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聖女と僕のやりすぎお忍び冒険譚  作者: グーグー


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9.鏡よ鏡!

 ***寛太***


「ユズ!僕は帰れてもユズを置いては帰らないからね!それは絶対だよ!」

 人形のように表情の固まった柚子、その顔色だけが絶望の色に染まっていくのを見て、僕はキッパリと伝えた。

「かんちゃん……。いいの、かんちゃんだけでも帰れるなら帰っていいのよ」という柚子の声には取り繕う強さもなかった。

 あの爆弾発言子犬め!どうしてくれようか。配慮という言葉を額に焼き印してやる!!と僕は心の中で決意した。


 しばらくして、帰って来たカケル様。

「ただいま帰ったぞ~」とのんびり言っている。

 この切羽詰まった状況を全く理解していないようだ。

「それで?どうなの?」鬼の形相の柚子に、

「神が言うに、寛太も元の世界には戻せないとのことじゃった。すまぬな、ぬか喜びさせてしもうた」と謝られた。

 一気に脱力した。ぬか喜びしてないし!寿命が縮んだだけだし!

 さあ、お説教タイムに入ろうかと構えた時、カケル様が続けた。


「柚子はなんらかの手違いでよそに生まれたが、本来この世界の住人じゃ。ここに帰って来たので、元の世界との繋がりは切れておる。じゃがな、寛太はよその世界の住人じゃて、そこにつながりは持ち続けておるようじゃ。帰れるほどの太い繋がりではないようじゃがのぉ。家族の絆のある者、父と母と兄の三人と鏡でつながるパスを出しても良いと神がお許しになったぞ」

 帰れないまでも、うれしい知らせを運んできてくれたようだ。


「渉兄は?私の家族とも話せる?」

「光太ちゃんと一緒にいれば渉兄ちゃんも映るかも。やってみようよ!」

 カケル様は、自分が持ってきた知らせが、二人を喜ばせたことにホッとした顔をした。先ほどの柚子が、死刑宣告をうけた囚人のような顔だったことに流石に気づいたようだ。今回はお説教は勘弁してあげよう。


 早速、二人の居間にある大きな鏡を、異世界の光太の部屋の鏡に繋げる方法を教えてもらう。

「時差とかあるのかしら?あちらはもう何十年も経っていて誰もいないとかだったらどうする?」

「浦島太郎的な?あり得るのかも……」

 鏡をトントンとノックしながら、光太を思い浮かべる。「鏡よ鏡!とかの恥ずかしい呪文はいらないらしい。よかった。


 間抜け面で、目やにを擦っていた光太が目を剥く姿が映る。


「「光太ちゃ~~~ん!」」と二人して叫んだ。

「えぇ!?えええええっっっ!!!」という言葉と共に、驚きで後ろに吹っ飛んで見えなくなった光太を、何度も呼ぶことになった。


 その後光太は、涙と鼻水をまき散らしながらも、大声で両親を集合させ、玄関の大きな鏡を取り外し、居間に置き、そこに父親のパスで映像を繋ぐ準備をしてくれた。そして、勿論、隣から柚子の一家を呼び寄せた。

 阿鼻叫喚の様子のあちらに比べて、柚子と僕はどちらの家族とも顔が見られて、話も出来たことにホッとしていた。


 ***渉***


 家族の再会で号泣したり、むせび泣きしながら現状報告を受けた。一段落ついた時、俺は聖獣だというカケル様と個人的に話したいと冷静にリクエストして、寛太の母親のパスを洗面台の鏡に繋いでもらった。

 真実冷静な訳ではない。だが俺の大事な大事な妹が、異世界召喚されたようだと学校から報告が来たときはなんの冗談かと思ったものだ。この細い希望のような対面が今後も続けられる保証が欲しかったのだ。

 警察だって、人智を超えた現象に対応はできないと、大騒ぎの収拾の為、公の場で宣言したほどだ。

 このチャンスには何が何でもしがみつきたい。


「聖獣カケル様、この鏡に使用制限などはございますでしょうか?私たちは寛太の家族抜きで、単独で使うことなどは出来ませんか?」聞きたいことは山のようにある。

「普通に話して構わんよ。そちらの世界ではなんの力も持ちはせんのでのぉ」と笑う愛らしい子犬。とてもじゃないが、普通じゃない。だがそんな世界に妹が飛ばされたのならば、保護者が頼もしい聖獣というのは悪くないと思う。

「それでは、カケル様。妹と寛太を宜しく頼みます。寛太が冒険者になるというなら、柚子も一緒に冒険者になるわけにはいきませんか?二人を離すのは不安です。聖女の仕事は冒険者になっても出来るのでは?」

「それはそうじゃのぉ。聖職者の者に話をつけてやろうかのぉ。柚子は笑っておったほうが良い。寛太が傷ついた時は瘴気を生んだ程であったしのぉ」

「カケル様、その話、もう少し詳しくお願いします」


 そんな話をしている間、寛太の家族は寛太から、せっかくの異世界なのに自分は魔法を使えないとグチられ、柚子の家族は柚子から、擬音まみれの説明を聞かされていたようだ。二人とも、示し合わせたように寛太が傷ついたことは伏せていたらしい。

 対面が終わった後、光太と話をして、その重大な報告漏れを知って、カケル様を確保して情報源として良かったと心から思ったのだった。


 俺たち家族のコンタクト用に、寛太の父親が、自分のパスを俺に譲ってくれた。近くにある鏡をノックして応答を待てば、柚子や寛太、カケル様とも繋がれるようになった。

 

 翌日柚子は、命の危険のあるような世界からのリクエストとは思えぬ、ケチャップとマヨネーズとお好みソースの手作り簡単レシピを検索して鏡に貼っておいてくれと頼んできた。

 少々呆れもしたが、妹の我がままを再び叶えてやれることに、喜びと感謝を心の中で叫んだ。ブラコンとシスコンの名コンビ復活だと光太に笑われたが、笑わば笑え。


 そんな光太は、弟を連れ戻せないなら自分がそちらに行く方法はないのかと鏡の中に手を突っ込もうとしていた。

「もしね、万が一光太ちゃんが来られたとしたら嬉しいよ。でもそうしたら、二人してお父さんとお母さんが心配だなって話をすることになるよ。こっちは、ユズとカケル様がいる、大丈夫!」と寛太は胸をはり、光太を説得をしていた。



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