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踊れ その果てで*エデンの園  作者: 河野 る宇
◆第4章~傷跡のありか
12/15

*青年についての考察

 ゲームが終了し、真仁まひとは戒のVTRを1人モニタールームで眺めていた。

 時刻は深夜12時を少し回った処か。

 暗い部屋に、ディスプレイの光が異様な光景を作り出す。青年は戒の姿にうっとりするような瞳を浮かべた。

 彼が何故、この組織のトップにいるのかは謎に包まれている。青年は自分の事はあまり話さない。

 27歳で両親はおらず、病死なのか事故死なのかすら、誰も知り得ていない。彼が殺したという噂まで流れている。

 青年がトップを勤めるこの組織は、他の組織とは異なりハンタードッグたちは意外と自由にしていた。

 経営しているクローン風俗店も無く、希望されるクローンを作成し、それを売買する他はハンタードッグの管理だけでこの組織は成り立っている。

 かなり特殊だといっていいだろう。

 双竜のいる組織は言ってみれば、正しく『悪の組織』をしている。

 トップにいる戸塚という男は、強欲を絵に描いたような人間だ。

 真仁は組織のトップとして戸塚とも付き合わなければならないが、それがなければ決してあの男と仲良くはしたくないと思った。

 若い真仁を見た瞬間の反応はあからさまで、大きな力を持っていると知った時の反応も実に解りやすかった。

 真仁の組織は非合法な活動をしていない。なのに、この組織は上位に位置している。

 それは本来なら、あり得ないと言ってもいい。

 クローンが世界的に認められてから、情勢は微妙な均衡を保ちつつも変化していった。日本は最たるものだろう。

 野生動物の7割が保護の対象となり、富裕層と貧困層の格差はさらに広がってその鬱憤晴うっぷんばらしでもするように『牧場』が誕生した。

 この牧場を運営しているのは日本の組織ではなく、アメリカの企業だ。あちこちの国で非合法な方法をもちい、のし上がってきた。

「う~ん……やっぱり渋いな」

 と戒の動きにニヤけた表情を浮かべた。

 本人は「変態じゃない」と言い張るが、そんな言葉に納得出来る者はいそうにない。

 青年は、むしろ戸塚という男の方が変態だと思い起こす。

 真仁に取り入ろうとしてゴマすりよろしく、必死で贈り物をせこせこと送りつけてきた。

 挙げ句の果てに、なかなか自分になびかないものだから真仁をゲイだと思い少年のクローンを送ってくる始末だ。

 さすがにこれには参った……と頭を抱え、その少年をモニタールームで雇う事にした。

 いわば「お茶くみ」だ。

 真仁の言ったものを運んでくる簡単な仕事をさせている。

 もちろん『所有物登録』を済ませ、自分の家に住まわせている。

 そうしなければ違法だとみなされ、政府に連れて行かれ殺処分されてしまう。

 それを了承するほど悪人でもないという事なのだろう。

 そんな真仁が何故、こんな非合法の組織に荷担しているのだろうか──?

 とにかく、真仁という人物については謎だらけなのである。

「あ、革製の服なんかだともっと格好いいかも?」

 ぶつぶつと戒のVTRを見て独り言をつぶやく。その右手首にはプラチナのバングルが輝いていた。

 落ち着いたツタの模様が描かれた、品の良いシロモノだ。

 彼の外見と違和感無く、ひっそりとそこにあった。

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