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三大欲求議論

作者: P4rn0s
掲載日:2026/02/25

タイムラインを指で弾いた瞬間、またそれが流れてきた。


三大欲求に排泄を入れろという文字列。

性欲は生きるのに必要ないという断言。

それに群がる、わかったような顔の人間。

画面は光っているのに、どこか湿っている気がした。


食欲は分かる。

眠気も分かる。

腹が減れば苛立つし、眠れなければ世界が歪む。


でも、そこにやけに勝ち誇った調子で、

「ほら、性欲は別に要らないでしょ」

と置かれる言葉を見た瞬間、

胸の奥がざらついた。


生きるのに必要かどうか、という物差しだけで、

欲求を並べ替えて、はい終わりとする。

その薄さに苛立ったのだと思う。


じゃあ、呼吸は。

体温は。

水は。


そうやって並べていけば、

欲求という言葉の輪郭は溶けていく。

でも、彼らはそこまで考えない。

強い言葉を置く。


「必要ない」

「だから外せ」


それで拍手がつく。


画面の向こうでは、誰かが賢くなった気分になり、

誰かが気持ちよく正義を振りかざしている。


でも、自分は違った。

なぜか分からないが、その「必要ない」という断言の奥に、

人間のぐちゃぐちゃした部分を切り捨てる冷たさを感じた。


性欲が美しいと言いたいわけじゃない。

正しいとも言わない。

ただ、それは確かに人を動かし、

人を狂わせ、

人を幸せにもする。


食欲や睡眠と同じように、

厄介で、面倒で、どうしようもない衝動だ。


それを、「個体の生存に不要だから」と、

スパッと外す、その合理性の顔が、どうにも苦手だった。


便意が勝つ瞬間はある。

腹が痛ければ、世界の何よりも優先される。

でも、それは順位の話であって、

存在を消す話ではない。


なのにSNSは、すぐに「消していいもの」を決めたがる。


自分の苛立ちは、排泄を入れるなという怒りじゃない。

欲求を。

人間の衝動を。

都合よく削って、整った顔に並べ替えるその態度に、

小さく反発しているのだと思う。


タイムラインを閉じたあとも、そのざらつきは残った。

別に議論したいわけじゃない。

誰かを言い負かしたいわけでもない。

ただ、人間はそんなにきれいに整理できないだろう、と。


食べて、眠って、誰かを欲して、

トイレに駆け込んで、泣いて、笑って、

後悔して。


その全部が混ざっているのに。

必要かどうか、だけで線を引くその軽さが、

どうにも寂しかった。


もしかしたら自分は、

欲求を守りたいのではなく、

人間の不格好さを守りたいのかもしれない。


そう思ったら、少しだけ気持ちが静かになった。


画面はまた光っている。

でも今は、開かなくていい気がした。

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