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シグナル・オブ・ジョーカー  作者: 水崎綾人
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第5話「特訓開始」

「な、なんですって!弥夢くん、昨日ランス・ヒュア・アルダートと戦ったんですか?」

 翌日、弥夢は昨日あったことを柚瑠に話した。

「デカイ、声がデカイ」

「ああ、すみません」

 慌てて小さく繕ったが、きっともう遅いだろう。

「それで、どうでした?生きて帰ってこれたところを見ると、魔術を破壊できたんですか?」

 弥夢は頭を人差し指でポリポリ掻きながら、答えた。

「えっと、何だかあまり調子よく破壊できなかったけど、頭ん中でめっちゃ集中したら、なんとか破壊できて、そしたらあいつ面白いとか言って帰っていったぞ」

「そうなん……ですか」

 と、柚瑠は顎に手を当て、考える素振りをした。弥夢はそれにと続ける。

「何だか、俺が七番目(ジョーカー)であることと、俺の名前も知ってた」

「な、なんですって!」

 またもや、柚瑠の大な声がクラス中に響き渡った。

「だかた、声デカイって」

 今度は悪びれる様子も無く、そのまま続けた。

「それって、結構やばい状況だと思います」

「何でだ?」

「何でって、向こうはこちら側の情報をかなり握っているということですよ。弥夢くんの『破壊』の力が見破られるのは結構な痛手です」

 柚瑠はさらに深刻な顔で考え込む。

「とにかく、次にもし遭遇することがあったら、私に連絡してください」

「ああ、そうだな。…っても俺、柚瑠の連絡先知らないけど」

「では、交換しておきましょうか?」

「そうだな」

 二人は携帯を取り出し、赤外線通信により互の連絡先を交換した。

 心なしか、弥夢に向けられるクラスの男子からの視線はものすごく痛いものだった。

 はあとため息をついていると、肩を誰かに叩かれた。

 振り返ってみると、内田香織が立っていた。

「ん?どうしたんだ香織」

「あのね、薫先生が呼んでるよ」

「え?」

 いきなりのことで驚いた。弥夢は何かしたのではないかと、自分の記憶をフル回転させたが、特に思い当たらない。

「ああ、取り敢えず行ってくるわ。サンキューな香織」

「うん」

 と、香織はにこやかに微笑んだ。



「失礼します」

 と、薫先生の部屋の扉を開け、中に入る。

「遅いぞ、城戸」

「すみませんってなんの用ですか?」

「ああ」

 薫先生は椅子から立ち上がり、弥夢の方へ歩み寄ってきた。

「君は、昨日連続魔術殺人事件の犯人と接触したな?」

「な、何で知ってんですか?」

 すると、薫ははぁと嘆息し言う。

「私が魔術犯罪捜査に通じているって言ってなかったか?」

「言ってませんよ」

 弥夢は頭を掻きながら、答える。

「そうかそうか、悪かったな」

 薫は手元にあったモナカを一口食べ、続ける。

「ってことで、異常能力が発生していると見に行かなきゃいけないんだ。仕方ないから、私が直々に式神使って見てきたんだ」

「それって、見に来てないじゃないですか」

「まあ気にするな」

 更にモナカを口に運ぶ。

「昨日見たところ、破壊するのに手間取っていたみたいだが?」

「……はい」

 弥夢の口調は重く、ゆっくりとしたものだった。

「実は、思ったように破壊できなかったんです」

 薫はほうと軽く頷いて見せた。

「柚瑠の時は、少し意識するだけであの電気の剣を破壊できたんですけど、昨日はいくら意識を集中しても破壊できなかったんです」

「では、どうやって破壊したのかい?」

 興味深そうに聞く薫の顔に不思議と怖いものを感じた。

「それは…、魔術を発動する時は頭の中でシュミレートして、頭の中で演算するって言ってたので、頑張ってイメージしたら破壊できたんです」

 椅子に深く腰を掛け薫は、机に肘を立ててこめかみに手を当てた。

「…もしかして、霊力の発動にも演算処理が必要なのか…?まさか、霊力の発動原理が魔術の発動原理と非常に近いものになるとは…」

 何やらブツブツと言っているようだったが、弥夢には、それがなんのことなのか、さっぱり分からなかった。

 尚も薫はブツブツと呟き、終わるようすは無かった。

 すると、薫はパンと手を叩き立ち上がった。

「では、練習をするとしよう」

「はい?」

 薫は机の上にセットされているマイクを握り、ボタンを何個か押すと、学校中のスピーカーがなった。薫が押したボタンは校内放送のボタンだったようだ。

『えーっと、桜井柚瑠?さんは至急、魔術担当科の前宮のところまで来てください。桜井で合ってたか城戸?――』

 薫の最後の関係ない言葉まで放送に入っていた。これで、クラスに戻った時真っ先に質問攻めに合うだろう。

「ええ、名前は合ってますよ」

「そうか、ならいいんだ。ところで、もう分かってるから入っていいぞ」

 誰に言ったのか薫は扉に向かってそう放った。その瞬間、扉は横にスライドする形で開き、柚瑠が入ってきた。

「え、早くね?」

「えっと……」

 柚瑠はバツが悪そうな顔で顔を背ける。

「彼女は最初からずっといたぞ」

「え?」

 薫はドヤ顔を披露し、腕を組んでいる。

「君がここに来てからずっとだ。大方、何を話しているのか気になったというところか」

「まじか…?」

 弥夢は驚き半分、疑い半分で柚瑠を見ながら聞く。

 柚瑠はコクリと小さく頷き、薫の言っていることが正しいことを答える。

「じゃあ、何で校内放送使ったんですか!?」

「それは、あれだ。使ってみたかったんだよ」

 人差し指をピンと立て、身振り手振りで答える。が、直ぐにそれを止め、扉で仕切られていた部屋へ、弥夢と柚瑠を招いた。

「先生どこへ行くんですか?」

「まあ、待っていたまえ」

 扉を開けると、ものすごい広さの体育館のような空間がそこにはあった。

「こ、こんな広い空間。あるわけ……」

 その広さは柚瑠の家の地下にあったそれよりも広大なものだった。柚瑠の地下が学校の体育館の半分位の大きさと例えるなら、薫が連れてきた空間は学校の体育館の約三倍の大きさはあるように思えた。

「一体どうやって……?」

 弥夢が呟くと、薫は肩にポンと手を乗せる。

「魔術ってのは、奇跡的な力なもんでね。通常、この部屋はせいぜい十畳位の部屋だ。だが、この十畳程度の部屋を媒介として魔術により空間を膨張させた」

「まじかよ……」

 弥夢の口から声にならない声が漏れた。

「それじゃ、中に入って『練習』してもらう」

「練習って?」

 薫は楽しそうに、答える。

「桜井と城戸が中に入り、桜井は剣でひたすら攻撃してくれ。それを城戸は頑張って打ち砕け。それを放課後までやってもらう」

 言うと、薫は弥夢と柚瑠の背中を押し、作られた空間に押し出した。すると、薫は咄嗟に扉を占めて、閉じ込めた。

「え、嘘。ちょっと、センセー」

 弥夢は閉じられた扉をただひたすら叩いたが、なんの応答もない。

「まじかよ……」

「じゃあ、やりますか」

 柚瑠は何故か覇気の入った声で立ち上がり、自分の右手を真横に突き出し、剣を出現させた。

「って、また電気の剣かよ。それ怖いんだよな」

 柚瑠は口元に手を当て、クスっと笑った。

「これは電気の剣じゃないですよ」

「え?」

 今まで電気だと思っていたその剣の正体が、電気ではないという事実に弥夢は心底驚いた。

「え、嘘。電気じゃないの?だって出すときいつもビリビリって……」

「これは出現させる時だけ発生するんです。確かに、見た目は電気みたいな黄色をしてますが、これの正体は基本的には空気なんです。ただ空気事態を剣として形作るために電気を使い、自分で刃渡りを確認するために電気のような色にしているんですよ。だから触ってもビリビリしません。でも、触ると必ず人間の身体なら切断はできます」

「いや、怖いって。電気の時より更に危なくなってるって」

「じゃあ、行きますよ」

 柚瑠は剣をこちらに向けて構える。

「ちょ、ちょっと待てって……」

 手をバタバタとさせるが、どうやら、柚瑠は待ってくれないらしい。

 柚瑠が勢い良く振るった剣をギリギリのタイミングで頭を下げてかわした。

 その瞬間、髪の毛が何本か切れた感覚が、伝わった。

「なかなか、避けますね」

「いや、避けるって。それより、目がまじだぞ」

 柚瑠の目には優しさなどなく、鋭くなっていた。これはもう、精一杯破壊するしかないと腹を括った。

「当たり前です!」

 また、柚瑠が剣を振るう。

 それに合わせて、弥夢も左手を出し、それを握る。

 しかし、何も起こらず、剣は破壊されることは無かった。

「ま、またか…」

 自分の左手を見て呟く。

「どうしたんですか?行きますよ」

 少し、驚いたようだったが、柚瑠は待ってくれる訳ではなく、左手ギリギリのところで剣を振り落とされた。

「くっそ…どうしたら破壊できるんだよ…」

「惜しかったですね。あと少しで当たったのに」

 小さく呟く。

「当たってたら、俺の左手切り落ちてたけどね!」

「休んでる暇はありませんよ」

 今度は左手も横に伸ばし、剣を出現させる。言わば二刀流というやつだ。

「おまっ、二本も出せんのか!?」

 何も答えてくれず、こちらに走り向かってくる。

(せめて一本…。一本でもいい。破壊できれば)

 弥夢は意識を集中させた。迫り来る剣にその意識を。

 昨夜、あの男とあった時のようにただそれだけを集中して考えた。

 そして左手を突き出す。もし、破壊できなければ弥夢の左手は切断されることだろう。

「頼む――」

 勢いよく自らの左手を握った。

 すると、弥夢の願いが叶ったのか柚瑠が左手に持っていた剣は空中に無数のポリゴンの破片となって破壊された。

「よし……」

 小さく喜びを呟き、再び意識を集中させる。

(今度はさっきより早く、もう一本の剣を破壊するんだ)

 再び突き出し、それを握る。

 すると、また粉々に砕け、空中で破壊された。

「やりますね、弥夢くん」

「お陰様でな」

 そんなやり取りをしながら、弥夢と柚瑠は練習を続けた。




      ◇

「さてと……城戸と桜井は練習中と言うことで…」

 そう、小さく呟くのは前宮薫だった。薫は呟くと、机の中から一冊のノートを取り出した。

 そのノートを何ページか捲り、あるページで捲るのを止めた。そのページには『gjgdfj』と書かれている。

 薫はパソコンを起動させ、学校の教職員専用のページにとんだ。そして、そこに表示してある『パスワード』と出ているバーにさっきに英文字を静かに打ち込んだ。

 すると、

「やっぱり……ね」

 と、小さく呟いた。

 そこに書かれてあったのは

『生徒名 城戸弥夢

 一年二組の生徒 担当教師 花見静夏

 追記

 魔術因子 有』

 つまり、弥夢は魔術を行使出来る身体であることがそこには書かれていたのだ。






 こんにちは水崎綾人です。

 柚瑠の使う剣を頭の中で想像してますが、自分の画力があれば絵に書いて見たかったです。綺麗な眩い剣を想像しています!

 次話もお楽しみに!

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