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聖女と僕のやりすぎお忍び冒険譚  作者: グーグー


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3.異世界二日目でクライマックス?

 ***寛太***


 なにがどうしてこうなったか、分からないまま目が覚める。

 昨日に引き続いて今日も、という不運な自分だ。

 だが、視界に柚子がいないのが最大の違いであり、最大のピンチを予感させた。


 周りを見回す。ゴロツキの巣窟に誘拐されたわけではなく、意外と綺麗なところに拉致されたようだ。鉄格子のはまった部屋なので有難いとは言い難いが、清潔なのはいいことだ。

 窓からはるか下に地面がある。どうやら幽閉塔的なものだとあたりをつける。運動神経に自信がないので、やったこともないシーツを利用する、非常時ロッククライミングに挑戦する気は今の所なかった。


 朝食と共に、ロトと名乗っていた過激派の枢機卿が手下を連れてやってきた。

「足を切り落とせ。片足でいい。聖女様にはこの男が文字通り足手まといで、聖典にない瘤のような存在だと知っていただかなくては。ラッピングでもしてお届けせよ」

 嘘のようなことを、真顔で言った。

「嘘だろ!冗談じゃない!」と、後ずさる。

「そんなことをしたら、ユズは絶対にお前を、お前たちを、この世界を許さない!絶対にだ!」

「そうでしょうか?聖典の正しさをまだご存じないからそう思うかもしれませんが、いずれはお分かりになりますよ」とニコリと笑う男。

 気持ちが悪い。全く話が通じない相手は、深遠を覗くように不気味だった。


 盛大に暴れて、必死の抵抗をしてみせたが、屈強な手下にかなう要素はどこにもなかった。

 ギラリと光る斧が振り下ろされる。

 次の瞬間には、足首から噴き出す血を呆然と見つめ、遅れてやってきた焼けるような痛みにのたうち回った。

 叫んでいるはずの自分の声すらも遥か遠くで認識されているような感覚だった為、ロトたちが楽しそうに足を持ち帰ったという認識も当然なかった。


 人は足を切り落とされても上手く止血できれば死ぬことはない、だろう。と、アドレナリンが暴走する頭で考えていた。

 シーツでなんとか止血した後、部屋の惨状をみて、清潔な部屋で有難いなんて思った数分前の自分を笑った。

「ユズ~、僕、失血死するかも。栄養のあるもの食べなきゃだめよってよく怒られてたよねぇ」と何もない空間に向かって話しかけた。思考が揺らぐ。もう目を開けていられなかった。


 ***柚子***


 寛太が誘拐されたのは、深夜だろうと想定した。攫われてからずいぶん時間が経ってしまっているはずだ。

 朝、起きてこないので寝室に入っていった時にはベッドは寝た形跡があったが、温もりは無かった。

 ナルドは全力で行方を捜しますと言っている。殺すつもりなら攫わないだろうとも。

『だから安心しろって!?冗談じゃない!』


 庭に出て自分のチート能力に人探しに役立つものがないのか実験を始める。この世界に土地勘も人脈もない今、私に出来ることは未知の力に頼ることだけだからだ。


「かんちゃん。どこ?どこにいるの?」自分の魔力を薄く広げながら探知出来ないかと集中している、その時、

「大変です!聖女様宛のプレゼントが届きました」

「それがどうしたの?この非常時にプレゼントなんて放っておいて!」と苛立ちをぶつけた私に、ナルドは、

「それが、箱から血のようなものが広がっております」と言って箱の下が見えるように差し出してきた。

 血の気が引くとは、このことか。嫌な予感で、一瞬にして背中に汗が伝った。

 覚悟を決めて、開けようとしたら、ナルドの側仕えが、代わりにと開けてくれる。

 嫌な予感は運よく外れて、また運悪く当たってしまった。

 運よく外れたのは、生首ではなかったという事。

 運悪く当たったのは、人体の一部であったこと。

 血まみれの足。添えられたカードには【足手まといはご不要でしょう】と書かれていた。『これはかんちゃんの足ってことよね?』心配や不安が一気に怒りに振り替えられるのが分かる。


『大切な人を傷つけられて、その加害者と共に手を取り合って、この世界に平和を!と思えってか?冗談じゃない』


「かんちゃんの無事を確かめるまで、私は、この世界を呪うわ!全力で!かんちゃんが死んでたら、この世界をぶっ壊す!!」


 ***ナルド***


 この宣言に異を唱える資格が、教皇たる自分にもないことを知る。神が召喚してくださった、この世で最も大切にすべき聖女様が、血濡れの箱を鬼の形相で抱きしめているのだから……。


 枢機卿を招集した。今回の事の真意、は、分かり切っているが……、どう始末をつけるつもりか、寛太様は無事か、寛太様を返すつもりがあるのかを問うた。

 意外にもパッスルと、ディックは無関係で、ロトの単独犯であった。

「これで、聖女様も、身軽になられて、我らに尽くしてくださるでしょう」と恍惚の表情で言う男に、同じく過激派と言われる二人も目を見開いてロトを見やり背筋を凍らせていた。

「ロト、流石にそれはいけない。やってはいけない事だと何故分からなかった?」

「我らもお前と同様に思われるのは心外だ!」


「今更仲間割れ?どちらにせよ許せない!」

 怒りと悲しみが魔力と共に放出された。あまりの濃度に特殊能力の必要もなく魔力が可視化された。


 そして、少しもたたないうちに、最も神聖とされるワーナー教会の大聖堂に瘴気が噴き出し、魔物が湧いてきたと報告が来た。

 我らは、聖女様の呪いの結果だと受け止めたが、それ以外の事情を知らない者は、ありがたくも聖女様が召喚されたばかりなのに、何故こんなことに?と動揺を隠せなかった。


 逃げ惑う信者を、衛兵が中庭に誘導してきた。瘴気は勢いよく広がっている。それをみて一目散に逃げるロトを、得意魔法の拘束魔法で捕まえ、瘴気の中へ放り込んだ。

 聖職者とて、人間だ。日頃のうっ憤も込めて、最も瘴気の濃い場所へ投げ込むことにためらいはなかった。

「瘴気によって穢れた体を浄化してほしければ、寛太様の居場所を言いなさい。もし、亡くなっていたら、あなただけでなく、この世界も終わりを迎えると、理解できましたか?」

 穏健派の代名詞と言われる教皇ナダルの、見たことも無い凶悪な顔は効果があったようだ。ロトは瘴気で紫に変色した体で震えながら、居場所を吐いた。


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