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聖女と僕のやりすぎお忍び冒険譚  作者: グーグー


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24.謎の生き物

 ***寛太***


 新幹線も飛行機もある世界から来た僕からすれば、動力が柚子の魔法ということに慣れてしまえば、特に違和感のないことだが、ピートは地面の木々が見えない速度で後ろに流れていく様に震えが止まらないようだ。

「リーダー、大丈夫ですよ。ユズも安全運転を心がけてくれているようだし、ね?」

 少しでも安心してもらおうとニッコリと笑ってみせた。

「かんちゃん慣れた?大丈夫そうね。結界張っているから風圧も感じないし、もう少しスピード出すわよ」

 柚子はサクッと、僕の気遣いを無駄にするセリフを吐いた。

 カケル様は御者席の方が楽しそうだと柚子の隣に移って、「もっといけるじゃろう、急旋回なんかも試してみてはどうじゃ、一回転も楽しいのじゃ」とろくでもないアドバイスをしていた。

「絶叫アトラクションじゃないんだから、やりたいなら自分だけでクルクル回っておいて!」

 カケル様をむんずと掴んでキャビンの天井に回転がつくようにして放り投げた。

「うひょぉ~~~!これは!楽しいのぉ。もう一度やってもよいぞ」ぷかぷか浮きながらしっぽを高速でフリフリしてリクエストしてくる。

 ダメだ。子犬化が激しすぎてついて行けない。


「リーダー~~カケル様~!」

 柚子が呼んでいる。

「何かあったの?」

 御者席にみんなして顔を出すと柚子が前方を指さしている。

 その先を見てみると、巨大なクレーターがあった。

「あれって何?観光地か何か?」

「いえ、私は存じておりませんが……」

「不思議な気配がするで、行ってみるかのぉ」

「人の立ち入らない森の中心の得体のしれない場所に?行ってみるの?」僕は行きたくない気持ちを込めて柚子を見た。

「いいじゃない。この世界にも隕石とかって落ちてくるのかしらね。楽しみね」

 ほとんど無敵な二人は、危険が潜んでいるとは考えないようだ。


 クレーターの中心に近づくと、動きがある。生き物がいるようだ。

【ガキンッ】と何かが結界にはじかれた。攻撃された!?

「敵じゃん!逃げようよ!」焦る僕に、

「あら、待って、鑑定するわ。ステータスオープン!」


「ダメだわ。鑑定不可と出るわ。なんでかしら?カケル様もやってみて」

「柚子が見られないなら世界の理に関係するものであろう。しばし待っておれ、話をしてこよう」

 そう言ってカケル様は、結界から出て本性に戻り謎の生き物に近づいて行った。


「カケル様は大丈夫でしょうか?」

「神様の次に偉いんでしょ。大丈夫じゃない?」

 ピートは心配するも柚子は楽天的だ。


【ババババッ!】【ズドォーン!】

 話しは穏便には進まなかったようだ。戦いが始まってしまった。

「結界を強化するわ!」

「相手は聖獣のカケル様と渡り合っているようです。普通の生き物ではありません。退避しましょう!」

 緊張が走る。だが、その瞬間、空から光が降って来た。

「次は何?神様降臨的なやつ?味方?」

 僕は希望的観測が過ぎるかと思いながらも祈る気持ちで空を見上げた。


 そして、カケル様と謎の生き物は空の光に吸い込まれてしまった。多分……。光があまりに強烈になって目を開けていられなかったら確証はないけど。


「これって、アブダクション的な……?」

「UFOないけどね。光に吸い込まれて宇宙船に連れて行かれた系ではあるかもね。どうしようかしら?」

「お二人は『守護し合う同盟』があります。紋章は……出ていないようですから、無事なのではないでしょうか」

 ピートの言葉で僕と柚子はハッと気づいて手の甲を見る。確かに紋章は出ていない。ひとまずは安心だろうか。

 この世界の聖獣が、抵抗も出来ず連れ去られるような存在に害意があったら、世界が終わるし。


 待つことしばし、再び光が現れて、クレーターの中心にカケル様が帰ってきた。謎の生物も一緒に。

「もう安全じゃて、こっちへ来るがよいぞ」

 カケル様が呼ぶので結界を張ったまま近づくと、象くらいのサイズの、なんというか、黒い、溶けたような、二足歩行のアメーバスライム的なものがいた。まさに、ザ・謎の生物。


「まあ、いろいろあってのぉ……。ワシに弟が出来たようじゃ。自分に兄がいるなら、その強さを確かめたいと飛び出してきたようでの。このまましばらくワシの側に置いておくようにと言われてしもうてのぉ。なるべく迷惑をかけぬようにするで、よろしく頼まれてくれまいか」

「……」

「見た目が無理。カケル様のように姿が変えられるの?」

「言葉は理解できるの?」

 ピート、柚子、僕、三者三様のリアクションだった。


「あの、わっち、言葉わかる。たくさんわかる。だいじょぶ」

 うん、声は可愛い。そして見た目とのギャップが凄い。だが意思疎通ができるのが重要なので、細かい事はどうでもいいか。

 柚子は姿を変えられないなら一緒にはいられないと再度言う。

 見た目の差別はよろしくないと、言いたいところだが、どろどろと溶けたような見た目の通り、移動した道筋が黒くぬめっているのを見て、柚子に賛成した。ピートも高速で頷いている。


「弟よ。姿を変えるとよいぞ。ワシは旅の最中、この姿になっておる」

 そう言って小さい翼つきの子犬に変身して見せた。

「どうじゃ。可愛いであろう」声も高くなって、胸を張っている様子は、弟にマウントをとる小さなお兄ちゃんそのものだった。



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