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聖女と僕のやりすぎお忍び冒険譚  作者: グーグー


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57/57

57.滑り台

***寛太***


ボス部屋から続く11階層に下りる階段を下っていく。


階段の踊り場に矢印が現れた。

『こちらもご利用いただけます』と小さく案内の説明も添えられている。何だこれ??

「リーダー!矢印が浮き出て来たよ!ほらこれっ」

「私の腕輪が反応していますね。間違いなく21階層に続く滑り台への部屋ができていますよ。使いますか?このまま無視して進めば11階層に行けますが」


キラキラした顔でピートを見ている兄ちゃんズをがっかりさせるのは忍びなくて、僕は賛成も反対もしなかった。

当の本人のピートは絶叫系苦手仲間だからか、笑顔が若干引きつっている。でも、きっと人がいいから、反対できずに滑り台の部屋へ行くと決めるんだろうなあ、と見ていた。

「じゃあ、使いましょうか」

案の定だ。


「早速行きます。時間が経つと消えてしまうので、説明は後にしてまずは降りましょう。降りた瞬間から警戒をしてください」

ピートはキリリとした凛々しい顔でそう言った。明らかに今までとは顔つきが違う。これは滑り台の恐怖じゃなくて、恐らく21階層の鬼畜仕様のせいだろうと僕の野生の勘が告げている。

「なに、21階層、そんなに危険なの?ボス部屋直行?」

渉も気になったようだ。

「普通に21階層が始まる階段前に行くだけですよ。ですが、下手をしたら、そこに魔物がうじゃうじゃいる訳です。階段で降りるなら様子を見て、武器を構えて、と、やりようがあるわけですが、滑り台は強制的に不安定な格好で滑り込まされるというか、放り出されるというか、まあ、そんな感じです。皆さんは強固な結界がありますから、怖かったら目を閉じておいてください。衝撃は、我慢してください」

なんとも大雑把なショートカット機能だ。


僕は、何かあったら目を閉じて小さくなっておくか、サイズ可変の魔法をぶっ放そうと心の中で準備をした。

矢印の案内の通りに進んで部屋を開けた瞬間、床が抜けたような浮遊感で滑り降りていく。

こ、こ、これは!滑ってない!ほぼ落ちてる!!

そう思ったが、もちろん、思うだけでなすすべはない。

腕の中のリオは大喜びではしゃいでいる。

リオは飛べる生き物だけに、自分で降下するのではなく、自然落下で落ちて行く楽しみに夢中のようだ。


ある程度落ちたら、緩やかになり螺旋状になり、アトラクションっぽくなって、最後はピートが言った通り、放り出される勢いで21階層に転がり出た。


幸運にも、魔物はいなかった、が、他のパーティーがいた。


不幸にも、最初の方で出会った御貴族様のパーティーだ。確か威張っていたのが、公爵の三男だかなんだかって言ってたはずだ。


ピートは難しい顔をして、話しかけた。

「君たちは、銀の腕輪が一人で後は銅の腕輪ですか?なぜこの階層に来られたのですか?」

上層階で見た時は、庶民とは直接話をしないってくらい馬鹿にした態度を取っていた三男だが、流石に金の腕輪をしているピートには対応するようだ。

「こいつの最高到達地点がここだからだ。悪いか!?」

あきらかに力不足の、僕と同じ年くらいにの風貌の気弱そうな子が指さされて縮こまった。

「あ、あ、あの、私は、親に、……、僕らだけでダンジョンに行く前に護衛と事前訓練に行くように言われて……」

「その時の護衛が、強くって21階層まで来れちゃったから、あなたの最高到達地点がここになっちゃって、ダンジョンの気まぐれ滑り台でここに来ちゃったのね?」

柚子があきれた顔をしながら推理した。

「その、その通りです……」

ピートは頭を抱えている。

「なぜそんな無謀な事を。生きているのが不思議なくらいですよ。滑り台の話は聞いていなかったのですか?」

「聞いていました。でも、隠し部屋に入って、どんなものか見るだけ見てみようって言われて……でも開けた瞬間に滑り台が……」

「俺が悪いって言いたいのか?」

三男が気弱な子を威圧している。

そんな中、光太は可愛げのない子どもには容赦がないので、

「このガキたちをお守りしてたらダンジョン楽しめなくない?」と渉に話しかけている。

「この俺様にガキと言ったのか?そこのド庶民が!?」

「そう、ここのド庶民は、貴族のクソガキが死んでも構わないんです。それじゃあ、健闘を祈る!みんな、放っておいて進もう。貴族の威光で魔物も逃げてくれるんじゃね!」


いやいや、死なれちゃうと後味悪いよ。柚子は横で、

「王族より偉そうよね、この子たち」と小声で言っている。

王族は聖女様って知ってたら丁寧だっただけなんじゃ……。


「お前らだって、お子様連れでダンジョンなんてふざけたことして、死ぬならそっちっだろ」

三男は噛みつく元気が残っているようだ。残りのパーティーメンバー6人は正気を保っているだけで精一杯のあり様なのに。



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