38.スーパー銭湯
***寛太***
会心の出来だと言う風呂場を見に行くと、そこはスーパー銭湯だった。驚きだ。
視認性云々を譲らない柚子に対して、自由に出来たのは男子風呂くらいだというんだから仕方がないのか!?……。
「っていうか。もったいなくない?この人数で使うだけだよ。女湯もこんな感じなの?旅行が終わったら女湯なんて柚子一人だけだよ。それにさ、広すぎて頭洗う時とか怖くない?」
「お化けが出そうでか?寛太はまだ目を開けてシャンプーしてんのか?」
「銭湯で、俺が洗ってやるって、シャンプーぶっかけたら大騒ぎしたよなぁ~。克服できてないのか~」
兄ちゃんズが要らない情報を拡散しはじめそうなので、文句を言うのはあきらめて、とっとと風呂場から退散した。
キッチンでは女性陣が、盛り上がっている。こういう棚が家にも欲しいだなんだと楽しそうにやっている。
水もお湯も、火も風も魔法で出し放題の柚子は、セーブするとか節約するとかいう考えは日本に置いて来たようだ。
だが、僕はやり過ぎている個所を一つ早急に改善して欲しいと声を大にして言いたい。
「柚子、キッチンのこれ以上の魔改造を始める前に、僕の結界をどうにかしてよ。今日の岩をぶち抜いた現象はやっかいだよ。もし、僕が外出先でこけてテーブルの角で頭をぶつけたとしたら?人目のある場所でテーブルが粉々になっちゃうの?それってヤバすぎるよ」
「でも、かんちゃんが怪我するより良くない?」
「怪我がしたい訳じゃないよ!僕もみんなくらいの防御だけの結界でいいってこと」
「……。悪意のあるものは?そこに悪意を感じ取ったら反撃結界が発動してもいいんじゃない?それだったら修正してもいいわ……」
かなり渋々だが、譲歩してくれるようだ。
僕は、忘れずにリオにも伝えた。
「リオ、僕の結界は攻撃できなくなったからね。岩とか壊せなくなったから、僕の事ハンマー扱いしてぶん投げないでね!」
「わっち、かんた、なげない?」
「そう、投げない。投げるなら『にいたま』を投げてね」
「ワシも投げるでない。リオは自力で岩山ごとでも破壊できるであろう?」
「ひとり、ドーン。たのしいないよ。わっち、にいたま、きたの。ひとり、いやよ」
「まあ、そうなのじゃが、ここでは、なんでも壊すわけにはいかぬでのう。破壊する前に誰かに相談すること、忘れるでないぞ」
どうやら、リオは一人遊びに飽きて『にいたま』の所へ押しかけてきたらしい。
一人でドーン遊び……。最初に会った時の兄弟対決を思い出すに、破壊力は相当エグそうだ。
夕飯は手作り料理だった。懐かしさで涙がでそうだ。
竹田家のパンパンのリュックの中身は、山本家のシャンプーや女の子の必須アイテムとは違って食べ物がメインだった。
収納バッグにいれておけるので、大量に貰っても腐らないのがいい。
大好物の焼きそば!幸せだ!
「麺とソースだけでも持ってきて、肉と野菜はそれっぽいのがあるから」と頼んだのだが、それとは別に、大量に作って小分けにして持ってきてくれたのだ。
母の愛情を感じてしみじみ食べて感謝を述べたら、作ったのは父だったようだ。かなりいじけさせてしまった。後でなにかフォローしないと……。
母は、異世界旅行の準備で大忙しだったので料理どころではなかったらしい。なにが要るって、女性は2週間も旅行するとなったら、スキンケア用品だとか、ヘアケア用品だとか、とにかく色々準備がいるらしい。そればかりでなく、風邪薬に頭痛薬、整腸剤に、下痢止めまで。家族分のあらゆる災難を想定して準備をしてきたようだ。
薬の入った箱を開けると、二日酔い防止の『飲む前に飲め!』的なドリンクまでもが大量に入っていて笑った。異世界にきてどれだけ飲むつもりなんだ。酔いつぶれたら危険がいっぱいだよ。きっと。日本と違うからね。
明日はどうしよう?
大人たちは予想外にラビの狩りを楽しんでいたので、もう少しここにいてもいい気がするなぁ。
なによりキャビンの、やりすぎスーパー銭湯のおかげで、お風呂への渇望が薄れたし。
食後に簡易地図とにらめっこをして計画を立て直すことにした。
「何事も計画どおりにいかないよね」と呟くと、
「トラブルメーカーのかんちゃんに言われたくない」
柚子にバッサリ言われてしまった。
僕の責任のあるトラブルって少ないと思うけど、トラブルに巻き込まれるのも含めてメーカーだと言われたら反論は……、出来ない。
でも、せめて、巻き込まれ事案メーカーとかに名称変更を求めたい。




