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踊れ その果てで*エデンの園  作者: 河野 る宇
◆第1章~ハンタードッグ
1/15

*囲いの中

*瀬田一郎さま製作協力。続編もあるので皆様どうぞ読んでみてくださいですです。

「……」

 男は目をすがめ、高い塀を見下ろす。

 塀の中はとても暗く、夜だというのに街灯も無い。

 灰色に塗られた塀の上部に一定距離で設置されている、薄暗いLEDライトだけが中に向かって照らされていた。

 男の手の中にあるグラスには琥珀色の液体が注がれていて、乱雑に割られた氷が浮かんでいる。

 その液体をぐいと飲み干し、ベランダから見える風景と星空を一瞥して部屋に滑り込む。

「!」

 部屋に入ると、リビングテーブルに乗せられた携帯端末が震えていた。

 男はそれに軽く舌打ちをし、乱暴に手に取る。

カイ、仕事だよ>

「少しくらいゆっくりさせろ」

 聞き慣れた若い男の声に眉を寄せる。

<仕方ないだろ>

 簡素に言い放ち切られた通話に再び舌打ちをした。

 色あせた肩までの黒髪と、赤が濃く映し出された黒い瞳は、まるで血が固まったような印象を与える。

 男は、かけられている薄い生地で作られた草色のコートを奪うように掴み、部屋をあとにした。

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