NEETは来客に弱い
NEETとは職を持たず、働く意志も無い。それらしい理由をつけて、家族を騙してでも働く事から逃げ続ける。
そのくせ、部屋に閉じこもって電気を使い、便所に行けば水を使い、空気を吸って二酸化炭素を排出し、働かない癖に口だけは一人前。
このため、「働かざる者食うべからず」を美徳としている世間では人間のクズとして扱われる。
――某情報サイトより抜粋。
NEET、そう。
それは、選ばれなくてもなれる勇者。
世間からは蔑むように見られ、同情され、またある時は羨望されるべく存在。
まるで物置のような、四畳半の狭い畳の部屋に俺はいた。
俺、中城 靖也はNEETであった。
……NEETであるがゆえに、孤高であった…………。
高校を中退してから2年、社会という闇と戦う元・我が同胞は今年で18歳になるらしい。
元気にしてるだろうか?
何もかもが面倒になった俺は光の速さで高校を中退し、毎日インターネットと漫画を読み漁る。
両親は呆れて何も言わず、こうして親にも見捨てられた俺は、雲を見て時間の流れを知るという特技を会得した。
「もう昼か……」
そして起きる時間は決まって昼過ぎ。
「今日もお気に入りのお宝画像でも探すとするか……」
毎日のライフワーク。
俺の仕事はコレ、だから俺はNEETなんかじゃない。
ピンポーン
チャイムが鳴った。
……誰も出る様子がないな。
1階で物音がしないという事は家族はいないのだろうか?
今日は何曜日だ?
「水曜日かよ」
一体何回目の水曜日かなんてのは知ったこっちゃないが、親父は出勤、母ちゃんはパート、妹は……学校じゃん。
でも気にしない、百戦錬磨の俺は居留守も使ってしまう。
蛻 の殻だと落胆して帰っていくがいい、悪徳セールスマン。
「ふっ……負けを知りたい…………」
ネットで良く見る用語をとりあえず呟き、余韻に浸る。
ピンポーン
「何……だと?」
かなり相手も頑固だな。
そこにいると疑わない、その揺ぎ無き信念……立派だ。
「だが、屈しない! テロには屈しなーい!」
ピンポーン
「……」
ピンポピンポピンポーン
連打!?
しかも、そのチャイムは秒間16連打を記録しそうな勢いだ。
気になった俺は、恐る恐る玄関へと近づいた。
ガチャガチャ
ドアノブを捻っている。
空き巣か?
高鳴る心臓を抑えて扉の向こうの景色を覗こうとして――――
バキィィ
という音と共に扉ごと後ろに吹き飛ばされた。
「うわっ!?」
扉は無理矢理抉じ開けられていて、修復は無理そうだ。
その扉を壊した相手だけでも確認しなければいけない。
それが自宅警備を任される俺の宿命だった。
「お前は中城靖也だな? 私は久遠音子 NEET使いだ」
とんでもなく可愛い女の子が、扉をぶっ壊して、虫を見るような目でボクを見てきます。
「お前は私のNEETになれ!」
俺の知らない間に随分と社会は変わったなぁ。