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聖女と僕のやりすぎお忍び冒険譚  作者: グーグー


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7.守護の同盟

 ***柚子***


 犯人のロト一族には肩身が狭いという次元ではなく、消え去りたい気持ちが見てとれた。パッスル、ディックの過激派一派も、これからは聖獣様に拒否された一派という汚名が付きまとうのかと思うと、聖典とはなんだったんだ、聖典だけが正しいと信じて来たのにと、なかば魂が飛んだような状態でブツブツと自問していた。


 こっそり大聖堂に戻って観察していた私は、その様子を陰から眺めニンマリとした。かんちゃんに見られたら、「魔王もかくやの笑みだ」と突っ込まれることは必須だろう。

 そのままの笑顔をキープして、扉から顔をのぞかせて告げる。

「あ、言い忘れてたの言っておくね。聖典は神の言葉をカケル様が聞いて、人に伝えたものが元になっているんだって。でも、ちょっといたずらでふざけた内容も混ぜたって。ごめんって言ってた。それだけ。じゃね~」


「ど、ど、ど、どの部分だ!!」と叫ぶ声が後ろに聞こえたが、無視して、いい気分のまま足取り軽く去った。

『かんちゃんを傷つけたことは絶対に許さないんだから』

 軽快な足取りとは違って心の中は、『過剰防衛といわれようとも構わない、絶対にかんちゃんは私が守る!』という決意に満ちていた。


 食堂では、カケル様があれもこれもとリクエストしてかんちゃんに食べ物を口に運ばせている。

 本来は食事を口にしなくても生きていける聖獣なので、皿に顔を突っ込んで食べる、所謂犬食いなどはしないらしい。上品に一口大にされた食べ物を楽しんでいる。

「ふむふむ、味は、昔と大して変わっておらぬのぉ。じゃが、綺麗にカットされた果物はうつくしゅうて良いものじゃ」とご機嫌だ。

「昔から、塩焼きだけって感じ?うまみ成分の研究とかしないもんなの?」とカケル様の感想を聞いて思わず口をだした。

「ユズ、出されたものに文句を言っちゃだめだよ」とたしなめられたが、

「もう十分我慢したわ。そろそろ改善案を出さないと、一生美味しいものが食べられないわよ」と抵抗した。


 そして、かんちゃんが自分の皿のパンを食べたその時、ううぅっ、と苦しみだした。カケル様から手を放し、口とのどを抑えて、ひぃ!と声を出し椅子から、床に転げ落ちた。

「かんちゃん!」血の気が引く。だが頭を振り払って、すぐに気持ちを立て直す。浄化魔法をかけた。

 十中八九毒だ。浄化魔法のあとは治癒魔法。どの魔法よりも一番力を入れて練習した魔法だ。

「これで治って!」祈りを叫びながら、魔法を発動させる。

「柚子、大丈夫じゃ。寛太には守護の魔法がかかっておる。勝手に自己修復するじゃろうて」といって、手の甲の紋章を指した。同盟の守護の魔法が発動した証として可視化されているのだ。

「苦しむんじゃ、だめよ!苦しまない傷つない魔法が必要よ!」と反射で叫んだ自分の声が脳内で反響した。


 かんちゃんが落ち着いたのを見て、ふと我にかえると、頬に涙がつたっていた。

「守るってさっきも誓ったばっかりなのに……」

 追い詰められていた。守れない自分に。巨大な魔力が使いこなせていない自分に。

 (おのの)いていた。倒れ伏すかんちゃんを見る自分が受けるダメージの大きさに。


 ***ナルド***


 全ての食事を下げさせて、どの経緯で毒が混入されたのか調べるように指示を出した。

 聖獣様が現れて、聖典過激派を敵と認定するなど犯人も思ってはいないだろう。それが分かっていれば、このような愚かな企みは決行されなかったはずだ。それより前に毒が仕込まれていたであろう不運に、脱力するしかなかった。


 結局のところ、数日後に、ロトの一族で厨房を任されていたものが犯行を行ったと自首をしてきた。

 もはや覆せぬほどの失態に、長く勤めて来たロト一族の枢機卿の席は、空席となった。たとえどんなに人格者だと推薦があったとて、ロト一族から次代を立てる事を誰も良しとしなかったのだ。

 同派閥のパッスルとディックでさえも、「その過激すぎるやり方にもう振り回されないで済む」と、安堵の気持ちを告白してきた。

 そもそも、聖典主義自体がそれを口伝した聖獣様本人から、結構適当で、いろいろいたずらしたと言われては正当性もくそもない。


 パッスルは、「時間があるときに、ぜひ聖典について話を聞きたい」とひれ伏して頼んでいた。

 聖獣様は、「気が向いたらな」と適当にあしらわれていた。


 聖女様は過敏になり過ぎていて、目を覚ました後の寛太様も含め、皆を疲れさせていた。周囲の安全確保から、食事の浄化に加え、窓からの外気にもピリピリしている状況が続いている。

「ユズ、もう大丈夫だよ。一番の過激派も失脚しただろう。残りの人達は聖典本来の姿を追求するって張り切ってカケル様を追いかけ回しているし。ね?力を抜いて。いつものユズに戻って!」とニッコリ笑う寛太様。

 それを見て、聖女様は目を潤ませながら、

「もう、かんちゃん、ぜったいに傷つかないで!」と無茶をおっしゃった。


 我らの不始末が続いている。これ以上は、あってはならぬ。と気を引き締めながらも、

『寛太様がいらっしゃるからこそ、その安全を不安に思い、このように荒ぶられるのか。寛太様がいらっしゃらなかったら……。もっと手が付けられず、そもそも聖女として立つことを受け入れてくださらなかったかもしれぬ』など取り留めもなく考えてしまうのだった。



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