22.成金教会
***寛太***
食堂で朝食をとるとすぐに、ププカの町に唯一ある教会に向かった。そこにある祠で柚子が魔力を注ぐのを待ってから冒険者ギルドによるつもりだ。
「冒険者ギルドと言ってもププカは王都の支所扱いですので、ギルマスはいませんし、ダンジョンがありますから、こどもの御使い用の依頼以外はほとんどダンジョンでのドロップ品の買い取りが仕事です。冒険者たちは一応顔つなぎに行っておくと万一の時に『あのパーティーがダンジョンに潜ってから帰ってきてない!』となった時に親身にしてくれそうだからと顔を出しておくのが慣例になっています」
「ワシらじゃぞ。帰ってこないなんという事態になる訳なかろうよ」
「カケル様のおっしゃる通りです。ですが、皆と同じことをしている方が目立ちませんから」
「そんなものかのぉ」
話している間に、教会に到着した。大きくて立派だ。
「結構大きい教会だね。王都の外れにあるのより立派かも」
「貴族階級がダンジョンにレベル上げにくるようになって、ここが救護所を兼ねはじめました。その為、資金が豊富になったようです。改築増築を繰り返していて、どこまで大きくなるのか分かりませんが、まだ終わりではないようです」
「すごいわね。成金感が出てて。……ここまでくると潔いかも」
「いずれはここの司祭様が司教様にご出世なさる時にそのまま、ププカの教会の格を上げて司教様が治める教会になるのではと言われるほどの、あからさまな拡大ですから」
ピートは苦笑いしながら説明してくれた。
分かりやすく言うと、この世界の教会は
教皇=首相
枢機卿=大臣
大司教=知事
司教=市長
司祭=町長・村長
こんな感じだ。
町が巨大になって市になるなら、そこを治める人は司教の身分が必要となる。ププカの司祭が司教に任じられるほどの人物なら丁度良いとなるわけだ。
この増改築を見る限り、司祭本人もヤル気マックスな気がする。
そして、教会の中に入って目立たないように聖女の紋を見せて祠に案内してもらおうとしたら、でっぷり太った女性がギラギラの宝石を纏って部下を引き連れ現れた。聖職者の概念がぶち壊された瞬間だった。
「まぁ~~~~!聖女様、お待ちしておりました。ププカへようこそお越しくださいました!」と声を張り上げた。
周りの視線が痛い。柚子だけ来させるべきだったか。
すかさずピートが前に出て、
「目立たずに行動されたいという聖女様方を支援するように案内が回っているはずですが?」と威圧した。
「まあぁぁ、我々は長くお待ちしておりましたのに、そのようにおっしゃるの?ねえ聖女様、ちょっとくらい宜しいわよねぇ。信者たちも喜ぶことですわよ」
全く通じなかった。というか、自分の要望は全て通って当たり前くらいの押しの強さが滲み出ている。
「ボスあるあるかしらねぇ。小さな集団でもトップになればそこに君臨する万能感があって、身の程以上に偉そうにしちゃうっていう」
「ユズ聞こえちゃうから」
「聞こえるように言ってるもの。私って聖女なの。教皇も私の希望を叶えるって太鼓判をおしてお忍びの旅に送り出してくれているのに、ちょっと隣町に来ただけでもう、集団のトップの独りよがりリーダーごっこに都合よく利用されろって!?冗談じゃないわ」
柚子は怒ってそういった。
「それは、そうだけど」
「そうなのよ!ここはやらないわ」
「やらないって何を?」
「ここの祠には魔力を注ぎたくないわ」
そう言って足早に教会を出て行く柚子。慌てて追いかける僕らだけど、さすがに後ろが気になって出口の扉の所で一度振り返った。
固まって反応すら出来ていない司祭様一団。余程衝撃的だったのだろう。
「いいのかな?」
「よかろうよ。柚子がやりたくないのに、することは無かろう。聖女は柚子じゃ」
「世界が終わっちゃったりしない?」
「旅の終わりにもう一度寄ればよかろうて。そのころには司祭は挿げ替えられておろうがのぉ。ふぉっふぉっふぉ」
楽しそうに笑っているが、何気に重大な発言だろう。
僕でも分かる。この司祭は聖獣をも味方につけている聖女を一瞬で怒らせて、フォローする能力もないという事が。
「金回りの算段が上手だっただけでここまで偉そうにできたのかしら?」
少し離れた場所まで来て教会を眺め、柚子はそうつぶやいた。
僕的には、王宮の貴賓室のような見た目重視の教会には気を付けようと、今後の課題とした。
後味が悪いことになったので、ギルドにもダンジョンにも行かず、ププカを後にして次の祠を目指すことになった。昨日町に入った時は、『通行税カケル様が無料だったね~』なんて言ってホッコリしていたのに。なんとも。




