51.お礼の品
***寛太***
ピートに、さりげなくどころか、ド直球に、
「お世話になったリーダーにお礼がしたいんだ。これまでの感謝と、この旅のお礼と、これから先の迷惑料も含めて奮発するよ。って言っても、今から買いに行くから、この町で売っているものに限定されちゃうけど。あ、でも王都までキャビンで行ってもいいかも。何を買っていいか分からないし、この世界ではお礼に相応しい物とか相応しくないものとか分からないから、欲しい物教えて!サプライズできなくてごめんね。で?何がいい?」
光太が言っていたセリフをかなりパクって、僕のキャラじゃない押せ押せのお願い事なので心を無にして一気に伝えた。
ピートは、あ~とか、う~とか、困り顔でうなりながら、
「欲しい物……。本当に特にないんですよ。困ったなぁ。お気持ちだけってことにはできませんか?」
「お母さんがそれじゃ納得しないと思うからひねり出して!」
「百合子さんの指示ですか。手ごわいですね」
「そうそう、下手に安い物とか言うと、やり直しって追い返されちゃうと思うから。それなりの物考えて!」
本当に申し訳ない。無茶を言っていると思う。お礼なのに相手を困らせてどうするんだって話。
「冒険者なのじゃから、武器がよいじゃろう。良い物をやろう」
そう言ってカケル様は空間から剣を出した。
んんんっ?!?
なんか見覚えがある……。
『破邪の剣』だ。カケル様が大昔の王子に与えた聖剣。
その後、彼の墓に埋葬されたまま記録が紛失して、王様が行方不明なので返せませんって土下座した、あの曰く付きの剣だ。
よく切れるんだろうなって思ったら、鞘に収まっていても怖く感じる。刃物恐怖症酷くなっているかも。やばいなぁ。
いや、今はそれよりも、ピートだ。
目が合う。
「もう、どこから突っ込んでいいか分かりません」
はあぁあぁと、ピートは盛大にため息をついて続けた。
「カケル様、国宝級の剣をちょっとしたお礼代わりに渡してはいけません。それに、百合子さん達がお礼を、といっているのですから、カケル様が出してしまっては、結局また何か品物を決めなおさなければいけなくなるだけです」
「そうかのぉ。百合子に言っておいてやるぞ。剣が要るというから渡しておいたと。他の物は要らぬと言っておったとな」
「聖剣をねだったことにするの止めてあげて。カケル様が勝手に渡そうとしているだけだから」
僕はあまりにピートが不憫で情報を修正した。
ピートは仕方ないとでも言うように、今度は小さなため息をついて、
「それでは、百合子さんには、普段着をお願いしてください。お礼の品としてはこの世界では一般的ではありませんが、服が好きな百合子さんなら楽しく買い物してくださるでしょう」
「リーダー。ごめんね、気を遣わせちゃったね。でもありがとう!」
良かった。一件落着だ!
僕はカケル様とピートを残して、家族と買い物へ出かけて行った。
***ピート***
とりあえず、一件落着だ。後は、どんな恐ろしい服が渡されても笑顔でお礼を言うだけだ。寛太様の手前、何度か着たっていい。
私は、腹をくくった。
そんな必要があるかって?あると思う。寛太様は文句をいいながらも着ているが、女性陣が買い物から帰ってくる度に、『青年』に買ってくる品物とは思えないものが広げられているからだ。
寛太様は、似合ってしまうから……。仕方ない。かもしれない。
だが、私は絶対に、全く、これっぽっちも似合わないだろうから、あの系統の服を渡されたら……。笑顔を張り付ける練習をしなければ。
「リーダー。手を出すがよい」
カケル様に言われるがままに右出をだすと、
「逆じゃ。利き手じゃないほうじゃ」
左手を出す。
【ピカッ!】と手のひらが光って、そのまま、破邪の剣が吸い込まれていった。鞘ごとだ。
「ぎゃぁあぁ~」と言いたいのに声は出ず、口だけ、ぎゃあぁ~の形で開いたまま閉じられなかった。
「これで良い。ワシがおぬしに渡したいと思ったのじゃ、受け取るべきじゃ。念じればいつでも手のひらから出てくるようにした。これは、ワシと柚子で考えた魔法でのぉ。刃物は寛太が怖がるから見えないところに収納したいが、すぐに出せなければ困るというので、こうなった。おぬしの普段使っておる刀も収納してやろうか?」
「…………」
「リーダー!おい、聞いておるのか!?」
「あ、いや、この刀はならず者達への威嚇にもなりますから。丸腰の冒険者なんていませんし」
「そういうものか。それでは、出し入れの練習をするかのぉ。鞘なしで出し入れするときは少々怖いと、あの柚子ですら練習しておったからのぅ」
どうやら、ちょっと呆けている間に、この貴重な一振りは私に預けられることに決定したようだ。胃が痛い。お礼の品は胃薬にするべきだったか……。




