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聖女と僕のやりすぎお忍び冒険譚  作者: グーグー


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19/32

19.旅立ち

 ***寛太***


 僕たちは王都を出て、別の町へ移動することにした。王都の城壁内にある祠は全て魔力を注ぎ終わったし、冒険者として生活するのもある程度慣れてきたからだ。

 目的地は、王都南西にあるププカの町だ。くだものの栽培が有名でのどかな場所だが、ダンジョンに隣接していることでも有名だそうだ。

「ダ、ダンジョン……」

「そうです。祠はダンジョン内にはありませんので、聖女様の巡行プランには当然入っていませんが、冒険者として旅をしている今なら行き放題ですよ」

 ピートは楽しそうに言う。

「どうなんだろう?危険じゃないの?ダンジョンって魔物がジャンジャン湧いてくるんだろ?」

「そうですね。ですが、ダンジョンの魔物は特殊で、倒すと消滅します。解体だのなんだのという手間が必要ないので人気です。時折ドロップ品がでることもありますが、ギルドで討伐報酬は貰えません。その代わり何階層まで進んだか分かる仕組みがあるので、それによってランク上げに必要なポイントが貰えます。貴族で兵士や騎士になりたい方はここでランク上げをしていることが多いですね」

「あ~、もしかして、お金には困ってないから魔物の素材とかは必要ないからってことかしら?」

「ま、そういうことです。不思議な事に倒す時に返り血を浴びるなんてこともありませんしね」

「そうなの?それは素敵ね。でも兵士や騎士希望者が冒険者のランクを上げるってどういうこと?」

「昔は特に近衛騎士はコネで入団するのが当たり前だったらしいのですが、あまりに実力が伴わないということで大問題になったようでして……最近は、コネで入るにしても、ズル出来ない実力を証明する金看板があったほうがいいという風潮です」

「冒険者ランクはズル出来ないんだ!」

「そうですよ。貴族の方は最低ランクからコツコツとなんてされませんから、専ら王都から最も近いププカのダンジョンで下層をめざします。中に入ると貴族だらけということもあります」

「うわっ!なんかダンジョンのイメージ変わる」

「でも、行ってみたいわね。折角だから!どんなものか興味あるわ!ね、かんちゃんも良いわよね!?」

 楽しそうに瞳を輝かせている柚子にダメだなんて言える訳もなく……、というか、僕もちょっとどころでなく興味がある。

「ユズ特製の結界が効くくらいの魔物レベルの階層までなら行ってみたいかな」

「決まりね!」


 最寄りの教会の遠距離通信でナルドと連絡を取る。

「大聖堂へ通信!教皇ナルド様いらっしゃいますでしょうか?」

 設置してある小さな鏡に向かってピートが話す。仕組みは神様が繋いでくれた異世界との鏡通信と似ている。通信魔法がかかっている。人と人が繋がっている神様の鏡魔法とは違って、鏡と鏡が通信しているようだ。

 この魔法は比較的持っている人が多いが、何故か皆、魔力量が少ないらしい。個人では、庭先にいる人に帰っておいで~って伝えるくらいの距離しか使えないらしく、遠距離通信をするには、一度に大量の通信魔法の持ち手を集めて鏡に込める必要があるそうだ。教会や王宮にしか遠距離通信の鏡がないのがうなずける。

 ただ、割れない限り有効なので、大事に扱っていれば半永久的に使える優れもの。


「おや、皆さまお揃いですか。お元気にやっていらっしゃると伺っておりますよ。聖女様、王都内の祠は全て終えられたとのこと。大変有難く~~~」長く話が続きそうなのを柚子がぶった切る。

「そうなの!全部終わったから次の町に行くわ!ププカね!はい、次かんちゃん達!」

「え、僕も?あ、あの行ってきます」

「行ってくるでのぉ~」

 カケル様と、小さな鏡なのでおしくらまんじゅうになりながら話す。


 鏡の大きさで魔力を込める量が変わるらしいが、ぶっちゃけ、声だけでも十分なので姿を映す必要性は感じない。

 テレビ電話より普通の電話のほうが落ち着くんだけどなぁ。なんならSNSで済ませたいくらい。

 大聖堂は権威の象徴か、大型の全身鏡を使っているのでこちらから見ると全身は映るけど、顔は小さくて表情が分かりにくい。

 んんん?という事は、今僕たちは、あちらの巨大な鏡に顔だけドアップで表示されているのか!?恥かしっ!


 その後は、冒険者ギルドに行って、唯一事情を知っているギルマスのドガルさんにこっそりお別れをした。ピートさん曰く、陰でこっそり僕たちの異質さをごまかすのに骨をおってくれたらしい。感謝だ。


 そしていよいよ、馬車の旅だ!

 石畳だった王都と違って凸凹道。

「辛い、バウンバウンするの、キツイ」

 あっという間に弱音を吐く僕と柚子を見てカケル様は、

「軟弱じゃのぉ」と笑うが、本人はプカプカ浮いているので振動はゼロだろう。ずるいよ。


 柚子は勿論、乗ってすぐに自分も浮かせていたが、乗り物の中で浮くのはバランスが難しいらしく、宇宙飛行士のごとく浮遊しては壁にあたって、さかさまになって……、大股広げて馬車の床に墜落して、やっとあきらめていた。

 真っ赤な顔でスカートを押さえて小さくなる柚子に、

「リニアモーターカーみたいに、馬車ごと浮ければいいのにね」と別の方向へ気をそらすように話しかけた。

「!!!?かんちゃん!それって、もう馬いらなくない!?やっちゃう?やっていいの?」

「……。どうだろう?やっていいかと聞かれると分かんない」

「浮遊、推進、水平保持、~~~~」ブツブツ言い始めた。立ち直りがめっぽう早いのも柚子の良いところだ。


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