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聖女と僕のやりすぎお忍び冒険譚  作者: グーグー


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25/33

25.天使爆誕

 ***ピート***


 この旅は波乱万丈だ。

 柚子様が町中のどぶさらいの依頼を受けているのを見て、聖職者達が目を怒らせて私にクレームをつけてくるのを躱し、常識知らずの寛太様を何とか普通に見えるように取り繕い、カケル様が他人の前でしゃべりそうになるのを事前に防ぎきってきた。得意魔法が高速移動で本当に良かったと神に感謝する毎日だ。

 私の見えないサポートで回っているようにさえ思えるこのパーティー「虹の架け橋」だが、やはりこの人たちと自分は決定的に何かが違うと痛感する。


 謎の生き物が、カケル様の弟で、旅の仲間に加わるという事態に、パニックを起こすでもなく、見た目や言葉の壁さえないならどうぞというあり得ない程あっさりしたスタンスで終わらせた。

 絶対にもっと何か引っかかるところがあるはずなのにだ。

 そもそも聖獣様の弟とは?神が新たに聖獣様をお創りになったというのだろうか?

 そのあたりのことは思いっきりスルーで話が進んでいく。私は聖典主義者ではないが、聖典と言う神にまつわる指南書があることによる安心感の重要性を、ひしひしと感じていた。


 ***寛太***


「にいたま!かわいい。わっちもそれ、なる!」

「いや待て、同じはいかんぞ。ワシとは違う姿になるがよかろう。柚子、何かないのか?この子犬の姿はワシの物じゃぞ」

「可愛い姿が良いのかしら?格好いいのとどっちがいい?」

「わっちは……。カッコイイ、スキ。かわいいも、スキ」

「う~ん、どっちも好きなのね。難しいわぁ。かんちゃん、カッコよくて可愛い生き物ってなにかしら?」

「人型でいいんじゃない?小さい子って着るものを変えると可愛かったり格好よかったりするでしょ?それにこの子、まだ幼い感じだし、動物に擬態してもすぐに人前でしゃべっちゃいそうじゃない?」

「確かに!そう言われるとそうね。聖獣様って人型になれるの?『人型なんて!聖獣の誇りが傷つく!』とかあったりする?」

「せいじゅうさま?にいたま、せいじゅうって」

 そこまで言ったところで、弟にタックルを食らわせたカケル様は、弟と見つめ合った。何やら念話的なもので会話しているようだ。


 数分後、カケル様がこちらを向いて話し始めた。

「う~、おほんっ。人型、大丈夫じゃ。ちなみに旅の便宜上名があるほうが良いであろう。リオとでも呼ぶとよい」

「リオ君だね。何歳かな?」

 黒のアメーバスライム(象サイズ)という見た目では年齢ははかれないので聞いてみた。

「なんさい?わからない……。だめ?……にいたまぁ……」

 リオは泣きそうな声を出す。分からないと一緒にいられないと思ったようだ。

「大丈夫じゃ。心配ない。柚子、三歳くらいの男の子を想像してくれ。リオ、それを読み取って自身の形とするのじゃ」


 そうして、無事にゲキカワ幼児が爆誕した。アメーバスライムからのギャップが凄いが、声にはぴったりあっている。ぷにぷにもちもちすべすべの白い肌。金髪巻き毛に琥珀の瞳、どこかの宗教画の天使さながらだ。

「リオ君完璧よ。私のイメージ通りだわ!翼がないのが不思議なくらいね」

 やはり、柚子は天使をモチーフにしたようだ。

 柚子のシャツを着せてウエストをリボンで締める。それだけでも絵になる。何度でも言おう、本性はアメーバ……、いや、やめておこう、脳がバグる。


「設定は、リーダーの甥っ子ってところかしら。私達の弟には見えないものねぇ」

「私にもかけらも似ていませんが……」

 ピートは大柄で力も強そうな、見た目は脳筋タイプだ。(実際はオカン気質で結構細かい)

 明るい茶色の髪は短髪で清潔感がある。アイスブルーの瞳は神秘的だが、顔立ち自体は無骨な男らしい感じだ。

「でも、黒髪黒目の私達よりは似ているでしょう?」


 結局、『ピートの甥っ子を祖父母の住む最果ての地まで送っていく所』というざっくり設定で旅することになった。

 冒険者として依頼を受ける時、子連れの冒険者なんて異質この上ないという事に、この時は誰も気づかなかった。



 キャビンが浮き上がって移動を始めると、リオは

「のりもの、これが、のりもの!はじめて、わっち、はじめて!」と大騒ぎだ。

 あまりの騒ぎように、飛行キャビンを怖がっていたピートもそれどころではなく、転げ落ちてしまいそうなほどはしゃぐリオを押さえつけるのに一生懸命になっていた。

 ドタバタやっていると、柚子のサイズ可変魔法で小さく変化させられていた馬が、興奮して箱に体当たりを始めてしまう。


「馬さん、ごめんね。もうすぐ元に戻してあげるからね」

 箱をのぞき込んで声をかける。

「うま?ちいさいいきもの、かわいいね」

 リオは馬にも興味を持ってのぞき込み、箱から取り出して抱っこした。最強生物であろう聖獣と互角に戦える弟だけに、危ないかな?とかは微塵も感じないらしい。子どもだからかもしれないけど。


 そして、噛まれるとか、蹴られるとかの危険はなくても、粗相をするという危険はあるのが、現実だ。

 可愛い天使の胸元に、小さい馬の小さい馬糞が……。

 馬糞を触って、

「なにかでてきた!にいたま、これなに?」と茶色い手を差し出すリオに

「動くでないぞ!しばしそのままじゃ」と、カケル様は叫んだのだった。


 その後も、やりたい放題のリオに振り回され、小さい子どもと旅をする大変さを痛感した一同は、

「とりあえず、クリーンの魔法を開発しましょう」

 そう言った柚子に大賛成するのだった。


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