20
翌朝のメアリは、それはもう目も当てられないほどに浮かれていた。
なにせ遅いながらもようやく芽生えた――というか、随分と長いこと芽生えて放置されていた――恋心は既に実っており、更に昨夜は就寝前に額にキスまでされたのだ。「おやすみなさいませ」の言葉と共に額に触れる優しい感触、嬉しそうに微笑むアディの顔……ホワホワと頭に花が咲いたまま眠り、起きたときはお花畑である。その繁殖力、ミントの如く。
おまけに、誰もが昨夜のメアリの行動から今朝はゆっくり休ませてやろうと考え放っておいたのだ。まさか早く起きて、さっさと身形を整えるとは誰も思うまい。
せめてメイドの一人や二人いて、温かい紅茶を飲みでもすればまだ少し頭の中の花も引いたかもしれないが……。
というわけで、浮かれたメアリはそのままホワホワと花をまき散らせながら部屋を出た。
「みんなに報告しなきゃ!」
という要らん義務感のままに……。
そうして最初に訪れたのは父親の部屋である。
アルバート家当主、王族と並ぶ権威の持ち主であり、今や王家を支える忠義の支柱とまで言われている。
そんな人物が待ちかまえる部屋なのだ。一般人であれば、いや並大抵の貴族でさえ入室前に深呼吸をして心拍数を落ち着かせるというもの。とりわけ早朝からの訪問となれば、時間を改めてと臆して出直す者さえいそうなものだ。
もっとも、娘であるメアリは臆することも時間を改めることもなく、コンコンと軽くノックをし返答を貰うとゆっくりと扉を開いて中を覗いた。
見れば、父親と二人の兄が机を囲んでなにやら真剣な面もちで話し込んでいる。こんな早朝から仕事とは大変ね……と思いつつ室内に入り、彼等の近くにある椅子に腰掛けた。
「おはよう」と朝の挨拶を交わしあう口振りこそ普段通りだが、その表情が「わざわざどうした?」と言いたげである。それを察し、メアリがコホンと咳払いをした。
「あのね、お父様、お兄様……」
「うん?」
改まってメアリが話し始めれば、彼等も手を止めて視線を向けてくる。
その視線に思わずメアリがポッと頬を赤くさせ「私ね……」と続けた。
「私ね、アディと結婚したの」
そう頬をおさえながら告げるメアリに、アルバート家当主と、そして二人の兄が思わず顔を見合わせた。
何を今更……と。
アルバート家であれだけ騒がしく手続きをし、何より貴族の結婚ゆえ当主のサインは不可欠。むしろメアリより父の方がサインをした回数が多い位なのに、いったいどうして今更こんなことを……と、そう思いつつ三人が揃って
「知ってる」
と返した。
「あら……そうよね、知ってるわよね」
「どうしたんだ、メアリ」
「そう……あのね、それで……昨日知ったんだけど、アディは私のことが好きで、愛してるから結婚したかったんですって」
ポッと更に頬を赤くさせるメアリに、再び三人が顔を見合わせる。
この娘――この妹――は何をどうして今更そんな話をしているのかと思いつつ、再度三人が口を揃えて
「知ってる」
と返した。
そして今回は更に「良かったな」という祝いの言葉も付け足しておく。このまま放っておけば、メアリが頓珍漢な話をし続けてしまうのを家族の勘で察したからだ。
それに対して嬉しそうに頷くメアリの純度の高い笑顔といったらない。もっとも、そんな笑顔のまま「お母様にも報告しなきゃ」と一礼して部屋を去っていくのだから、まったくもって彼等には意味が分からない。
アディがずっとメアリに想いを寄せていたことなど、誰が見ても明らか。
メアリ同様に彼もまた『完璧な従者』を演じられるのに、メアリと共にいる時だけは素の自分で接していたのだ。そして常に隣にいて、誰よりも彼女を理解していた。
その関係が『従者』の域を出ていることくらい誰だって分かるだろう。もっとも、メアリはどうやら昨夜気付いたようなのだが。
それらを考え、「ふむ」とアルバート家当主が重々しく呟いた。それに対して彼の若い頃によく似た二人の息子がニヤリと口角をあげる。
そうして誰からともなく「喉が乾いた」だの「小腹がすいた」だのと言い出すのは、言わずもがな軽食の手配を理由にとある人物を呼びだして、昨夜のことを聞き出すためである。
父と兄がそんなことを企んでいるとは露知らず、ホワホワと頭の中に花を咲かせるメアリは軽い足取りで母親の部屋までいくと、先程同様にノック音を響かせた。
返答を待って中に入れば、優雅に手芸を楽しむ母と、その周辺で部屋を片したり花を飾るメイド達の姿。母の銀糸の髪は今日も軽やかに揺れ「おはようメアリ」と微笑む様の美しさといったらない。
「どうしたの?」
「お母様、あのね……」
母の向かいに座り、メアリがポッと頬を赤くさせる。
そうして出された紅茶を一口飲むと「あのね……」と口を開いた。
「お母様、私……アディと結婚したの」
「えぇ、知ってるわ」
「そうよね、知ってるわよね。あのね、みんな」
「存じております」
一刀両断と言わんばかりにあっさりと返され、メアリが僅かに目を丸くさせる。もっとも、アルバート家夫人であるキャレルは夫と共にあれこれとサインをしたし、メイド達もパトリック指揮のもと手配に走っていたのだ。
結婚の報告など今更、もっぱら最近は披露パーティーでの装いや曲目、食事やお酒はどうしようかといった先の話をしている。
それを理解し、メアリが「そうよね」と頷いて返した。そうして再度、ポ…と頬を赤らめる。
「それでね……私、アディのことをちゃんと愛していたの」
そう照れくさそうに報告してくるメアリに、母はもちろんメイドまでもがこの娘は――このお嬢様は――何を言ってるんだと顔を見合わせ、口を揃えて
「知ってる」
と返した。
そうして「他にも伝える人がいるはず」と浮かれたまま去っていくメアリを見送り、誰からともなく一息ついた。
「まったく、我が娘ながら理解しがたいわね。今更なにを言ってるのかしら」
「えぇ、本当ですね」
そう穏やかに交わし、クスクスと笑いあう。
メアリがアディに好意を寄せていたことなど、彼女と近く接していれば誰だって気付くと言うもの。時に誰より令嬢らしく、時に誰よりも令嬢らしからぬメアリは、その二種類の自分を巧みに切り替えつつ、それでいてアディの前でだけは常に『只のメアリ』であったのだ。そしてその時の彼女の楽しそうな表情と言ったらない。何も繕わぬ、繕おうともしない、純粋な表情なのだ。
それを好意と呼ばずに何と呼ぶのか。もっとも、本人は昨夜ようやくその呼び名に気付いたようだが。
そこまで考え、キャレルが手にしていた刺繍針を机においた。
「ねぇ」とメイド達に声をかけるその表情は随分と楽しそうではないか。
「ねぇ、貴女達も少し休んだらどうかしら? 一緒にお茶をしましょう」
「私達もですか?」
「そうよ……だから、誰かにお茶の用意をしてもらわなくちゃ」
そうニッコリと微笑むキャレルの美しさと言ったらない。まるで聖母のようなその笑みに、意図を汲んだメイド達もまた愛らしい笑顔で「はい」と頷いて返した。
そんなやりとりが行われていることなどまったく考えもせず、ホワホワと花をまき散らしながら屋敷内を歩き、世話になった者達に――今更な――報告をしてまわっていたメアリが、見覚えのある背中を見つけてピタと足を止めた。
ピンと伸ばされた背筋、スラリとした体つきに長い手足、風を受けて揺れる藍色の髪……。パトリックに間違いないだろうと踏んで、メアリが小走りにその人物に駆け寄った。
「パトリック」
「あぁ、メアリか」
「こんな朝早くから……あら、もうそんなに早い時間でもないのね。とにかく、どうしたの?まだ何か書類が残ってた?」
「いや、今日は俺の家のことで君の父上に話を聞いて貰おうと思って。……なんだか最近は毎日のように来てるな」
メアリよりこの屋敷にいる。そう冗談めいて肩を竦めて笑うパトリックに、つられてメアリも笑みをこぼす。
メアリとアディの件もあったが、それ以前からパトリックは頻繁にアルバート家を訪れていた。
ダイス家の跡継ぎ交代やその際に起こるであろう諸々の問題に対し、アルバート家当主の話を聞きに来ていたのだ。実際にダイス家当主が正式に跡継ぎ交代を宣言し何かしらの問題が起こったとして、それを収められる力や能力を持っているのは貴族の中ではアルバート家ぐらいなものである。今やパトリックだけでなく跡継ぎ交代を控えている弟も、それどころかパトリックの両親である当主と当主夫人さえも、何かあればアルバート家を頼り、そして何かあったときは助力し、互いに交流を深めていた。
「まさか、ここまで世話になるとはな」
「そうね、以前では考えられなかったわ」
以前の両家の関係と言えば、表向きの交友こそあれど明確な権威の差があり、そして他家の目を気にして両家とも見栄を張った付き合い方をしていた。メアリとパトリックをまるで恋愛結婚のように扱っていたのがまさにである。どちらも「結婚を申し込む」等と相手に頼み込むような真似は出来ないと考えていたのだ。
――もっとも、そのまま結婚していたとして両家がここまで近付くとは思えないが。所詮は政略結婚、それで得られるパイプはパイプでしかなく、頼り頼られの関係にまでは漕ぎ着けられなかっただろう――
例えばパトリックが「流石はアルバート家当主だ……」と藍色の瞳を輝かせて話を聞いたり――それを見たメアリは「うわ、またお父様信者が増えた」とうんざりした――そんなパトリックや彼の弟に対してアルバート家当主が「長男は勿論、次男も三男も優れてる。あと二・三人娘がいれば良かったな」と割と本気で言ったり。そんな取り繕わない良好な関係が出来るとは、まったく思っていなかったのだ。
そう考えると、今まで散々お似合いだのと言われた賛辞が皮肉にすら思え、二人でクツクツと苦笑をもらしていると、メアリがふと思い出したようにパトリックの名を呼んで彼を見上げた。
藍色の髪と同色の瞳は吸い込まれそうな程に色濃く、整った顔付きはまさに女性の理想。だというのに相変わらず見つめていても心拍数は一定のリズムを保ち、見つめ返されても胸が締め付けられるような痛みもない。以前はそれを不思議に思ったものだが、自分の心が誰にあったのかを知った今では、むしろ当然だとすら思える。
「パトリック、あのね」
「どうした?」
「私、結婚したの!」
「知ってる。俺が手配したからな」
「そう、そうだったわ。感謝してるわ。……それでね」
ポッとメアリが再び頬を赤くさせ、まさに恋する乙女といった麗しい表情で頬をおさえた。
これにはパトリックも思わず目を丸くさせてしまう。あのメアリがこんな表情と仕草をするなんて……と。
「それでね……」
「あ、あぁ……それで、どうした?」
「私とアディはね……ずっと昔から両思いだったの」
そう嬉しそうに話すメアリに、パトリックがしばらく呆然とした後
「……知ってた」
と呆れたように返した。
「そう……皆、私が思っている以上に勘がいいのね」
「というか、君が自分で思っている以上に鈍いんだと思うけどな」
「なるほど、その可能性があったわね」
そんな明後日な会話をしていると、パトリックが小さく溜息をつき、改めてメアリの名を呼んだ。
「メアリ、おめでとう」
と。ダイス家の嫡男としてアルバート家の令嬢の結婚を祝うでもなく、只のパトリックから只のメアリへと向けられた言葉に、メアリも素直に頷いて返した。
「ありがとう、パトリック。アディが居なければ迷わず貴方と結婚していたわ」
「あぁそうだな。アリシアとアディが居なければ、きっと俺達は既に夫婦だったと思うよ」
そうお互いに、自分の中で最高級の賛辞を交わし合っていると、ふと背後からパタパタと軽快に走る音が聞こえ……
「メアリ様! おはようございます!」
と、勢いよくアリシアがメアリにタックル……ではなく、抱きついてきた。
その瞬間の、メアリの「うぐっ……!」というくぐもった声と言ったらない。
「ア、アリシアさん、おはよう……昨日は…お世話に……やめて離して! なんで徐々に締め付けてくるのよ!」
離れなさい!とメアリが強引に引っ剥がすとアリシアが楽しそうに笑い、スカートの裾をつまみ上げて丁寧にお辞儀をした。先程のタックルさえなければ、その仕草と改めて告げられる「おはようございます、メアリ様」という穏やかな朝の挨拶はまさに王女そのものではないか。
もっとも、そう思った矢先に普段のアリシアらしい太陽のような笑顔に戻り「メアリ様!」と腕を引っ張ってくるあたり、どうやら王女でいられるのは時間制限があるらしい。
「メアリ様、昨日は帰られたけど、今度はうちに泊まっていってくださいね。お泊まり会をしましょう!」
「いやよ、私枕が変わると眠れないんだから」
「えぇー、そうなんですか……」
「そうなのよ、どうにも余所の枕って高さが合わなくってね」
申し訳なさそうに告げるメアリに、アリシアが残念そうに掴んだ腕を離す。その際にメアリがポツリと呟いた「まぁ、枕が無くても眠れるんだけど」という言葉は生憎とアリシアの耳には届かなかったようだ。
だが近くにいたパトリックには聞こえたようで、悪戯気に小さく舌を出すメアリに呆れたように溜息をついた。
そんな三人が揃えたように同じ方向に視線を向けたのは、再び誰かが走ってくる足音が聞こえてきたからである。
ついで「お嬢!」と聞こえてくる夫らしくも従者らしくもない呼び方。言わずもがな、アディである。
随分と急いでいるようで、駆け寄るとパトリックやアリシアに挨拶をする余裕もないとメアリに詰め寄った。
「お嬢! 何を言いふらしたんですか!?」
「なにって……何のこと?」
「朝から旦那様や奥方様に呼ばれて生暖かい目で根ほり葉ほり聞き出されるわ、どこに行っても皆がニヤニヤ笑いながら祝ってくるわで、散々なんですよ! 何を言ってまわったんですか!」
「あら? 私別に変なこと言ってないわよ?」
よっぽど恥ずかしい目にあったのか真っ赤な顔で問いつめるアディに、対してメアリはキョトンと目を丸くさせ、本当に心当たりがないと言いた気に首を傾げた。
事実、メアリからしてみれば屋敷中に結婚の報告をしてまわったに過ぎず、二人の関係を――メアリが考えている以上に深く――知っている周囲からしてみれば「昨夜なにかありました」と言い回っているようなもの……とは到底思いもしないのだ。メアリからしてみればあくまで結婚の報告である。ただちょっと頭の中が盛大に花畑であったため、本人が考えている以上に惚気ていたのもあるが。
そんな粗方の事情を察し、パトリックが溜息をつきつつ先程のメアリの結婚宣言を話してやった。
「お……お嬢……まさか、朝から「私達、結婚しました!」って言ってまわったんですか……?」
「皆知ってたわ!」
「そ、それで、俺達が両思いだったことも……」
「皆知ってたわ!」
驚きよね!と興奮気味のメアリに、真っ赤だった顔を更に赤くさせ、アディが耐えられないと両手で顔を覆った。
代々仕えている家で誰だって気付くような片思いをし続け、ようやく実った途端に妻が惚気てまわったのだ。これを恥ずかしがるなと言うのが無理な話で、当分は屋敷内で話題になり、冷やかしの種になるのは言うまでもない。
そんなアディの胸中を察したパトリックが慰めるように肩を叩いてやった。
対してメアリはいまだ不思議そうに首を傾げたまま二人に視線をやり、はたと何かを思い出したように「そうだ!」と声をあげた。
「私、今日は早めにエレシアナに戻るんだった」
「これだけ爆弾投下しておいて、俺を一人残してエレシアナに行くんですか!?」
「なによ人聞きの悪い。パルフェットさんにケーキを頼まれてるのよ」
人でなし!とまで喚くアディに、メアリが失礼なと言いたげに事情を説明する。
それを聞いたアリシアの瞳が一瞬にして輝きだしたのは、ケーキという単語と、メアリの告げた店名に反応したからである。いつの世も、そして精神の強度に問わず、女は甘いものに弱いのだ。
そうして、普段ならば「もう少し居てください」と出発時間のギリギリまでメアリを引き留めるというのに今日に限っては「買うには並びますよ!」と急かすのは、もちろん自国が誇る自慢の一品を隣国で披露して貰いたいからであり、国を愛する王女の気持ちとケーキを愛する乙女心からである。
そんなアリシアに背を押されつつ、メアリが「それじゃ、また次の休みに」と軽く挨拶をして去っていく。当然その後をアディが追いかけるわけで、残ったのはパトリックとアリシアの二人きり。
アルバート家においてダイス家嫡男と王女が二人でいるというのは些かおかしな話ではあるが、交流が盛んになった最近では見慣れた光景でもある。
「あの二人は結婚したのにまったく変わらないな」
溜息混じりにもらすパトリックに、隣に立つアリシアがクスと小さく笑って頷いた。
相変わらずメアリとアディは主従らしくなく、そして結婚したというのに夫婦らしくもなく、それでいて何とも二人らしいのだ。
そんな二人の背中を見送り、パトリックが本来の用事を果たすべく歩きだそうとし、クイと腕を掴まれた。見ればアリシアが少し拗ねたような、甘えるような表情で見上げている。
「アリシア?」
「メアリ様、幸せそうですね……」
「浮かれすぎな気もするけどな」
「いいなぁ……」
メアリ達の去ったあとを溜息混じりに眺めていたパトリックが、返すように呟かれたアリシアの言葉にドキリとして彼女に視線を向ける。
アリシアの紫の瞳が何かを強請るように、甘く、魅惑的にパトリックをとらえる。
「いいなぁ、メアリ様」
甘えるような声色の言葉に含まれている意味も、愛しい恋人が何を望んでいるのかも、他でもないパトリック・ダイスが気付かないわけがない。
だからこそパトリックが頬を赤くさせつつ、コホンと咳払いをしてアリシアの名前を呼んだ。
「アリシア……今夜、二人で食事に行かないか?」
「食事、ですか?」
「あぁ、その……大事な話があるんだ」
そう照れくさそうに告げるパトリックに、アリシアが今日一番輝かしい笑顔を浮かべ「もちろんです!」と頷いた。
数日前、エレシアナ学園にて
「メアリ様、あの……お、お願いが……あの、嫌だったらいいんです……! め、面倒ですし…そうですよね、面倒ですよね、嫌ですよね……ご、ごめんなさい……!」
「待って! 私まだ何も言ってない!」
「でも、メアリ様にご迷惑を……うぅ」
「何!? 何が望みなの!?」
「あの、ちゃんとお支払いはします……だから……でも」
「支払い……何か買ってきてほしいのね!?」
「でも、メアリ様に食いしん坊だと思われたら、私、恥ずかしくって……」
「私に何か食べ物を買ってきてほしいのね!?」
「で、でも、私もちゃんと自分で買おうと思って……でも、着く頃にはいつも売り切れちゃって……」
「人気があるのね!? 私に何か人気のある食べ物を買ってきてほしいのね!?」
「あ、あの、ちゃんと食べたあとは動くようにしてますし、紅茶のお砂糖も少な目にしてるんです……!」
「太るのね!? 迂闊に食べると太る人気のある食べ物を私に買ってきてほしいのね!? 近付いている……私、いま確実に答えに近付いている!」
というやりとりがあったとか。