48.火山にて
***寛太***
火山の上空は、普通だった。火口の中で溶岩がグツグツいっている訳でも、地熱で温かい訳でもない。
「富士山的な感じ?マグマが出てる訳じゃないんだね」
残念そうに光太が言う。
「噴き出てたら危なくない?普通が一番だよ」
「普通のぅ。これは普通では無いのぅ」
「これが普通じゃないってことは、普通は火を噴いているってことですか?」
お父さんも火口に目を凝らしながら尋ねている。
カケル様の説明によると、噴火はしたりしなかったりだが、このようにマグマもなく温度も感じないような状態は異常なようだ。
「あやつは、いったいどこへ行ったか?」
カケル様は低い声でそう言った。子犬姿でも威厳を感じるほど怒っているようだ。
みんなも茶化してはいけない雰囲気を感じ取ったのか、無言で外を見た。
そして、そんな空気に敏感に反応したのがリオだった。
「にいたま!わっち、さがす!」
美しい兄弟愛。なんて思ってはいけない。この過激な、見た目だけは天使のお子様がヤル気を出すと碌な事にならない。
「かんた。ズトーンって、いく?なかにいる、さがす?」
僕の腕を引っ張ってキャビンの外へ出ようとしながらリオはそう言った。
「リオ、僕の事ハンマー扱いしちゃ駄目って言ったよね。ファイアードラゴンが火山の中にいるかどうかを確認する方法は別に考えようね」
「かんたダメ?じゃあ、わっち、いく!」
そう言ったかと思うと、飛び出して行って、そのまま何の予備動作も無しに火口へ突っ込んだ。
【ゴガガガガガッ、ガガガッ】大地を削る大音響と振動。
そして、火山が噴火した。
「「「ぎゃーーーーー!!!」」」真っ赤な溶岩の直撃でキャビンが結界ごと揺れる。透明の結界なので、視界は赤と黄色一色だ。
僕はと言えば光太に抱え込まれながらも、結界マジで丈夫だなぁ。お父さんや博さん大人だけど、ギャーって叫ぶんだなぁ。と、わりかし冷静に考えていた。修羅場も数踏めばある程度は慣れるのかも。
「あ~怖かった!死んだと思った!」
渉は叫ばなかっただけで怖かったようだ。
光太は僕にどこにも怪我をしていないか聞いてくる。
今のどこに、怪我する要素があったかと首を傾げた。強いて言うなら光太に抱えられた時に首がグギッてなったけど。それは言わずにおいた。
光太が落ち込むし、柚子に知られたら、僕の結界がとんでもないレベルに引き上げられそうだからだ。
「リオの突撃で火山は元通りじゃのぉ」
どうやら、この噴火警報が鳴り響きそうな状況が、カケル様にとってはノーマルの認識のようだ。
「この火山を起点にマグマと連動して魔力をいきわたらせておったはずじゃて、それが滞るとは。あやつ、それにも気付かぬほど遊び惚けておるか。ならば存在の消滅も覚悟するがよかろう」
まだ見ぬファイアードラゴンさん。会ったとたんにスプラッタなお仕置きは見たくないので、早く帰ってきてください!
「にいたま~!わっち、さがした!いないだった!」
リオはマグマの中を奥まで探して帰ってきたようだ。
リオが今日着ていた服は、魔法で出した服ではなく、桃子さんとお母さんが町で見つけて気に入ったからといって買ってきた普通の洋服だったので、燃えたか溶けたかで跡形もない。すっぽんぽんで胸をはって報告するリオは可愛い。
あれだけの事をして傷一つついていないのは、生物としては、脅威だが……。
お父さんは、いそいそと替えの服を出してきて着せている。
可愛いの基準が似ている僕とお父さん。血が繋がっていなくても家族って感じがしてうれしかったりする。
それはさておき、ファイアードラゴン探しかなぁ。
「みんなで探す?」
「よい。気にせずとも、あれの方から詫びにくるじゃろうて」
どうやら、聖獣の怒りの思念派を方々へ飛ばしたらしい。
キャビンの中の一同は、凄く楽しみにしていたドラゴンとの遭遇が、気まずいものになりそうだと察知した。
「まあ、俺らがどうこう出来る問題じゃないよな。楽しもう!せっかくの旅行だぜ!」
渉はポジティブシンキングに切り替えて、キャビンを発進させた。




