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三題噺もどき5

不審情報

作者: 狐彪
掲載日:2026/09/08

三題噺もどき―きゅうひゃくさんじゅうに。

 




 廊下が騒がしくなってきた。

 教室内も少々ざわざわとしているが、ささやき声が聞こえる程度。

 教壇では、クラス担任の教師が何かを話している。

「……」

 机の上に置いたリュックが邪魔でよく見えない。

 指定鞄も机の上に置いているので、物を置く隙間はあまりない。

 せいぜい角の方に開いているかもしれない、というくらいだ。

「……」

 一日の授業が終わり。

 もう残り、ホームルームが終われば終わり。

 廊下はすでに終わった他のクラスの人たちが動き出しているせいで、騒がしい。

 もう、あの子のクラスは終わっただろうか。

「……」

 というかそもそもそんなに話すようなことはないと思うのだが、何を言っているのだろうか。夏休みも終わり、2週間目に突入しようというところだ。

 今月はシルバーウイークがあるが、それはまだ先だ。

「……」

 ほう。

 どうやら不審者情報があるらしい。

 ここは、小学校と高校があって、幼稚園や、すぐ目の前には公園もある。

 まぁ、確かに子供と呼ばれる人間たちが大勢集まってはいるが。

「……」

 意外と学校の近くで目撃されているのが驚きというか。

 なんというか、こんなこと言うとあれなんだけど……よくそんな人目に付きそうなところで不審なことができるもんだな。

 そういうのって、もっと人目につかない所でするもんじゃないんだろうか。

「……」

 過去に、まぁ、そういう被害にあったことのある身としては。

 早々に捕まえるなりなんなりしてほしいものだが。

 さすがにこの身なりで、自転車通学をしているから、被害を被ることはないと思ってはいるが……。

「……」

 あれもまぁ、学校の近くではあったか……なんか。

 うーん。思いだしたくもないが、まだ忘れ切れていないと言うか……せいぜい6,7年前のことなので。あれ以降かどうかは分からないが、どうにも男性は苦手になりつつある。

「……」

 被害としては確かに軽いモノではあるが、それでもあの頃の私にしてみれば、相当だったのだろう。意識しないようにしているし、忘れるようにしているから、分からないけれど。

 今でもたまにフラッシュバックはしなくもない。あの時さっさと帰ればよかったとか、えんぴつの忘れくらい置いてきてよかったのにとか、もっとしっかり止めればよかったとか。

「……」

 過去のあれこれを思い出しながら。

 リュックにぶら下がっているキーホルダーをいじっている。

 あの子に貰った、口紅の入ったキーホルダー。

「……」

 いいにおいがするのが不思議なんだよな。

 どこで買ったのかも教えてくれなかったし。

 こういうのを見たことがないから、探しようもなくて。

 まぁ、さすがに貰ったものの値段を聞いたりは出来ないから。

「……」

 心なし、そわそわとしていた何かが。

 少し落ち着く。

 丁度そのタイミングで、教師の話も終わった。

 起立の号令がかけられ、一斉に立ち上がる。

「……」

 私も当然、立ち上がる。

 椅子を後ろにおしながら席を立つと、スカートの裾が椅子の端に引っかかる。

 おかげでまっすぐ立つことが叶わなかったが。

 礼の号令が掛けられたので、そのままの姿勢でお辞儀をする。

「……」

 教室は一気にお祭りムードになり、ガヤガヤと騒がしくなる。

 私はもう一度座りなおし、スカートの裾を椅子から離す。

 何に引っかかったのかと思ったら、紐がほつれていたらしい。

「……」

 帰ってどうにかしておこう。

 今日は部活もいかないでおこうかなぁ……どうしよう。

 まぁ、とりあえず、あの子のところに行ってから考えよう。

 帰るにしても部活に行くにしても一回部室にはいくし。

 そうしよ。











 お題:えんぴつ・口紅・スカート

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