8.自立を目指す!
***寛太***
そして、ある日、僕は護衛兵のピートから非常に興味深い話を聞いた。
どうやら、この世界には冒険者ギルトがあるそうだ。最低ランクのFは、子どものお小遣い稼ぎに利用される程、間口が広い組織なのだとか。
僕は思う、このまま僕が大聖堂で過ごせば、柚子がダメになると。それなら、ここを出て、独り立ちしようと。
「僕の心配をして、ハリネズミみたいになっているユズは見ていられないよ。僕は冒険者ギルドで仕事をしながら生計を立てる道を探すよ!」
そう宣言した僕を、柚子は茫然と見あげた。
「かんちゃん!ぜったいにダメよ。私達まだ高校生だよ。一人で生きていくって、どうにかなるわけないわ!」叫ぶ柚子に、この世界では17歳といえば働いている人の方が多いということを訴えた。
中世ヨーロッパに魔法と魔物を落とし込んだような世界であるここでは、子どもたちは最寄りの教会で読み書き、計算を習ったらそこで学習は終了だ。
富裕層のみが高校のような場所に通うようだが、それも真面目に勉学に励んでいる者は魔法の研究職を目指すものばかりで、それ以外の大半は、顔つなぎやお見合いの場として、社交の一環となっているような所らしい。
「貴族でもなんでもない僕はおぼっちゃま学校に通ってもしかたないし、この世界で勉強をしても魔力のない僕に研究職は無理そうだ。ユズの伝手で高級官僚にごり押しされても浮くだけだろうし。となれば、早くから手に職を見つけるのが建設的だと思わない?」
「思わない!かんちゃんは、私と一緒にいればいいの!」とかたくなな柚子の肩をポンポンと叩く。
「ユズ。ユズは、聖女の仕事、世界中の祠に力を注ぐだっけ?それを終えたら、無職でしょう?その時は僕が養ってあげるよ。その為にも、ここで自分に何が出来るか、探し始めないと」
譲らない僕に、柚子は苛立つ。でも正論であるようにも聞こえて来たのか、それ以上の反論はしなかった。
しばらく、うなだれた後、柚子は、
「かんちゃんが、無事ならそれでいい。私と一緒にいても傷ついているし……。でも、離れていて傷ついてたら……?どうしたらいいの?渉兄に会いたいギュってされたい!光太ちゃんにもよしよしされたい!」
ブラコンを炸裂させてわめき始めた柚子に、クールダウンの時間を与える。
無理なことと分かっていても我儘が言いたい、それ程のことだったんだろう。
それ見てカケルは、
「寛太だけなら、元の世界に帰れるやもしぬぞ」と言い出した。
その場が凍り付く。
僕は今の今、この世界に骨をうずめるつもりでこの先の未来を生き抜く選択をしようと、一歩踏み出す覚悟を決めたところだったのだ。
柚子は、二人で異世界に来たという安心感でバランスを取っているだけで、巻き添えにした寛太に申し訳ないという思いと、守りたいのに守れなかったという居たたまれなさは相当なものだ。
その二人を一気に凍らせる発言だった。
「神に聞いてきてやろうかのぉ」といって、カケル様が消えた。変身するときのように姿がにじんで、そのまま見えなくなったのだ。




