情報収集 地裏ムカサの場合
呪香ミツコに指摘された通り、地裏ムカサは学園内の調査を苦手としていた。友達がいなかったからである。その点についてはミツコの方が有利ということはないはずだが、魔術師であることを隠そうともしていないミツコは、独自のネットワークを持っているのかもしれない。
ただ、ムカサとしてもミツコにすべてを任せるつもりはなかった。ミツコの性格を考えると、情報を把握してもムカサに教えてくれるとは限らないからである。
昼休みの休み時間、ムカサはクラスメイトに尋ねてみた。
「二組で行方不明の奴らがいるらしいな?」
「そういうことは、地裏くんの方が詳しいんじゃないか?」
弁当を平らげてのんびりしている男子生徒に尋ねると、意外な答えが返ってきた。
「どうしてそう思うんだ?」
「いや、なんとなく。特に理由はないけどね。何も知らない」
男子生徒は午睡の準備をはじめ、教科書を積み上げて枕を作っていた。
誰に尋ねても、似たような答えが返ってくる。
ムカサはクラス内で聞くことをあきらめ、実際に行方不明者が出ているという二組を尋ねてみることにした。
残りの昼休み、ムカサは自分の席で魔王に祈りをささげることで過ごした。
二組を訪れたのは、昼休み時間はほぼ終わったころである。二組を尋ねると決めてからなぜすぐに行かなかったのかといえば、自分の人望の無さに若干落ち込む時間が必要だったのだ。
二組のほとんどの者は、午後の授業のために教室に戻ってきていた。
ウィザードが三人も行方不明になっているというのは、ただごとではない。だが、ムカサはイノセントだけでなくウィザードにも友達がいなかった。
誰がウィザードだったのかわからない。
突然隣のクラスの人間が教室に入って来てまごまごしているのに気付き、二組の生徒たちがムカサに奇異な目を向け始めた。
――どう尋ねようか……いや……。
ムカサは、教室をすっぽりと覆い包む程度の月匣を展開させた。
インセントたちが次々と昏倒していく。
その中に、意識をしっかりと保ったままの生徒はいなかった。
「なるほど、ウィザードたちが行方不明と言うのは本当らしいな」
一人で納得したムカサが教室から出ようとすると、背の高い男が廊下で額を抑えていた。
「地裏、お前は何をしているんだ」
「ああ……先生。なんでもありません」
「これから授業なんだぞ。生徒たちを全員寝かして、妨害したいのか?」
精悍で、やや動物じみた印象を持つ古文の教師は、犬神ヤシャ《いぬがみやしゃ》だった。ウィザードである。
「いえ、それより先生、二組のウィザード三人が行方不明だという噂を聞きまして、調査していたのですが」
「そうか……このやり方が、地裏にとっては調査なのか」
ますます渋い顔をしながら、犬神は教室に入ってきた。
「やりすぎたかもしれませんが、質問してまともな答えが返ってくるとは思えなかったので」
「仕方ない。教室に入れ。授業ができなくなったから、知っていることは教えてやる」
「ありがとうございます。しかし先生、俺も授業がありますので」
犬神ヤシャがどんな顔をしたのかを気にせず、ムカサは一組で授業を受けるために自分の教室に戻った。




