*交錯する感情
「戒が?」
翼は、2日後に行われる余興に戒が参加すると聞き呆然とした。
これが上手くいけば、戒の人気はさらに上昇するだろう。
「チッ、またあいつか」
「真仁のお気に入りだからな」
他のハンターたちは、そんな戒が妬ましく口々に悪態を吐いた。
だからといって、自分たちが彼に勝てるとは思えない──そんな意識が、ハンターたちから見え隠れしていた。
ハンターたちに中にあって、戒の戦い方はかなり独特だといえる。
俊敏かつ滑らかな動きは次の行動が読みづらく、出来るなら闘いたくない相手にハンターたちの中では位置づけられている。
男たちの愚痴が飛び交うなか、翼だけは頭を垂れて無言で床を見つめていた。
組織を代表する形で戒が参加する。
喜ばしい事ではあるが、どうしてだが素直には喜べなかった。妬ましい訳でも、羨ましい訳でもない。
「お? お出ましだぜ」
「!」
誰かの声で頭を上げると、戒の姿が見えて急くように立ち上がった。
「か、戒!」
聞き慣れた声に視線を向ける、駆け寄る翼に少し眉間にしわを寄せた。
「なんで受けたの?」
問いかける青年の表情は険しい。
「仕方がない。俺たちは雇われだ」
押し殺して発した。
翼を守りたかった訳じゃない。しかし、この余興に翼は不向きだと感じたのは確かだ。
「そか……そうだよね」
納得しきれない感情が顔に表れているが、無理矢理に納得するように目を伏せた。