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聖女と僕のやりすぎお忍び冒険譚  作者: グーグー


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15/31

15.神様は太っ腹

 ***寛太***


 僕は、薬草辞典を見ながら、流石にここには魔力の木は載っていないだろうなと思いながらページをめくっていた。


 その時、土の中から角の付いた芋虫みたいな魔物が飛び掛かって来た。咄嗟に固まるしかできなかったが、

【カキンッ】という音と共に魔物が弾かれた。

 柚子の結界の勝利だ。

 魔物は体勢を立て直す暇も与えられず高速移動してきたピートに倒された。


「かんちゃん、無事よね?」

 初めてのことで、結界の強度に納得のいっていない柚子は少し不安そうに聞く。

「うん、大丈夫。ユズありがとう。凄いね……。アニメみたいだ」少し頼りない声になったが、答えた。

 ぶっちゃけ、魔物よりピートの剣のギラつきのほうが怖かったが、それは言えない。


 ピートの説明によると、これはワーム。薬草採取がメインのEランク冒険者が最もよく遭遇する、下級魔物であるとのこと。

「せっかくですから、腕輪を使ってみてください。ボタンを押したらすぐに、シュナーのギルトと言ってくださいね」と、いわれた僕は、恐る恐る腕輪を近づけてボタンを押した。

 両断されたワーム。普段ならグロイといって近づかないだろうが、面白アイテムを前に、好奇心が勝ったのだ。

「シュナーのギルド!」

 すると、少し離れた場所に飛んでいた上半身も一緒に、きれいさっぱり消えた。


「初級の魔物を送ったら解体場の人に迷惑じゃない?」送った後に気づいた僕に、ピートは笑って、

「初級の冒険者あるあるです!皆、最初の頃は何でもかんでも送りますよ。そのうち、解体手数料がもったいないことに気づいて、自分たちで解体し始めます」

「それじゃ、討伐報酬はどうやってカウントされるの?」

「【討伐報酬のみ、シュナーのギルド】といえば魔物は転送されず、報酬だけ加算されます」

「すごい!!」と思ったが、自分で解体するハードルは高そうだ。

「まあ、自分で解体する期間もそう長くはありません。上級冒険者になると倒す魔物も大きくなりますからね。解体したとしても運べませんから、結局ギルドに送って保管を頼むことになります」

「確かに、そうか。保管かぁ。保管魔法に転送魔法。ギルドには凄い人たちが集まっているんですね」

「ハハハ、そういう訳ではないんです。この手の魔法が使える者は希少なので大抵が王宮お抱えになります。王宮から月に一度やってきてギルドへは有償で、教会へは無償で魔法を構築して帰っていくんですが、冒険者から見たら別世界の雲上人です。冒険者時代は近寄れもしませんでした。ですから、教会で聖女様の護衛を任されてから、その人たちが笑顔で挨拶してくれるようになって驚いたものです。笑えたんだって思ってね」若干怖い笑顔でピートが語った。

 どうやらあんまり性格のよろしくない人たちのようだ。近寄らないでおこう。


「でも不思議よねぇ。転送。生き物はダメだって言われたのよねぇ。自分自身を転送できないかやってみたいのに。でもちょっといじったらワープに出来そうかしら?」

「絶対やめて。せめて僕と一緒に居る時にまずは魔物とかから始めて!」と危険な実験にストップをかけた。

「あら、じゃあ今もう一匹魔物出てこないかしら?」という柚子に、

「今日初めて魔物に襲われた僕に、いきなり失敗したらスプラッタになるかもしれない魔法を見せるつもり!?」と怒った。


 すこししおらしくなった柚子を見て、まだ若い27歳のピートが、

「青春だなぁ」と目を細めて言ってくる。

「そんなんじゃないですよ。腐れ縁です」学校でいつもそう言っていた。今もそう言うつもりだったが、何故か言葉にしなかった。色々あって僕たちには茶化してはいけない絆ができたような気がしたからかもしれない。


 ***柚子***


「またせたかのぉ~」帰って来たカケル様は、手に果物を持っていた。

「わぁ~~、それってもしかして!?」

「そうじゃそうじゃ、魔力の木の実じゃ。神がのぉ、異世界人にも効果があるかは分からんと申される。分からん物を探させるのも悪いで試してみるがよいと下されたのじゃ。有難く頂戴せよ」

「太っ腹!」と喜んだ私を見ながら

「もらっちゃって、いいのかな?」と恐縮する寛太。

 凸凹コンビだと笑われる訳だわ。


 カケル様は「飽きぬ二人じゃのぉ」としっぽを振って、

「二人の側にいることを即決した自分をほめねばならぬかのぉ」と言いながらトコトコ歩いてこちらへ来て私の腕の中に納まった。子犬化が加速する聖獣様である。


 魔力の木の実はスモモみたいな果物だった。つべこべ言わずに食べろと促すと、かんちゃんは恐々かぶりついた。

「うん、そうだね、ちょっと甘いかな」

「まずくないならなによりね。それより、魔力がゲット出来るかどうかが問題だわ」


 皆が見守るなか、完食したかんちゃんは、

「ユズどう?僕の中に魔力見えてる?」と聞いてくる。

 沈黙する私を見て、ダメだったのかと肩を落としている。

「いや、いいんだよ。ダメ元だったしね」と自分を励まし始めたかんちゃんだが、私は、ニヤリと笑って、

「なんてね。魔力ある!あるわよかんちゃん。ピートさんの半分くらいあるわ!その省エネ腕輪のチャージなら自前の魔力でできるわよ。省エネ仕様にした私に感謝なさい!」と、ドドーンと胸を張ってみた。

「ありがとう!ユズ!」と私へ感謝するかんちゃんに、

「寛太。感謝なら神にするがよかろう」とカケル様は訂正を求めた。そりゃそうよね。

 神様!かんちゃんに魔力をくれてありがとう!



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