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第18話:新学期、最初の敵は「ちびっこ転校生」!? ~設定の詰め込みすぎで、教室のキャパが限界です~

読者の皆様、波乱の夏休み編を完走し、ついに「新学期編」の幕開けです!

正しく9月1日を迎えたはずの聖アリス学園ですが、少女漫画の定石通り、登校初日から「新しい波乱」が教室のドアを叩きます。


今回登場するのは、これまた極端な属性を背負わされた転校生。

結衣と佐藤君の「共作」による新学期が、今ここから始まります。

 9月の教室。

 夏休み前よりも少しだけ日焼けしたクラスメイトたちの喧騒、そして心なしか勢いを増した一ノ瀬の「王子様オーラ(黄金の粉)」が充満する中、ホームルームのチャイムが鳴り響いた。


「おい、結衣。夏休みの旅行をドタキャンした罪は重いぞ。今日の放課後、俺の特注ヘリで夕食を——」


「はいはい、一ノ瀬君。それは後で『不法侵入罪』の判例と一緒に聞くわね」


 私は、隣の席で鼻息を荒くする一ノ瀬を適当にあしらいながら、最後尾に座る佐藤君と視線を交わした。

 佐藤君は相変わらず、新しい文庫本を広げて「やれやれ」と肩をすくめている。私たちの間には、あの「余白の世界」で共有した、秘密の信頼関係が流れていた。


 だが、その平穏を切り裂くように、担任の先生が教壇を叩いた。


「静かに! ……今日は新学期早々、転校生を紹介する」


 教室の温度が、一気に数度下がったような錯覚。

 ガラリと開いたドアから入ってきたのは、一瞬、小学生が迷い込んだのかと思うほど小柄な少女だった。


「……ちっちゃ」


 誰かがこぼした呟き。確かに彼女の身長は145センチ程度だろう。156センチの私から見ても、頭半分以上は低い。

 けれど、彼女が放つ「圧力プレッシャー」は、一ノ瀬のそれに匹敵するほど強烈だった。


『ト書き:突如現れた謎の美少女転校生・白鳥しらとりアンナ。彼女の背負った「傲慢なお嬢様」属性が、ヒロイン・結衣の立場を根底から揺るがす!』


「……また、面倒くさそうなのが来たわね」


 私は、空中に浮かんだ真っ赤なテロップを睨みつけた。

 教壇に立ったアンナという少女は、145センチの体を精一杯反らし、クラス全員を見下ろすような視線で言い放った。


「私が白鳥アンナよ。この学園が『王子様』なんていう陳腐な設定で回っていると聞いて、退屈しのぎに来てあげたわ。……そこの一ノ瀬とかいう男、少し顔がいいからって調子に乗らないことね」


 あの一ノ瀬蓮に対して、ここまで真正面から喧嘩を売るキャラは今までいなかった。


「……なんだと? お前、俺が誰か分かって言ってるのか?」


 一ノ瀬の背後に立ち上る黄金のオーラ。対するアンナの背後には、まるで劇画のような「黒いバラ」のエフェクトが咲き乱れている。


「あら、聞こえなかったかしら? この『究極のコンパクト・サイズ』という魅力すら武器に変えてしまう私の完璧なプロットに比べれば、あなたの演出なんて古臭いのよ」


 アンナはツカツカと歩き出すと、私の机の前でピタリと止まった。

 そして、下からグイッと顎を上げて私を指差した。


「あなたが『元ヒロイン』の花咲結衣ね。……フン、156センチ? 中途半端ね。少女漫画のヒロインにしては存在感がありすぎるわ。これじゃあ王子に頭を撫でられた時の『萌え』が足りないわよ。ヒロインの座、私に譲りなさい」


「……は?」


 私は思わず、素っ頓狂な声を出した。

 中途半端? 156センチなんて、まさに理想的なヒロインサイズじゃない。

 というか、この子、自分の145センチという「ちび」属性を、「守られやすさ特化の武器」として完全に自覚して使いこなしている……!


「見てなさい。今からこの学園のメインストリームは、私の『傲慢ちびお嬢様ルート』に書き換えられるのよ!」


 アンナが高笑いを上げると同時に、私の視界にある「ト書き」がバチバチと火花を散らし始めた。


『システム警告:新キャラクターの強すぎる属性により、シナリオの主軸が崩壊の危機。ヒロイン争奪戦、強制開始!』


「……佐藤君、これ」


 私が後ろを振り返ると、佐藤君は眼鏡を指で押し上げ、何やら複雑な数式をノートに書き込んでいた。


「……まずいね、結衣さん。あの転校生、ただのキャラクターじゃない。……彼女は、作者が『テコ入れ』のために投入した、極端なキャラ付けの塊だ。……見て、彼女の頭上を」


 佐藤君に言われて目を凝らす。

 アンナの頭上には、名前の他に不気味なステータスが表示されていた。

『設定密度:500%(過剰)』


「設定が濃すぎて、彼女がいるだけで周囲の空間の『リアリティ』が削られている。……このままだと、クラスメイト全員が彼女を甘やかすだけの『取り巻き』に書き換えられてしまうよ」


 実際、周囲の男子たちが「……なんか、あの子守ってあげたくなるな」「気が強いけど、あのサイズ感がたまらない……」と、毒されたような目でアンナを見始めていた。


「ふふん、分かったかしら? これが『属性の暴力』よ!」


 アンナが一歩踏み出すたびに、床から黒いバラが湧き出し、教室の机を侵食していく。

 一ノ瀬さえも、その圧倒的な「濃いキャラ」に押されて「……チッ、面白い女だ」なんていう、これまたテンプレな反応を返し始めている。


「佐藤君、どうにかして! このままじゃ、私の新学期が『ちびっこお嬢様の召使い編』になっちゃう!」


「……仕方ない。……結衣さん、彼女の『属性』を逆手に取るよ」


 佐藤君は立ち上がると、迷いなくアンナの前に歩み寄った。

 175センチの彼が、145センチのアンナを見下ろす構図。その身長差、実に30センチ。


「君、転校初日から設定を盛り込みすぎだよ。……その『傲慢ちびお嬢様』っていうキャラ、維持するのにかなりのカロリーを消費してるはずだ。……ほら、足元を見て」


「な、何よ、急に……」


 アンナが視線を落とした瞬間、佐藤君が万年筆で空中に『物理法則:質量保存の法則』と書き込んだ。


「……君のその『威圧感』を維持するために、周囲の重力を3倍にした。……今の君には、その小さな体は相当重はずだよ」


「えっ……!? な、なによこれ、体が……重っ……!!」


 アンナの膝が、ガクガクと震え始める。

 傲慢なポーズを維持しようとするが、物理的な重圧に耐えきれず、彼女は私の机に突っ伏した。


「くっ、苦しい……! 誰か、私を助け……」


「……ほら、結衣さん。助けてあげて。……『小さくて可愛い妹を見守る、包容力のあるヒロイン』としてね」


 佐藤君の意地悪な笑みに、私はすぐに意図を理解した。

 私はアンナの肩にそっと手を置き、彼女より10センチ以上高い視線から、慈愛に満ちた(という名の、マウントを取るような)笑みを浮かべた。


「大丈夫? アンナちゃん。……やっぱり、そんなに小さいのに無理しちゃダメよ。重い荷物とかあったら、お姉さんに言ってね?」


『ト書き:ヒロインの圧倒的な包容力が、転校生の傲慢さを包み込む。……あれ? 逆に結衣の『姉御属性』が覚醒!?』


「な……ななな、なによこれ! 誰が助けろなんて……! でも、なんか心地いいわね……。お姉さんっぽくて、安心する……」


 アンナの顔が、一気に赤く染まる。

 傲慢お嬢様ルートが、一瞬にして「懐かれ後輩キャラ」に書き換えられた瞬間だった。


「……フン、作戦成功だ。……過剰な設定は、より大きな設定で飲み込めばいい」


 佐藤君が自席に戻りながら、私に小さくグッドサインを送った。

 一ノ瀬は「結衣……お前、いつの間にそんな聖母みたいな属性を……。ますます目が離せないぜ!」と、勝手に一人で盛り上がっている。


 こうして、新学期初日の「転校生襲来イベント」は、思わぬ方向へと着地した。

 けれど、私の足元でゴロゴロと懐き始めたアンナを見ていると、これから先、私の平穏な日常はますます遠のいていくような予感がした。


「……新学期、前途多難ね。佐藤君」


「……読者としては、登場人物が増えるのは大歓迎だよ。賑やかでいいじゃないか」


 窓の外には、高くなった秋の空。

 私の「書き換え」の物語、第2章は、どうやら今まで以上に騒がしくなりそうだ。

第18話をお読みいただきありがとうございました!

結衣(156cm)とアンナ(145cm)の身長設定を反映し、懐かれ属性に書き換えられたアンナが仲間に加わりました。


そして物語は、ここから学園生活最大のビッグイベントへ向けて動き出します! これより第19話から第23話までは**「修学旅行準備期間編」として、班決めや持ち物検査でのドタバタを描き、そして第24話から第55話という破格のスケールで「修学旅行編」**をお送りします!


次回、『第19話:修学旅行の班決めは戦場! ~一ノ瀬の買収工作と、懐き始めたアンナの独占欲~』。


結衣の苦労は、さらに加速していきます。

引き続き、応援をよろしくお願いいたします!

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