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聖女と僕のやりすぎお忍び冒険譚  作者: グーグー


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5.下僕か友達か聖獣か

 ***寛太****


「魔物?まだ残ってたの?大きいよ!」

「大丈夫よ。瘴気を発していないわ。魔物じゃない。でも、鼻の周りに瘴気の残り物みたいなのが、纏わりついているわね」と言って柚子は浄化魔法を飛ばした。

【ドスンッ】と降りて来た純白のネコ科っぽい生き物は、間近で見ると更に大きく、体長5メートルはありそうだった。背中に天使のような白い翼もあるし余計に大きく感じるのかもしれない。ファンタジー要素が強めのビジュアルだが、ガブリとやられたら、一瞬だろうと確信させる牙が凶悪でかなり怖い。


「おお!これは美しい浄化よのぉ。感謝じゃ。ちょっと居眠りしている間に、大聖堂に瘴気がわくなど、驚いてしもうたぞ」と見た目と違い、ゆっくりとした、独特な口調で、その生き物はしゃべりだした。

「ユズ、動物がしゃべってるよ。流石異世界だね」と言った僕の言葉に、

「動物とは心外じゃの。ワシは聖獣。神から頂いた名は名乗れぬし、今は名付けを許す人間を定めてもおらんでの。名前はないようなものじゃが、おぬしらよりは余程長く生きておるものじゃ。動物扱いはよろしくないのぉ」とのんびりしゃべっている。

「聖獣ってなんなの?私、聖女なの。関係あるかしら?」

「関係なくもない。聖女が困った時に助けるのが役目といえば役目かのぉ。じゃが、そんなに困るようなことも起きんでのぉ。昼寝が専門になりつつあるで。神は退屈なら好きに生きても良いとおっしゃってくださるがのぉ」

「えぇ?聖女を助けるのが役目なのに、どこかに行っちゃうの?ユズ、やばくない?」と驚いていると、

「かんちゃん。それよりも神と話せるほうが驚きでしょう!っていうか、神って実在するんだ!」と柚子も驚いていた。

「神の存在を信じておらぬ聖女か。昼寝している間に世の中は変わってしもうたかのぉ」訝しむ聖獣に、

「私は、異世界人だから、ここの人とはちょっと感覚が違うかも。ごめんなさいね。神を悪く言っているわけじゃないのよ」と柚子が素直に謝って事情を説明した。


「ほうほう、なるほどのう。それで呪ったら瘴気が噴き出たと。今代の聖女は途轍もないのぉ。それでそちの足は大丈夫じゃったのか?ほう、これはまた、綺麗にくっつくもんじゃて」と感心している。

「昔の聖女とそんなに違うんですか?」

「そうよのぉ。世界各地に小さな祠が建っておって、それに魔法を注ぐのが聖女の仕事なんじゃが、その魔法が無属性魔法に限られておるだけで、魔力量は少なくて構わんのでのぉ。皆、大した魔力は持っておらなんだし、大昔はワシが守護して各地を回ったものじゃが、今は立派な教会があるで、そこの者が守護者じゃったか、護衛じゃったか、言うて聖女にくっついておる。ワシは用無しかと、もっぱら昼寝をしておるのよ」

 そう言って、豪快に笑った聖獣だが、僕は寂しそうに思えて思わず勧誘した。

「僕なんて、構われまくって育ってきたから、一人になりたかったけど、実際一人になると寂しいよね、きっと。一緒に来る?って言っても大きすぎるかな?厩舎に入れるのかな?」と、当の本人に了解も取らず、途中からは柚子に話しかけていた。


「そうねぇ。あなた、聖典に載ってる?」

「聖典?ああ、ワシの言葉をまとめたやつであろう。勿論載っておるはずじゃ、知らぬ間に改ざんされてなければのぉ」

「聖典って聖獣の言葉なの!?」

「正確に言えば、神と話せるのは聖獣のみじゃから、伝達役を買って出たという訳じゃ。ちょっとお茶目心をだして、まぜっかえしたり、いたずらもしたがのぉ。若気の至りかのぉ。フォッフォッフォ」

「……。」聖典絶対主義の者が聞いたら卒倒しそうな情報だったが、柚子はあえてそこはスルーと決めたようだ。

「なるほど、無属性魔法は聖女だけの魔法なのね?」

「そのとおりじゃ」

 それぞれの得意な魔法を教えてもらって、魔法を学習していると、普通の人は本当にそれ以外の魔法を使うのが困難なんだと目の当たりにしていた柚子は、どんな魔法でも覚えられると言われた自分の得意が、無属性魔法なんだと解釈して、ひとりで納得していた。

 そして、『聖獣とはなんて役に立つ生き物か』と、口角が上がるのを抑えきれない様子だった。


 幼馴染の動向にいち早く気づける特技を持つ僕は、一歩後ずさった。長年の被害が無意識にそうさせたのだ。

「ねえ。聖獣って、暇しているんでしょう?かんちゃんの世話係とかやってみない?有能で、信頼できる人が必要なのよ。寝室に入ってきて誘拐されるんじゃ、どうしたって、私ひとりじゃ無理がくるわ」

「ユズ、聖獣って聖女の為にいるんだよ。ユズを守ってもらいなよ!」

「私なら大丈夫よ。魔法初心者だけど、魔力量が凄いもの。どんな魔法でもごり押しすれば威力は凄いわ!それにね、かんちゃんが傷つけられる方が痛いって、分かっちゃったんだもん。あんな思いは二度と御免よ。だから、ね、かんちゃん、お願い!」


 ***聖獣***


「いやいや、おぬしら、頼むならワシにであろう」と、我ながら素晴らしいタイミングで突っ込んでみた。二人して顔をこちらへ向けてくる。

 畏怖も遠慮も尊敬も敬愛も無い視線。ただ同じ生き物としての温かい連帯感のようなものを感じさせてくれる新鮮な視線だ。


「そうね。ごめんなさい。聖獣様。かんちゃんをお願いできないでしょうか?」と頭を下げた柚子。

『先ほど事情と被害を聞いたばかりで、断るのは大人気ないか』とか、『暇だからいいか』とか、『こいつら面白そうだから付き合うか』とか、さまざまな思考が頭を巡った。


 寛太を見た。どこかアンバランスな少年だった。凛とした瞳をしながらも、いつでも逃げだす準備が整っているような立ち姿。可愛い顔で、優しい心根、でも話す言葉は意外に図太い。興味深い。

 柚子を見た。傲慢なほどの物言いも全て我が事でなく、寛太の為だという潔さ。まだ弱い自分を自覚していながら、全てを犠牲にしても守ると決めて、力を求める不安定な聖女。新鮮だ。


「よかろう」

「決まりね!かんちゃん、下僕ゲットよ!」

「「!!??」」驚きに固まると、寛太と目が合った。

「あ、いや、まずはお友達から、」と挙動不審になりながらいわれた。告白された少年のような事を言い出す寛太に、久方ぶりに笑った。腹の底から。

「はっはっはっ!はははっはは!ワシを下僕とは恐れ入った。お友達っていうのもじゃ。ここは三人でお互いを守護し合う同盟の契りを結ぶのはどうかのぉ」

「そんなことも出来るの?ならそれで。兄弟の盃ってやつね。任侠の世界!」

「ユズ、渋い趣味が出ちゃっている。サブスクで過去作見すぎだから」

「なによ。かんちゃんの火サスにも付き合ってあげてるでしょう!いつもいつも崖に行くやつ」

「あれは!形式美なんだよ!」

 意味は分からないまでも、楽し気な会話に、口もとが緩む。

「これは、退屈とはおさらばのようじゃのぉ」と思わず声が出た。


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