21.双子コーデ
***ピート***
初めての遠出でテンションの上がっている三人を連れて、宿に向かう。
常々、気苦労が多いだろうと教会の関係者達からねぎらう声をかけられる私だが、そんなことはない。
三人とも、気さくで、身分差別がない。しゃべりかた一つとっても、『もっとくだけて話してください』と言われるくらいだ。これ以上ないほど、くだけさせて貰っているつもりだが、まだ彼ら的には足りないようだ。
思わず頬が緩む。
この世界は、ワーナー教会が絶対的な力を持っていて、それに続くのが各国の王族となる。分かりやすい力関係で述べれば、教会での地位が三番目の大司教が、王族と肩を並べる発言力を持っている感じだ。
教皇と枢機卿が別枠なのが良くわかる。
もちろんその上にワーナー神様、聖獣様、聖女様がいる訳だが、そのうちの二人が旅の仲間だと思うと、隣町に来ただけなのに『思えば遠くへ来たものだ』という感想すら浮かぶ。
寛太様がいてくれるので、庶民仲間というか、かわいい弟分というか。一人身分違いの私にとっての安心感は絶大だ。
時折、毒を吐くがそれも可愛いと思えるほどには、私自身は寛太様の身内扱いを受けていると感じられる。
柚子様寛太様は、両片思いという、青春真っ只中な恋愛で、もじもじしている。時々お節介を焼きたくなるが、ここは我慢のしどころだと踏ん張っている。
というか、二人とも17歳というわりに、10歳くらいの恋愛脳の気がする。これは異世界人特有なのだろうか?
まあだが実際、今ここで、『初恋実りました!』となって二人の世界を築かれても困りものなのだが……。
「祠の旅の終盤にいい感じになって、王都に帰ってゴールインしてくれるのが、一番いいんだがなあ」
「うむうむそうじゃのぉ。大聖堂でド派手な式にするがよかろうのぉ」
「!!!」カケル様に返事をされて驚いた。どうやら、最後は口に出してつぶやいてしまったようだ。
慌てて振り返ると、似たような身長の二人が、楽しそうにじゃれあうように笑いながら後をついて来ている。私のつぶやきは聞こえてはいなかったようだ。ホッとした。気を抜きすぎているようだ。
それにしても、黒髪に黒目の二人は同じ人種ということもあってかどことなく似ているように私からすると見える。髪型はストレートロングと、ふわふわショートの違いがあるが、双子の兄妹、いや姉弟に見える。
今も、周りから「可愛い双子ちゃんね~」と声をかけられている。旅装束で色味も似たものになっているから、余計にそうなのだろう。
「あら?かんちゃん、また双子って言われたわ!双子コーデ選んで正解ね!」
「僕はもう、男女の双子に思われているなら、それでいいよ」
はしゃぐ柚子様の言葉で敢えて似せていた事実が分かった。誰得でそんなことを!?
寛太様は既に達観している。男女の双子……。寛太様は嫌がるかもしれないが、17歳男子にあるまじき可愛い風情に、恐らくこの世界では、女女の双子に見えているだろう。それを察知しての達観したセリフ。寛太様……、今度筋トレにでもお誘いしてみようと心の中にメモをした。
***寛太***
宿に到着した。こじんまりした小さな宿で、小さな食堂がついている。教会が紹介してくれる宿ではなく、ピートの常宿に連れて行ってくれた。
「はじめが肝心なので、はじめは私の常宿にお連れしますね。教会の斡旋した宿に泊まることが当たり前になると、その宿の者が待ち構えることになりますから、それよりは、斡旋した宿に泊まらないこともあると認識された方が今後の事を考えると自由度が高まるかと思いますので」というピートの説明を道中聞いていたので、楽しみにしていた宿だ。
冒険者御用達の宿には王都で泊まっていたけど、普通の宿は初めてだ。旅商人が泊まることの多い宿らしく、今日も泊り客の中では唯一の冒険者が僕たちらしい。
3人部屋に案内される。カケル様は僕のベッドだ。
柚子は女の子だけど、寝る時や着替える時はピートさんの間に衝立を置くので問題なしだ。
僕と柚子の間にも置こうと提案した。
僕だって、思春期の男な訳で、朝や晩に生理現象が発生する訳だから……。必死でお願いするも、却下されてしまった。
「見えないところだと危険察知が遅れるのよ。知らない町で目を離すなんて、ありえないわ!」
「柚子様、そうはいっても、寛太様もいろいろあるでしょうし……」ピートも応援してくれた。
「ワシもおるし、そこまで心配はいるまい」カケル様も味方だった。
でも、却下された。私の心の平和が守られない!と噛みつかれたら誰も異議を唱えられない。僕もね、散々心配かけたしね。
今度こっそり渉兄ちゃんにヘルプ要請を出そうかな。柚子が真っ赤になって僕を男として意識し始めたら?それはそれで居心地が悪いというか、しっくりこないというか、どうすればいいか、この案件の僕はいつだって迷子だ。




