9話 ロリの為なら
前回のあらすじ
武器を買ったお
店から出るとルシエラが立ちながら楽しそうに鼻歌を歌って俺を待っていた。ルシエラに近づくと彼女は俺に気づき、パタパタとこちらに駆け寄ってくる。
「お〜……これからはこの杖は私の右腕だよ!」
俺が持っている杖をやや強引に取って杖をくまなく撫でるように触り、それを魔法を発動するように掲げる。その姿はどこか魔法使いらしかった。
「そんなに嬉しいかよ」
さっきからこんな喜んでそんなに嬉しいのだろうか。まあ10000クミアもしたしな。1000クミアでナイフみたいな剣を買った俺には理解がしがたい。
「すっごい嬉しい! だってこれハルトからのプレゼントって事でしょ? 私こうやって誰かにプレゼントしてもらうの初めて!」
杖を赤ん坊のように優しく抱き抱えながら曇り一つ無い笑みを浮かべる。
そういう事か。神だし人からなんか貰うって事は無いもんな……通りで喜んでるわけだ。
「ま、まあそういう事になるな。喜んで貰えたみたいで良かったよ」
プレゼントっていうよりルシエラが欲しいってねだってきたから買ってあげたって感じだけどな……
「んじゃあ武器買ったし何をーー」
そこまで言いかけていた口の動きが止まった。ここからでは良く見えないが誰かが鎧をまとった集団の男達に囲まれている。まるでヤンキーにカツアゲされてる弱者みたいだ。他の人達はその囲まれている人を遠くから見てるだけで助けようとはしない。
それもそうだ。男達が俺にさっき絡んできた奴みたいに弱いような奴らだったら誰かしら止めに行くだろう。
だが男達の中で1番強そうなリーダーのような男の体は俺の2倍程はあり、その顔には敵と戦って怪我をしたと思われる傷が目の下に大きく刻まれていた。背中には常人にはあまりにも持てなそうな大きな剣を装着してある。今まで見たビースト族の中では1番強そうに俺には見えた。
「なんか凄いことになってるね……カツアゲとかされてるのかな?」
その現場を見て、ルシエラは呑気でまるで当たり前の事のような反応をした。
「多分そんな感じだろ。……誰も助けようとしないんだな」
ここの国民が冷たい人なのか? だけどそんなんじゃ無さそうだしな……見てる人たちも怯えてるって感じだし……
「あっ。そういう事か」
ルシエラが謎を解いたかのように手のひらをポン、と叩き、自己完結をする。俺はさっぱり分からないんだが。
「どういう事だよ。説明オナシャス」
「ほら、ここ見て」
と、言って武器屋の貼り紙の大きい記事に指を指し示す。その記事には『国王候補者』と大きく書かれており、何人かの絵が載っていた。
「これがどうしたんだ……」
何も無いと思い目を離そうとした瞬間に馬鹿なルシエラが何故理解出来たのかが分かった。
「国王候補者4.ビガー、評判 悪……なるほど。つまりアイツは国王候補者で強そうだからあんな事してても周りは手を出せない、そういう事か」
「そゆこと。だからハルトみたいな駆け出しさんはあまり関わらない方がいいよ〜。ま、関わるつもりなんて無いだろうけど」
ふわぁ〜あ、とあくびをするルシエラ。
うわあ神なのに何もしないんですね! もうコイツが神って考えは綺麗さっぱり捨てよう! うん。
でもここで俺らが行ったとしても返り討ちにされて終わりだよな……無駄に命を無くすくらいなら狙われてる人には悪いが何もしない方が自分の為だ。1番優先するのは皆自分。それは変わらないのだ。
「でも国王になろうとしてる人が見て見ぬふりをして人を助けないなんて有り得ないよねえ……」
俺を見ながらニヤニヤしてるコイツを殴っていいよな?
「都合の良い事言いやがって……ってかよく考えろ。俺が行ったところで何も出来ず終わるだけだ。自分を犠牲にして人を助ける奴をかっこいいと周りは思ってるかもしれんが俺はバカとしか思わないぞ」
「そっか〜。でも残念だなあ。あの囲まれてる子、ハルトが好きそうな猫耳のロリっ娘なんだけどなあ……」
「猫耳ロリっ娘!? 猫耳ロリっ娘だと!?」
『猫耳ロリっ娘』という言葉に本能的に反応する。大事な事なので2回言ってしまった。
もう一度囲まれている人を目を凝らして見るが目が悪い為、全く分からない。
「クソッ! 俺の目が良ければ……猫耳ロリっ娘ォ!」
周りの目を気にせず、地面を叩き思いっきり叫ぶ。ロリっ娘を見れない悲しさに涙が出てきた。
「悲しみすぎでしょ……今までで1番引いた。キモすぎて草生える」
もうこの対応にも慣れてきた。存分に引いてくれ。ルシエラ。
「ルシエラ、今から言うことをしっかり聞いてくれ」
「何?」
「俺は今からロリコンとしての指名を果たしてくる。ただ、ほぼの確率でやられる。だが俺はそれも承知で行くんだ。1人のロリコンとして! だからお前は1人で頑張れよ。ルシエラ」
俺は決めた。ロリの為なら命だって犠牲にする。俺は馬鹿かもしれない。だがロリの為に、俺は突き進むんだ。
「分かった! 面白そうだからついていくね!」
「お前もロリコンとしてついてくるのか。そうか、分かった。ならば突き進もう! ロリコンとして!」
そう言って俺は国王候補者のビガーの元へ走り出した。