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序章 勇者になったなら

拙い文章ですが、良ければ読んで下さい。

宜しくお願い致します。

神様って見たことありますか?と聞かれたら貴方ならどんな風に答えますか?

僕の答えは、信用するなです。


僕は日本で生まれました。

丁度、二十年、日本で暮らしていたと思います。

親も早くに亡くなり、高校も中退する事になった僕は当然、正社員にもなれずにコンビニでバイトをして暮らす日々でした。


ある日、深夜に一人でコンビニのレジに立っていると、帽子を深く被ったお客様が来店しました。

なにか、怪しい人だなぁ。

そう感じながらも、レジでお客様が会計を済ませ、帰ってくれるのを待つ事しか僕には出来ません。

お客様はタバコを買いに来ただけだったらしく、真っ直ぐにレジに向かって来ます。


「いらっしゃいませ! 」


僕がそう言うとお客様は、……だせ。


「申し訳ありませんが、もう一度宜しいでしょうか? 」


…………………。


全く聞き取れない言葉に困っていると、お客様は急に顔を上げて叫びだしました。


「金を出せって言ってんだろ!馬鹿にしてんのか!!お前も俺を馬鹿にしてんだろ!! 」


強盗でした、気が立っていったのでしょう。

僕の胸をポケットから出したナイフで刺し、金も取らずに店から出て行ってしまいました。


痛みはありました、血の気が引いていくのもわかり、このまま死ぬ事も理解は出来ました。

意識が薄れていく中で、思ってしまったんです。


やっと、楽になれると。






死んでしまった事は理解しました。

ここが天国なのか、地獄なのかはわかりませんが、死後の世界だと言う事は理解出来ました。

何もない、真っ白な空間を漂っていると唐突に光の粒が集まり人の形を作りました。


「可哀想に私の可愛い息子よ。これでは余りにも救いが無さ過ぎる 」


言葉では無い、だけれど心にストンっと入ってくるような。

そんな不思議な言葉でした。

人の形をした光は僕に言いました。


「息子よ、世界を救いなさい。貴方の幸せは世界を救えば訪れます。世界を救う力は与えましょう。息子よ、世界を救うのです 」


ぎゅっと、光に抱きしめられ、何か暖かい物を貰った気がしました。

気持ち良くて、僕はそのまま意識を手放しました。






「成功だ!成功したぞ!! 」

「これで、この国は救われる!」


そんな声で僕は起きました。

僕は四人の子供の命を代価に異世界に転生しました。

僕にそんな価値は無いのに、四人の子供を生贄する価値なんて無いのに。


その後の五年間は地獄の様でした。

勇者として祭り上げられ、厳しい訓練生活を送りました。

せめて、犠牲になった子供の命が無駄にならない様に、それだけが心の支えでした。

幸いにも、神様は僕に本当に力をくれたらしく、気づけば周りにいる誰よりも僕は強くなっていました。

勇者の力、その気になれば切れない物は無い剣術。

光の加護を受け、絶対の域に達した魔法。

同じ地獄を味わった、四人の仲間も出来ました。






大々的にパレードをして貰い、国民の希望、期待を背負って四人の仲間と国を出ました。

魔王を倒せば世界が救われる。

王様に言われた、その言葉を信じて旅をしました。

何年か旅をする中で、僕と魔法使いは恋に落ちました。

思えば、魔法使いと一緒にいる時だけは、心がどこか安らいでいたのだと思います。

魔王城に着く頃には、仲間は三人に減っていました。

勇者である僕を守る為、騎士を目指していた仲間は犠牲になりました。

世界を救う為、仲間の仇をとる為、そして、僕と仲間の魔法使いの子供の未来のために。



「必ず生きて国に帰ろう! 」


仲間と誓い、魔王城に乗り込みました。

敵の戦力は多く、魔王の姿を確認する頃には、僕と魔法使いしか残っていませんでした。

憎い、仲間を奪っていく魔王が憎い、人間を追い詰める魔王が憎い。

僕の心は黒い炎で燃えていたんだと思います。


「人間の勇者よ、人間は魔族を殺した。我々とて同胞を殺されれば、人を恨む。容姿が違う、我々の力が恐ろしい。そんなくだらない理由で同胞は殺された。人間の勇者よ、貴様が信じる正義は、正しいのか? 」

「魔王、お前は俺の家族同然の仲間を殺した。人間を殺した。僕とお前が分かり合う事は永遠に無い 」


そうか、と少し悲しそうな顔を見せた気がした。

そんな顔が出来るなら、なぜ人間を殺した?仲間を殺した?僕には理解が出来ない。

違うな、本当は理解しているんだ。

お互い様、悲しい誤解、自国の防衛、お互い様、仕方無くそうしただけ。

でも、僕は魔王を倒さなければいけません。

死んでいた仲間、国の人々、そして僕らの子供の為に。


魔王との戦いは一瞬でした、僕は利き手を失なう事になりましたが、魔王の首と引き換えです、安いものでした。

さぁ、帰ろう。

共に旅をした仲間の墓を作る為に、国民に希望を与える為に。


国に戻り、墓を作りました。

王は僕と魔法使いを褒め讃え、地位も与えてくれました。

僕は魔法使いと結婚式を挙げる事になりました。


「仲間の分まで幸せになろう。そして、死んだらあいつらに幸せにだったと報告してやろう 」

「そうね、二人の分まで。そしてこの子の為にも 」


そう言って大きくなってきたお腹を、さすっている彼女は幸せそうでした。






子供も生まれ、半年程たった頃でした。

仕事も終えて屋敷に戻ると、いつも出迎えてくれる彼女が今日は出てきません。

それどころか、屋敷の使用人の気配もありません。

おかしい、そう思って屋敷の扉を開いた時に全てを理解しました。

屋敷の中から匂う、嗅ぎ慣れた鉄の匂い。

壁に飛び散る赤い模様。

僕は走りました、子供と妻がいる部屋に。

道中、息絶えた使用人を何人も確認しましたが今は、妻と子供の確認が優先でした。


部屋に入ると見知った顔がいました。

僕らに五年間、剣術を教えてくれた先生でした。

先生の背後にはナイフで喉を裂かれた妻。

先生の手には既に息をしていない我が子がいました。


「先生、なんで?何故ですか先生!! 」

「すまない。お前は強くなりすぎたんだ。国の為に諦めてくれ 」


そう言って斬りかかってくる先生を、僕は殺しました。

この世界に来る前に、神様は僕に言ったじゃないか、世界を救えば幸せになれると。

これが幸せか!僕になんの恨みがあるって言うんだ!!


「う、ああぁぁ、あああぁ!! 」


僕はただ、声をだす事しか出来きませんでした。







妻と子供を、仲間が眠る墓地へ埋葬しました。

食事も喉を通らず、酒に溺れる日々でした。


営業時間が終わると同時に放り出された酒場、飲んでも飲んでも、あの日の光景が頭から離れません。

雨の中、家に帰る気にも慣れなくて、街の広場のベンチで時間を潰していました。


「貴方は勇者様ですか? 」

「僕かい?そうだよ、勇者だったんだよ。似合わないだろう? 」


話かけてきたのは女の子、十五歳ぐらいの娘でした。


「父様の仇です。お覚悟を 」


短い言葉の後、僕は少女の手で殺されました。

ああ、魔王にも子供がいたのか、悪い事したなぁ。

自分の子供が殺されて初めてわかった気がします。

これが僕の最後で、これが神様が言った幸せらしいです。


だから、僕は神様の事は信用しません、アイツは嘘つきです。

そんな事を考えながら、僕は死にました。


そして今に至ります。



誤字、脱字、その他。ご指摘お願い致します。

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