46.お土産代わり
***寛太***
ひとまず終結したと言っていいのか。
今回のププカ司祭事件?は逮捕というかすでに投獄されて、更なる罰を言い渡されるのを待っているような状況で僕らの手を離れることになった。
「またしても聖女様をお守りするべき教会が、大変な騒ぎを起こしてしまいました。わたくしは腹を掻っ捌いてお詫びとさせていただく所存でございます」
そう言って土下座したナルドに、
「切腹の文化あるの!?」「土下座ってあるんだ!?」僕の突っ込みは光太とリンクした。
「あ~ごめん。俺だわ。ナルドさんに最上級の詫びは何かって聞かれたから、切腹を教えたんだよ。本当ごめん」
「渉兄、いらない事教えないでよ!」
「そうだよ。組織のトップとして管理者責任はあるだろうが、それは切腹じゃなくて、組織改革の推進とかで償ってもらおうよ」
お父さんの穏やかな提案にホッとした。過激派じゃなくてよかった。博さんも同意見のようで、
「柚子が気持ちよく住める場所を提供しようとしてくれる人の腹切りを見ている場合じゃないよな」
そう言って、ナルドに手を貸して立ち上がらせてくれた。
そのままソファに座らせて、枢機卿のメンバーを手招きしている。
「お前たちは外で遊んできなさい。大人の話し合いをするからな」
博さんはそう言って、俺たちをシッシと追い払うしぐさをした。
僕と柚子は顔を見合わせて、光太と渉を連れてキャビンを出た。
ピートも続いて出てきて、兄ちゃんズに向かって言った。
「なんだか意外ですね。大人の話し合いだっていわれて、お二人がすぐに退出してくるなんて」
「そう?この世界じゃ、おかしいか?」
「19歳は、この世界では成人?」
「といいますか、子ども扱いされて追い払わるなんて、本当に小さな子どもくらいしかいないと思っていましたので、柚子様たちでも意外に感じるのに、ましてや渉さんたちも出て来たので、驚いたんです」
「そっか~。そうだよねぇ。僕らはキャビンに戻る?」
「いまさらだから、いいや。どうせ、柚子と寛太の為に命を捨てる覚悟があるなら、盾になって死ね!それまでは生きていろ!くらい言っているんだよ」
「あ~、博さんなら言いそうだな~」
「だろ?」
二人で盛り上がりだした。ピートは横でクスクス笑っている。
「ねえ、かんちゃん、遊びに行ってこいって言われたんだもの、兄ちゃんズをどこかに連れて行きましょう!」
「でも大聖堂の周辺ってあんまり知らないよ。冒険者ギルドにでも連れて行く?ドガルさん元気にしているかな?」
「あの人は心配してくれているでしょうね。柚子様の悪い噂が王都を席巻しているそうですから。今日を境にププカ司祭投獄の話で上書きされるでしょうから、安心してもらえるでしょうけど。元気な顔を見せておきますか?」
「いいわね!」「リーダーに賛成!」
「リアルギルド!!!」鼻血を出さんばかりの勢いの渉をなだめてカウンターにギルマスの所在を聞きにいく。
「あら?虹の架け橋の皆さんおかえりなさい。メンバー追加ですか?」
「お久しぶりです。ギルマスに挨拶に寄っただけです。いらっしゃいますか?」
Aランク冒険者のピートはいつもカウンターのお姉さまがたに丁寧に接してもらえる。ギルマスに挨拶に行くのも不思議がられない大物だ。
ギルマスの都合を確認してもらっている間に、依頼ボードを見に行く。渉のテンションが心配になる領域まで振り切れそうだ。
「格好いいね~!まじの討伐依頼だ。光太見てみろ!Bランク以上のパーティー限定依頼だ。危険なんだな~、変異体ワームの巣の討伐だって。柚子!これに行くぞ。父さんたち、早く日本に帰らないかな~!」
どうやら、親を帰らせて夏休みぎりぎりまでここに居残るのは討伐クエスト目的だったようだ。
「渉兄も討伐する気なの?その冒険者腕輪なんちゃってなの。私の手作り。冒険者登録して本物も貰っとく?」
「いる!貰えるなら絶対欲しい!」
そして、ギルドマスターの部屋で、僕たちのお願いを聞いたギルマスは頭を抱えた。
極悪の噂が流れている当の本人が、暢気に、初心者冒険者らしき人をつれて冒険者登録の手伝いをしているんだ。そりゃ、そうなるだろう。
「聖女様謹製の最強の防御のかかった腕輪があるのに、お兄様方は、うちの腕輪が欲しいって?訳分かんねえんだけど」
「まあまあ、ドガルさん。聖女様の防御は冒険者腕輪に後付けもできますから」
「ますます分からん。高度な転送技術と共鳴している腕輪がそうそう改変できるとは思えんがな。まあ、考えても無駄だ無駄だ。登録して腕輪をやるから好きにしてくれ。ただ、依頼を受けるという形にするなら、最低ランクのFからだ。たいした事はできねえぞ」
「はい、分かっています。いただけるだけで十分です。ありがとうございます」
こうして、異世界土産代わりに本物の冒険者腕輪をゲットした二人は小躍りして喜んだ。そして、
「あ~、この世界に来るのにノーリスクだったら休みの度に来てランク上げするのにな~!」と、悔しがるのだった。
ランク上げかぁ。今僕はE。兄ちゃんズをうらやましがらせる為だけにでも、もう少しレベル上げをしようかな。




