第零章 序章-Prologue-
青い。まっさらな群青色の空。太陽が燦々と地上を照らしている。
そんな夏の日。
いつもと変わらない人の流れ。いつもと変わらない景色。
けれども、今日は彼にとってはとても大事な日。
「ほんとにそのつもりなのかい?」
彼の前に座っている少々強面の男性が、心配そうに眉根を寄せて問いかけてくる。
彼はそれに、一度強く頷いた。
しかし、相手の顔色は優れない。男性の隣に座っていた少女も、心配そうにこちらを見つめてくるだけだ。
「もう、決めましたから」
彼はにっこりと微笑んで続ける。
「俺が……僕がこの家に来てから本当に良くしてもらいました」
「でも! 折角受かったのに……。別に遠慮なんていらないんだよ?!」
「ルエの言うとおりだ! たかが家の事情で君の将来を潰すわけには……っ」
とても悔しそうに、苦しそうに、悲しそうに男性は言葉を漏らす。
少女の瞳には今にも溢れそうなほど涙が溜まっていて。
彼はあまり音を立てないように立ち上がろうとした。
「……親父もルエもそれは俺に対する当てつけか?」
だが、バンッと扉を開け放って現れた青年に、立ち上がるタイミングをずらされてしまう。
ズカズカと青年は彼に近寄ると、その頬に平手打ちを食らわせた。
半瞬遅れて甲高い音が響く。
「お兄ちゃん!」
少女が椅子を揺らして立ち上がった。
が、それを男性が止める。
「お前は……いったい何様のつもりだ? 進学にお金がかかるから家を出る? それは俺への当てつけか? それとも自分は聖人君子のつもりか?」
青年が叫ぶように言った。
少女がとうとう痺れを切らして叫ぶ。
「お兄言いすぎっ!」
「ルエは黙ってろ!」
しかし言葉は軽く一蹴され、少女はなおも何か言いたそうにしながら席へ着いた。
それをみた彼は青年と正面から向き合う。
「ルエは関係ないでしょう? それにもう僕は出ますから」
「っ! そうかよ! ならば勝手にしろ」
「はい」
青年は苛立ちを隠さずに机を力任せにたたくと、振り向きもせずに部屋を出て行った。
それを見送った男性がこちらへ向かって、
「……もう、行くのか?」
「はい」
彼はにっこりと微笑んでいう。
「もう、これ以上お世話になるわけにはいけませんから」
「そうか。何かあったらすぐ帰ってくるんだぞ?」
「ありがとうございます」
彼は深く頭を下げて、踵を返した。
その後ろ姿へ男性と少女の言葉が投げかけられる。
「帰ってきてね。フリア」
「いつでも帰ってこい。フリア。ここが……お前の家だからな」
<誤字脱字などが有ればご報告をお願いします>
一話1000~2000程度で書いていこうと思います。
よろしくお願いします。




