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聖女と僕のやりすぎお忍び冒険譚  作者: グーグー


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10.護衛兵ピートの申し出

 ***光太***


 僕の弟は非常に可愛い。幼いころから、ずっと見て来た大切な弟だ。嘘をつくときに少し首をかしげる癖や、虚勢を張りたいときにそらす背の角度まで把握している。不安な時に柚子や僕たち【兄ちゃんズ】を探すための目線のタイミングまで分かっている。

 そんな弟が、手の届かない鏡の向こうで必死に虚勢を張っているのを見る。

 もう、頑張らなくてもいい。帰ってこいと言えたらどんなにいいか。

 それが無理でも、せめて頭をなでたり肩をたたくことが出来たなら……。遠くから言葉で励まして、ただただ見守ることしか出来ないとは。鏡に映らない背中の後ろで、僕は血が出る程強くこぶしを握り締めていた。


 鏡の通信を終えて、渉からひそかに聞かされた寛太の現実。足を切り落とされた!?毒を盛られた!?

 怒りに任せて鏡を一枚ぶち抜いた。絶対にあっちに行ってやる!

 渉をシスコンだと笑える立場じゃない。割れた鏡から見返す自分の顔は、どうしようもない怒りでか、知らない人の顔に見えた。


 ***寛太***


 兄たちから毎日呼び出され、カケル様がうんざりするのは当然の結果だった。が、もしかしたら、なにか良いアイデアをひねり出しそうな【兄ちゃんズ】なので、カケル様には犠牲になってもらおう。


 そして、カケル様が、聖職者への説得という名の、一方的な宣言をした。

「柚子と寛太は冒険者として生活をしながら、世界中の祠を回って聖女の役目を果たすことになったで、そのようにな」と。

 大聖堂は上へ下への大騒ぎとなったが、教会で神の次に尊い聖獣様の言葉に逆らうものがいるはずはなかった。


 初めからかなりの生活費と上級冒険者でもめったには持てないアイテムを持たされて送り出されることになったが、本人たちは異世界人の為、全くその価値に気付いていなかった。勿論聖獣であるカケル様が気づくはずもない。


 それを指摘してくれたのは、いつも側でアドバイスしてくれている護衛兵のピートだった。ピートは自分が冒険者の話を僕に聞かせた事が、今回の大騒動のきっかけになっていることを重々承知していたので、

「聖獣様、柚子様、寛太様、私も同行させてはいただけませんか?幸い私はAランク冒険者でもあります。皆さんにアドバイスも出来るでしょうし、旅には大人が必要でしょう」と申し出た。


 この世界で一番気心の知れた相手の申し出を、三人は喜んで受け入れた。

「でも、家族はいいの?奥様とかいたら迷惑はかけられないわ」と心配する柚子に、

「改めまして自己紹介いたしましょう。私はピート、27歳独身です。商家の三男坊ですので、家を出て冒険者になりました。得意魔法は高速移動です。この魔法はかなり有用で、あっという間にAランク冒険者になり、冒険者ギルドのギルドマスターから教会の護衛兵に推薦されました」

「もてそうなのに独身なんだ!」

「ギルマス!!」

 柚子と僕はそれぞれ別のリアクションをして、

「「そこなの?」」と同じリアクションをお互いに返した。


 教皇ナルドは、お目付け役を送り込む手間も気苦労もなく、勝手に決まっていたことに心から安堵していた。

 各地の教会に配置されている遠距離通信の使用の許可証を渡すので、逐次報告は必須だということ、入用なものの補給を遠慮して不便を強いることがないようにとピートに細かく指示を出していた。



 まずはここ大聖堂のあるクリシュナ国、王都シュナーにある、世界最大規模のギルドにいって冒険者登録をすることになった。

 ピートはパーティーリーダーをかたくなに拒否したが、どう考えても登録したてのFランクの柚子と僕では役者不足だからという説得に折れてくれた。


「ギルマスってどんな人だろう?」とワクワクが止まらない僕に、

「ギルマスって略すの通っぽいわね。かんちゃんって勉強ばっかりしていたのに、冒険物にも詳しいのね」と茶化してきた。

「あのねユズ。僕は勉強の他にも本も読んでいたの。読書好きなの。ユズは座って本を読んでいたら、すぐに『勉強なんてやめて遊びに行きましょう!』って言ってタイトルなんて碌に見てないだろう?」

「う~ん。そうだったかしら?小説よりアニメ派だし。でも渉兄よりましよ。ゲーム化されるまで待つってツワモノのゲーマーだもの」

「まあ、確かに。僕も堅い本は学校で指定されていた本しか読んでないから読書好きと言ったら笑われるかもしれないけどね」

「いいじゃない、そんなこと。今となっては予備知識豊富ってことよ。それより魔物図鑑でも借りてきましょう。かんちゃんの大好きなお勉強タイムよ!」といってバチンと背中をたたかれた。

 苦笑いしながらも、軽い足取りで図書室に向かった。


 数日後に出発を控えた頃、クリシュナ王宮から、聖女様聖獣様寛太様にお目通り願いたいとの連絡がきた。

 どうやら、王宮の人は、教会からお呼びがかかって僕らと会える日を楽しみに待っていたらしい。だがそんな機会も設けられず旅立つと聞かされて焦って連絡をしてきたようだ。

 ナルドは、「ワーナー教会は国という枠にとらわれませんので、無視しても構わないですよ」という。

「すごいわね。一国の王様を無視できちゃうんだ。聖女ってこわ~い!」と柚子は自分自身の身分を茶化している。


 カケル様は無邪気に、大昔王宮に『破邪の剣』を預けたからそれを取りに行こうと言い出した。そしてナルドに先触れ役を申し付けた。

 

 大昔……、よくよく聞くと二千年以上前らしい。

「残ってるかな?残っててもメンテナンスされてるのかな?されてなかったら今頃王宮の人達って地獄をみているよね」と想像して勝手に同情してしまう。



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