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第15話:夏休み15日目(二回目) ~終わらない宿題と、校舎に蠢く「謎の影」~

読者の皆様、そして結衣さん、本当に申し訳ありません。

前回の予告では「ラジオ体操に一ノ瀬専用の表彰台が出現」とお伝えしていましたが、物語の整合性をデバッグした結果、もっと深刻な事態が発覚しました。


一ノ瀬君の「夏休み延長」の余波で、世界に致命的なバグ——「実体化しないはずのボツ設定」が影となって現れ始めたのです。今回は予告を変更し、佐藤君とともにこの世界の「闇」に迫ります。

 目覚めると、カレンダーは「8月33日」を指していた。

 窓の外では、セミが力尽きているはずなのに、電子音のような「ミーン……ミーン……」という規則的なノイズを撒き散らして鳴いている。


「……もう、嫌。宿題、終わらせたはずなのに、起きたら白紙に戻ってるんだもの」


 私は机の上に広げた数学のプリントを恨めしそうに睨んだ。

 昨夜、佐藤君が「9月への強制プログラム」を書き込んで提出したはずなのに、日付が「33日」になった瞬間、紙面の内容がロールバック(巻き戻し)されてしまったらしい。


「結衣さん、外を見て。……事態は宿題どころじゃなくなっている」


 いつの間にか部屋のベランダに立っていた佐藤君(※不法侵入だが、モブオーラでセンサーを無効化している)が、遠くの学校を指差した。

 夜でもないのに、聖アリス学園の校舎だけが、墨を流したような真っ黒な「影」に覆われている。


「……あれは何? 火事? それとも一ノ瀬君の新しい演出?」


「いや、一ノ瀬の『わがまま』が世界の容量をオーバーさせたんだ。……本来なら9月に切り替わるはずのデータが、行き場を失って『ゴミデータ』として実体化し始めている。……そしてそのゴミの中に、作者がボツにしたはずの『別の攻略対象の残滓』が混ざっている可能性がある」


「ボツ設定!? ……それって、一ノ瀬君より厄介なの?」


「一ノ瀬はまだ、物語のルールに従って動いている。でも『ボツ』になった奴らは、ルールそのものを壊しに来る。……行くよ。あの影を叩かない限り、君の宿題は永遠に白紙のままだ」


 私たちは、歪んだ時空の中を突き進み、聖アリス学園へと向かった。

 校門をくぐると、そこはもはや私の知っている学校ではなかった。

 校庭の砂はノイズのようにザラつき、昇降口のドアは叩いても反応しない「当たり判定のないオブジェクト」に変わっている。


「佐藤君、あそこ! 渡り廊下の影に、誰かいる!」


 私が指差した先。

 漆黒の霧の中から、長身の人影がゆっくりと立ち上がった。

 その人物は、一ノ瀬のような派手なオーラは放っていない。代わりに、周囲の光をすべて吸い込むような、底知れない冷たさを纏っていた。


『……見つけた。運命の……欠片……。俺を……消した……世界を……』


 影が不気味な声を漏らし、こちらを振り返る。

 その顔はまだ「下書き」のようにぼんやりとしていたが、瞳だけが鮮血のような赤色に光っていた。


「……やっぱりだ。あれは、初期設定で没になった『裏ヒロイン・ルートの冷酷な暗殺者』のデータだ。一ノ瀬の熱量に引き寄せられて、ゴミ箱から這い上がってきたんだね」


 影が手をかざすと、校舎の壁がパラパラと文字の羅列スクリプトに分解されていく。


「佐藤君、どうにかして! あいつ、学校をまるごと消去しようとしてるわよ!」


「……厳しいね。あいつは『存在しないこと』が前提の存在だから、こちらの攻撃が通りにくい。……結衣さん、囮になって。あいつが君を『ヒロイン』として認識した瞬間、実体化の強度が上がる」


「ええっ、私、また命懸けの役回りなの!? ……わかったわよ、やってやるわ!」


 私は意を決して、影の正面へと躍り出た。

「ちょっと! そこでブツブツ言ってる真っ黒なあなた! 宿題が終わらないのはあなたのせいなの!?」


 影の赤い瞳が、私を捉えた。

 瞬間、周囲のノイズが一点に収束し、影の輪郭が急激に鮮明になっていく。


『……ハナサキ……ユイ……。お前を……壊せば……俺は……メイン……になれる……』


 影が、実体を持った一人の少年へと変貌していく。

 それは一ノ瀬とは正反対の、死を予感させるほどに美しい「毒」のような少年だった。


「——実体化したね。捕まえたよ」


 佐藤君が万年筆を抜き、地面に巨大な『削除(DELETE)』の円陣を描き始めた。

 しかし、影の少年の口角が、不気味につり上がる。


『……遅い……。俺は……もう……読み込まれた……』


 影が爆発し、私たちを飲み込むほどの闇が校庭を包み込んだ。

 この影の正体、そして彼が狙う本当の目的とは——。


 夏休み33日目。

 物語は、一ノ瀬さえも予測できない、最悪のバグへと突入した。

第15話をお読みいただきありがとうございました!


「8月32日」を過ぎた世界で、ついにボツ設定の「影」が実体化してしまいました。宿題を終わらせたいだけの結衣さんにとっては、とんだ災難です。


次回、『第16話:影の正体は、私の「元・許嫁」!? ~設定の詰め込みすぎで、サーバーが悲鳴を上げています~』。


ついに影と対面し、その衝撃のプロフィールが明かされます。

佐藤君のデバッグ能力と、ボツ設定の怨念、勝つのはどちらか。

引き続き、応援よろしくお願いいたします!

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