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聖女と僕のやりすぎお忍び冒険譚  作者: グーグー


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37/57

37.ただただ広い

 ***光太***


 ふと外を見ると母が寛太にしがみついて泣いていた。

 原因は想像がつく。

 寛太の先ほどの行方不明事件は、地下からの打ち上げ、空からの落下で早々に幕を閉じたが、僕たちの心に与えたダメージは大きかった。きっと母は、本当に帰ってこられないのかと聞いたのだろう。そして、現状を見れば、答えは否。


 はぁ。ため息がこぼれる。

 僕たちがこちらの世界と通信できただけでも天地がひっくり返る程うれしかったけれど……。

 更にリスクはあるものの、こちらに来られた。寛太とふれあえて、抱きしめられた。それならこのまま連れて帰ってはいけないのかと……、この数時間で何度考えたことだろう。

 先陣を切って散った母の姿を人目にさらすのもなぁ。僕はこっそり戻って、キャビンの魔改造をもう少し長引かせるべく、追加プランを提案した。


 ***寛太***


 母が泣きやむまで抱き合って、背中をポンポンと叩いていた僕に、母は照れくさそうに、

「ありがとう。もう大丈夫よ」

 そう言って、僕の腕の中から出て行った。

 母の体温の残った自分の体に、急に寒さを感じた。それが僕の選んだ道で、ここに柚子が収まってくれる未来が来なければ僕は永遠に寒さに震えるんだろうかと、今更ながらに考えた。

 行き場のなくなった僕の手を僕自身が呆然とながめる姿を見た母が言った。

「寛太。今を楽しみましょう。どの世界に居たって別れはくるし、理想の未来がくる人なんてほとんどいないわ。万一、ひとりで帰りたくなったら、その時に全力で知恵を絞りましょう」

 どうやら、母には僕の考えていることが全て分かっているようだ。世の母親という生き物は皆こんなにエスパーなのか。僕の母が凄いのか。驚いた顔のまま、やっぱり僕には、

「ありがとう」しか言えなかった。


 それからは二人で弓に悪戦苦闘している父たちを見学して過ごした。そして、やっと、

「みんな~!できたわ~!完成よ~!」という柚子の元気な声が響いた。キャビンは無事に空間拡張が出来たようだ。


「まずは普通のキャビンね。さっき乗ってたまんまよ。他人を乗せることもあるかと思って、このままの状態も残したの」

 意外にも常識的だ。

「そして、ここのボタンを押すと。じゃじゃ~ん!どう?凄いでしょ!!」

 予想通り、非常識だった。


 なんて言ったらいいのかな。

 何人住む予定かな……?

 だだっ広い、空間に所々仕切りがあって、それがトイレだったりお風呂だったりするようだ。みんなはドアを開けては顔を突っ込んでワイワイやりはじめる。

 オープンキッチンに広々した居間。ふかふかのソファに、暖炉まである。

 だけど、畳敷きの一角には全員の布団が並んでいる。


 うん。あれだ。避難所だ。プライバシーのない、まだまだ仮に開設したくらいの避難所に近い。

 それにしても、デザインにこだわるのに渉兄ちゃんたちの知恵を借りるんじゃなかったのか?どう考えてもデザイン性に優れているとは言い難い。


「うん、まあ寛太。言いたいことはわかるよ。スタイリッシュじゃないよなぁ。俺が考案した大人の隠れ家的な格好いい案は柚子が「視認性が悪い!」ってことごとく却下したせいだよ」

「そうそう、ちょっと妥協点が見出せそうな時に、さっきの行方不明事件だろう。結局、こうなった訳」

 渉も光太も最善は尽くしてくれたようだ。

 それにしても、僕の考えは口から出てるのかな?っていうくらい何も言っていないのに、会話が成立してる。母だけじゃなく、兄も幼馴染の兄もエスパーか。

「寛太は分かりやすいからのぅ」聖獣様も勿論のことエスパー仲間のようだ。


「でも、雑魚寝ってさあ、僕らはいいけど、リーダーは気まずくないか?家族旅行のような場所に混ざるって」

 父がそう言うと、

「太一さん、お気遣いなく。私は元冒険者です。どこでも寝られます。屋根がある寝床なんて贅沢なくらいですよ。風呂や便所なんて清潔過ぎて使い難いくらいです!」

 ピートはそう言って豪快に笑った。

「おお、流石リーダー!恰好いい~!」

「博さん、ちゃかさないでくださいよ~」

 弓チームは名前で呼び合う程仲良しになったようだ。これを機に「かんちゃんパパ」や「ゆずママ」という呼び方も止めてみんなで名前呼びをすることにしたようだ。

 ちょっと恥ずかしそうにしながら、『名前を呼び始めるぞって時』特有の微妙な空気を発している。

 他人事ながら大変だと思ったら僕らも強制参加だと言われて、改めて名乗られてしまった。

「私はゆずママとかおばさんって呼ばれるの卒業したかったから嬉しいわぁ!桃子さんって呼んでね!」

「俺は博。照れるなぁ」おじさんも続けて名乗る。

「僕は太一。よろしくお願いします」まじめに名乗った父。

「私は百合子。名前なんて、主人以外最近めったに呼ばれないから緊張するわねぇ」母は頬を染めている。


 **メモ**

<名前一覧>

 竹田家: 太一・百合子・光太・寛太

 山本家: 博・ 桃子・ 渉・ 柚子

 ピート(リーダー)

 カケル(聖獣様・子犬型)

 リオ(聖獣様の弟・子供型)



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