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16.ニューアイテム

初日の調査結果はいかに…?

――翌朝9時半、ホットスパイス・エージェンシー。


俊作と純は、互いに前日の調査報告をするため、ソファーに向かい合って座っていた。


純「江坂千里には接触できたのか?」

俊作「あぁ、できたにはできたんだけど、普通に接客されて終わったよ。羽村のことは何も……。でも、今日改めて行こうと思う」

純「おっ、何をしたんだ?」

俊作「カッコいいジャケットがあってさ、“買うかどうか一晩考えさせてくれ”っつったら“じゃあ、明日もお店にいるんで是非来てくださいね”って言われたんだよ」

純「マジ? いい感じだね。少しでも仲良くなっといたほうが突っ込んだ話も聞き出しやすいからな」

俊作「それは営業でも同じだよ。いきなり客の所へ行ってモノが売れるなんてまずないからな。人間関係の下地作りも大事なんだよ」

純「なるほど、お前も慣れっこだったってわけか」

俊作「ところで、純は何か新たな情報は手に入ったか?」

純「いや、特に何もなかったんだけど……」

俊作「…? 何だよ?」

純「なーんか引っ掛かるんだよなぁ、店員の態度がよ」

俊作「変なヤツでもいたのか?」

純「なんか…ものすげぇムカつく」

俊作「あ…? ただ無愛想なだけじゃねぇ?」

純「そうじゃないんだ。愛想は悪くない。事件の話を切り出した瞬間、急に受け答えが事務的になった感じがしたんだよ」

俊作「む…何だそりゃ?」

純「わからん。だが、オレには向こうが事件の話を避けたがってるように見えた」

俊作「何て言われたんだ?」

純「“あの日のことはよく覚えてない”ってさ。お前と羽村がメシ食ったダイニングバーの店員も、お前が羽村と会田って人と3人で飲んだ居酒屋の店員も同じことを言ってた」

俊作「2件とも同じか?」

純「あぁ。まったく一緒だった」

俊作「うーん……あり得ない話じゃないけどなぁ……」

純「何か引っ掛かる。念のためこの2件もマークしとくか」

俊作「そうだな。今日も行くのか?」

純「いや、今日は行かない。ガンガン行きすぎて警戒されかねないからな。それに、まだお前の同期にも会ってないし」

俊作「米本ね。そっちが先か」

純「そうだ。明らかにそっちのほうが低いリスクで情報収集ができる」

俊作「確かに。でも二つの飲み屋はどうすんだ? 手薄になっちゃうだろ?」

純「ロッキーに頼もう」

俊作「また? 大丈夫か?」

純「あいつの人脈と情報網をなめちゃあいけねぇぜ。これぐらいの量ならどうってことねぇよ!」


「その代わりタダ働きだけどな!」


俊作と純は、驚きのあまり、座ったままの姿勢でソファーから跳ね上がった。


玄関を見ると、創が仁王立ちしている。

手には小さめのスポーツバッグを提げていた。


“噂をすれば影がさす”とはまさにこのことか。


創「何だよ、2人してツェペリってんじゃねぇ!」

純「ロッキー! いつの間に!」

創「今来たばっかだよ!」

純「つーか勝手に入ってくんなよ! ビックリするだろ!」

創「インターホン直しとけって! ボタン押しても鳴らねーじゃんかよッ!」

純「……そうか。そりゃすまない」

俊作「…で、どうしたんだ? こんな朝早く」

創「そうそう、2人に新しいアイテムを持ってきたんだよ」

俊作「アイテム?」

創「あぁ。まずは俊作専用のモノから」


創は、バッグからモスグリーンのスプレー缶を取り出した。500ミリリットルの缶ジュースと同じくらいの大きさだ。


俊作「何だそれ?」

創「ヘリウムガスだ。つまり、変声スプレー」

俊作「あの…よく東急ハンズとかロフトなんかに売ってるヤツか?」

創「まぁ、そうだ。でもなぁ、これは市販のモノより良質で、効果てきめんなんだぜ」

俊作「ほう。ちなみに純はもう持ってんの?」

純「おう。なかなか便利だぜ」

創「へへへ、そうだろう! ただし、効果は約2分だから、そこんとこ気をつけてくれよ」

俊作「2分か…」

純「2分もありゃあ充分だろ」


創「そんで、次はお前ら2人にだ」

創は、バッグから携帯電話を2台取り出した。


純「何だそれ? ケータイじゃん」

創「アホゥ。これをただのケータイだと思うなよ。これはな、外見こそ携帯電話だが中身はハードディスク内蔵のデジタルビデオカメラなんだぞ!」

純「ほぉ…」

イマイチ反応が薄い俊作と純。少し不満そうな顔をしながらも、創は説明を続けた。

創「それだけじゃないぞ。これには今まで純が使ってたICレコーダーと同じように、高性能集音マイク機能も搭載してるんだ。つまり、今度はちょっと遠くの音声と映像が記録できるってことさ」

純「おおっ、それはいい」

だんだん食い付いてきた。

創「さらに! 撮影できるのは動画だけじゃねーぞ! 動画を撮ってる時に写真撮影も可能だ。決定的瞬間を画像として保存できるぞ。しかもこれでメールもできるから、保存した画像や動画、音声ファイルをいつでもパソコンや他のケータイに送ることができる! どうだ、すげー便利なアイテムだろ?」

純「便利だな! さっそく使わせてくれ!」

俊作「オレにも!」

創「いいよー! その代わりタダ働きだけどな!」

俊作&純「結局そうなるのかよ!」

創「文句言うなって。ビジネスはギブアンドテイクだよ? 仲良くやっていこうぜ」

純「あっそう……」

純はニヤついた顔で俊作の目を見た。俊作も純が言いたいことを瞬時に見抜き、純同様ニヤリと笑った。

俊作「じゃあロッキーよ、もう1コ仕事頼むわ」

創「な、何だよ?」


純は、俊作が佐知絵を連れ込もうとしたとされるホテルを割り出すために、佐知絵と戸川弁護士のどちらが“証拠写真”を持っているかを調べてほしいことと、事件の聞き込みに対し不審な点が見られた道玄坂のダイニングバーと居酒屋に探りを入れてほしいことを打診した。


創「…そんなにやるの?」

明らかに創の顔が引きつっている。

俊作「そうだよ。どうせタダでお前の店手伝うなら、オレらがいくら仕事を頼もうが同じことだろ?」

創「うっ……」

純「ビジネスはギブアンドテイクじゃん! ロッキーちゃんよ」

創「ぐっ…わかったよ。やるよ。弁護士と道玄坂はオレが受け持つから、羽村佐知絵はお前らでやってくれ」

俊作「そうしたいんだけど、今ちょうど羽村の身辺調査で手一杯なんだよ」

創「じゃあ、羽村はハワイアン・クリーンのスタッフにサポートしてもらうか」

純「そうしてもらえると助かる」

創「まったくよォ、後でホントに店手伝えよな!」

俊作「わかってるって」

純「ちゃんと報酬は払うから心配すんな」

創「はいはい」



それから15分ほど雑談した後、創は開店準備のため事務所を後にした。


俊作「さて…オレらも行くか」

純「…ああ」


創から新たなアイテムをゲット!

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