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聖女と僕のやりすぎお忍び冒険譚  作者: グーグー


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28/32

28.目をさませ!

 ***寛太***


 鏡の中の光太は目を覚まさない。

 普通に朝まで寝るだけなのか、幽体離脱の影響でもう一生目を覚まさないとかなのか判別がつかない。

「どうしよう。お父さんとお母さんを鏡通信で起こして揺さぶってもらう?異常がないか早く確認したいよね」

「そうね。深夜だけど。仕方がないわ。寝室にも鏡はあるのよね?」

「どこの部屋にもあるよ」


【コンコンコンッ】ノックしたら鏡の向こうからもノックが返ってきて通信が繋がる。

 この仕様にしたのは柚子だ。応答もないのに自動で繋がったら渉兄ちゃんがトイレにいる時だったという事件が起こったからだ。トイレにも鏡をつけるなんて信じられない!と柚子はご立腹だった。


「お母さん、遅くにごめんね。ちょっと光太ちゃんを起こして欲しんだけど。いい?」

「寛太と……みなさんもお揃いで?こんばんは。何かあったの?」

 僕の後ろに勢ぞろいするメンバーを見て一気に緊張したお母さんだったが、とりあえず光太を起こして欲しいと繰り返してお願いした。


「お父さん。起きて!ちょっと、早く、光太の部屋へいくわよ」

 声を上げながら移動している音がする。

 そして、光太の部屋にお母さんが現れて、机の上で伏せて寝ている光太を揺さぶった。


「どうしよう。起きない。幽体は確かに中に入っていったよね?」

 不安でたまらなくなって、僕はカケル様に確認する。

「確かにそう見えたがのぉ。母上殿、もうちっと強めに揺すってみてはどうじゃ?」

 お父さんも加わって、大声で声をかけて、揺すったり頬をバチバチと叩いたりしてくれる。

「寛太、何があったんだい?光太はどうなった?」

 お父さんは厳しい声で問いかけてきた。


「実はのぉ……」

 カケル様は、ルーティーンとなっていた夜中のミーティングの話を再度繰り返し、今日の出来事まで繋げて一気に説明してくれた。

「光太は、もう本当に、『寛太馬鹿』なんだから……」

 脱力する両親に

「ごめんなさい……」と僕は謝った。声はかすれていて小さくて、届いたか分からないほどだった。でも、繰り返す気力も残っていなかった。


 毎年、実の両親の命日にお墓参りに連れて行ってくれて、

「寛太はこんなに立派に大きくなっているよ。安心してな」とお墓に向かって語り掛けてくれるお父さん。

「兄さん、義姉さん、寛太はちょっとどんくさいの。兄さんに似たのねきっと」と愚痴っているお母さん。

 そんな二人の……大切な光太ちゃんに何かあったらどうしよう。僕はどうやって詫びたらいい?


「あの、差し出がましいようですが……」

 ピートが口を挟む。

「柚子様の眠りの魔法で光太さんの幽体は寝ているのですから、魔法をとかなければ起きてこないのでは?」

「!!!??」

「鏡越しでも魔法って飛ばせるかしら?」

「やってみて!でもダメだったら、魔法が解けるまで寝続けるの?いつ解けるの?」

「習った時に、普通は一時間くらいだって教えられたわ。でも、私の魔力だし、幽体にかけたし、普通が当てはまると思えないわ。暢気に待てないし、鏡越しで魔法が使えるか実験してみましょう」

 そして、試行錯誤した結果。通信中の鏡に触れていたら、魔法が及ぼせると判明した。

 光太の指を鏡に触らせて、眠りの魔法を解く。


「う~ん。うん?何事?父さん母さん?何かあった?あ!寛太と繋がってる!僕そっちの世界に行った夢を見てたんだよ~。寛太を抱きしめられたんだ!素敵な夢だった。もう一度見たい!もう一度寝よう!」

「「「もう寝んな!」」」

 こっちとあっちの世界でシンクロして突っ込みが入った。


 翌日改めて、体調の面でも問題がないと確認されて一安心だ。


 ***柚子***


 あれ以降、事あるごとに幽体でこちらにくる光太。

 そんな親友の様子に渉が気づかないはずがない。


「酷い!酷すぎる。光太だけ!?俺はそっちに行けるなんて聞いてない!柚子!お兄ちゃんはね、仲間はずれが大嫌いだよ!」

 鏡に唾が……、相当おかんむりだわ。

「渉兄、落ち着いて。言わなきゃいけないとは思ってたのよ。でも、かんちゃんの家族の中でも光太ちゃんだけが来れたの。竹田のおじさんとおばさんがしょんぼりしている中、渉兄が成功したら気まずいでしょ。だから暫く時間をおいてって思ったの。こっちも色々気を遣ってるのよ」

「そうなのか、おじさんはともかく、おばさんもダメだったのか。じゃあ、血のつながりとかじゃなくて適正が必要なんだな」

 状況を一瞬でのみこんだ渉兄。どうやら納得してくれたようだ。

 そもそも隣家の竹田家はこれ以上ないほど仲が良い。ブラコンの気のあるおばさんが、亡き兄の忘れ形見のかんちゃんを溺愛しているだけでなく、おじさんが天使のようにかわいいを連呼しながらかんちゃんを育て、ちょっとない程弟に執着している光太がガッチリガードを固めているのだ。一枚岩とはこのことだろう。

 私が、かんちゃんのそばに居られたのも、光太が、かんちゃんと同じ年の私を、番犬代わりに利用していたからに違いないと今振り返ればそう思う。


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