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*微笑みの向こう

「戒!」

「翼か!?」

 嬉しそうに駆け寄る翼に戒は驚き、バギーから降りる。

 青年は目の前まで来ると、少し荒くなった息を整えながら戒を見上げた。

「何故ここに」

「僕も辞めてきた」

 目を丸くしている戒に、ニコリと笑みを浮かべる。

「両親はどうした」

 少し怒った口調に小さく笑んで、拡がる大地を視界全体で捉えた。

「2年前に2人とも死んでるよ」

「!」

 それに少し驚き、目を合わせようとしない翼に溜息を吐く。

「戒は、兄さんみたいなんだ」

 ぽつりと発し、再び戒の目を見据えた。

「兄弟はいないけど、そんな感じがするんだ」

 戒は、困ったように微笑む翼に目を細める。

 翼の言葉に驚きながらも、何故か少し「そうかもしれない」とも思った。

「俺にも兄弟はいない」

「戒って、本名はなんて言うの?」

「……捨てたよ」

「そか」

 つぶやいて草原を見渡した。

「じゃあ、僕もいらない。今の名前でいいや」

 男は、感情の読み取れない翼の瞳をじっと見下ろした。

「良いところだね」

 戒の視線を誤魔化すように発する。

「ああ」

「ね、戒の家につれてってよ」

 草原を見つめていた翼が、小首をかしげて微笑んだ。

 戒はその笑顔に、かつての恋人の微笑みを重ねる──俺が生きる意味を、お前が与えてくれたのか?

 そう思えてならなかった。

「弟か……」

 本当にいたとしたら、こんな感覚なのかもしれないな。

 薄い雲がまばらにかかる空を見つめ、新たな家族が出来た事に小さく笑みを浮かべた。


 緑の風が頬を滑っていく──今までの事、そしてこれからの事を2人はいつまでも語り合った。


END

*最後までお付き合いありがとうございます。

読んでくださった皆様が少しでも楽しんでいただけたなら幸いです。

 2011.2.4 河野 る宇

 2013/04/22 推敲


※作中に登場する大地、空、雪、戸塚の4人は瀬田一郎さまのキャラクターです。これらのキャラクターは瀬田一郎さまの著作権下にありますです。


*続編「踊れ その果てでⅡ<ケルベロスの牙>」

 よろしければ読んでみてくださいです。

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