカイ剣を指差しながら遠い目をし、俺の棒を指差すと幼女がガッツポーズをとる。
ジイサンは昔、凄い戦士だったのかも・・って雰囲気の時がある。
で、あの左腕だ。
剣の道を諦めたのかもね。
そして幼女は流石そんなジイサンの孫ってぐらい運動神経が良い。
孫に夢を託す剣士の通過儀礼って奴かな?
でも【四ツ目熊】に近づくんだよ?
キミ、あれの記憶は残ってるよね?
『ふんスッ』・・って・・ハァ。