41.透明化魔法
***柚子***
「でも意外だな、柚子ならもっとサクッと、天誅だ!って感じでバッサリ断罪イベントやってるっぽいのに」
失礼にも我が兄、渉は、私を必殺仕置き人くらいのポジションと考えているようだ。
カケル様たちと透明化の魔法構築を実験しながら、そんな話になった。
「天誅とな、似合うのぉ」
「ああ、それ分かるかも。柚子はやるって決めたら容赦なさそうだからさぁ。まったり噂を流して、相手がボロを出して自滅するのを待つなんて似合わない感じする」
カケル様も光太ちゃんも大概失礼だった。
「何だって出来る魔法が使えるからこそ、かんちゃんがダメージ受けるような方法は取りなくないの!」
「寛太一筋って隠さなくてよくなったの?乙女全開でいく感じ?」
デリカシーのかけらもない渉に、風魔法をぶち込んで、
「かんちゃんに何か言ったら殺す!」と宣言しておいた。
「実際問題、渉兄たちはカケル様から聞き出した、あの酷い事件ね、親たちには言っていないの。かんちゃんもそれで良いって。でもね、刃物恐怖症は良くなる兆しがないし、人の悪意みたいなものにひどく敏感なのよ。私はオーラが見えるんだけど、かんちゃんは見えていないはずなのに、汚いオーラの奴がいると、体が無意識に強張っているの。そんな場所からはとっとと退散したかったし、関わり合いにもなりたくなかったのよ」
「柚子は優しいね。関わり合いたくないじゃなくて、寛太を関わらせたくないってことなんでしょう?」
光太ちゃんは優しく頭をなでながらそう言ってくれた。
「柚子は一人で頑張り過ぎじゃて。もう少し寛太に弱音を見せてもよかろうよ」
優しくされるの本当に弱い。泣いちゃうからほっておいてほしい。
ぐっと歯を食いしばると、渉兄も寄ってきて肩を抱いてくれた。シスコンの看板をぶら下げながらも、いつもひょうひょうとして、つかみどころのない兄だが、モテる。こういうところが、女の子の心をつかむのだろう。
余談だが、光太ちゃんは……モテない。寛太ラブを前面に出し過ぎるのが敗因だろう。大きなお世話だろうが……。
少し気持ちを落ち着けて話し出した。
「でもね。まどろっこしいとは思っていたのよ。それに遠距離通信で遠くの町にまで悪評を広めるのは流石にいただけないわ。これから、私たちが世界中を旅して回るって分かっていての嫌がらせでしょう。度が過ぎているわ」
「常識のない、甘やかされた二世の宗教家って感じの人?」
「ううん。札束で人をビンタしながらのし上がってきたタイプ」
「うわ~。きっつ~。それって本当に聖職者なの?」
皆で思わずカケル様を見た。
「ワシが聖職者を決める訳ではないでのぉ。中には変なのもおろうよ。寛太の足を切り落とす阿呆もおるで、驚きもせぬわ」
それを例えに出されたら、もう何でもありだろう。聖職者って魔窟なの!?っていうか、『切り落とす』ワード!避けて!!ダイレクト過ぎで聞きたくないから!
「せっかくの旅行だし、邪魔されたくないから、明日ププカに乗り込んで司祭のおばさんを拉致して、王都の尋問の会場にこっそり連れて行くわ。推薦人が保身に走る姿を見せればサクッとボロを出すでしょう。裁かれる方も裁く方も揃っている場だもの、一気に方がつくでしょう?」
私は、パチンっと手を叩いて、
「そういう事だから、明日の朝までに透明化頑張りましょう!」とはっぱをかけた。
***寛太***
翌朝、突然、ププカを回って、司祭を回収してから王都に向かうと聞かされた。
魔法開発組はあまり寝ていないようで、徹夜明けのハイテンションが怖い。
透明化魔法は、カケル様もテンションが上がるほどの未知なる魔法になっているという。音、気配、色の認識を無効化する魔法を自身に掛けるものなのだとか。
やって見せてくれる。
「存在自体はあるから、触れば分かるわ。どう?」
急に手を握られてビクッとする。
「こわっ!怖すぎ。お化け屋敷じゃないんだから。やめてよ!」
「そう言うと思った!だから、実際はキャビンに乗って、キャビンに魔法をかけるつもりよ」
「そうしないと、お互いに話も出来ない事に気づいたからね」
「そうそう、途中で気づいて呆然としたんだよね~」
「キャビンが見えなくなって、キャビンの中の音も外には漏れないってこと?」
「そうよ!最高でしょう?」
我が家のように寛ぐスペースのキャビンの中で、ププカ司祭と一緒に過ごすのは嫌だなと思ったけれど、口には出さなかった。
ちょっとの我慢で、この先の旅行が楽しくなるなら我慢だ!




