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遭遇

30分またも遅れました、申し訳ない!よろしくお願いします。

 翌朝、かずさは駅舎の壁により掛かっていた。

 エレナから貰った薄い桃色スカートの伝統衣装を身に着け、革製のショルダーバッグを下げたかずさは布で包んだハンス手作りのサンドイッチを抱えている。

 かずさは布の中身を除きながら食べるのが楽しみで自然と笑みがこぼれる。


 ハンスは入り口近くにあるチケット売り場でこれから乗る汽車のチケットを買っている。

 

 かずさが立ったまま再び駅舎内を見回しているとハンスが向かいから二枚のチケットを持って走ってきた。

「悪い、待たせたな。汽車はもう乗れるらしいからさっそく乗るか」

「うん」


 二人は並んでホームに停車している汽車へと向かう。

 朝の早い時間なのもあってか、以前来た時よりは人が少ない。


「コンテストは11時から始まるんだよね」

 確認のために尋ねたかずさにハンスは頷いて答える。

「そうだ。今が7時だから.....汽車で2時間で、到着は大体9時だな。それで城がコンテスト会場らしいから、城へ向かう間に城下町を少し見るくらいの余裕はありそうだな」

「楽しみだなぁ」

 

昨日、帰る前にロビンには何処で何時にコンテストが開かれるか聞いていた。

 当の本人は言ってなかったっけ、ととびけた顔をしていたが、こちらが尋ねなかったら行かなくても良かったんじゃないか、とハンスは今になって気づく。


 しかし隣のかずさの楽しそうな表情を見ているだけで、まあいいか、と思えるのだから自分はとことんこの少女に弱い。



 二人はホームで全身黒光りした汽車に乗り込む。

 ハンスが取ったチケットは一番安い三等車の席で、主に一般庶民が乗る席だ。


 車内は板張りになっていて、両側に二隻ずつ設置された席も木製で、座るためのクッションが取り付けられているだけの簡素な造りだ。 

 車内には子供から大人まで既に乗り込んでいて、賑わっている。


 ハンスとかずさは通路の右側の空いた席を見つけると、かずさが窓側に、ハンスが通路側に座った。

 二人は座ると物珍しそうに車内を見回す。


 その後も続々と客が乗り込み、しばらくすると駅員の笛を拭く音とともに、汽笛の音が鳴り響く。

 警笛の轟音の後、ゆっくりと走り出した汽車は徐々にその速度を早めていく。


 走り出した後、かずさと二人は引き続き興味深そうに車窓の外を見る。走り出して、外の汽車の煙が消えると、かずさは車窓を開け、二人は顔を少しだけ出して外の景色を見る。

 

 シェーネ川の横を走る汽車は畑や牧草地、緩やかな起伏の丘など次々と駆け抜けていく。


「わぁ~!」

 かずさは流れていく景色を興味深そうに眺めている。


 ハンスはそんなかずさにふと疑問に思ったことを聞いてみる。

「アンタが全力で走ったらこれくらい早いのか」

 かずさは振り返ると笑顔で言う。

「まさか~」

 ハンスはその返答に、超人的な能力もそこまででは無かったかと、思っているとかずさはすぐに言葉を続ける。

「全力がこんなに遅いわけないよ~」

「......そ、そうか」

 そっちか、とハンスは驚きつつかずさの能力を過小評価したことを反省する。

 

 二人が雑談していると、車両の連結部分のドアが開き、男性が三人入ってきた。

 しかしこの三人の服装は身なりも整っていて、見るからに上流階級といった出で立ちだ。

「マルコ様、勝手に歩いていかないでください。我々の後に続いて下さらないと身の安全を保障できません」

 

 紺色の紳士服を来た男が先頭の男に言う。

 先頭を歩く男は後ろの男の言葉など気にも留めない様子でずんずん進みこちらに近づいてくる。


 男は燃えるような短い赤髪に灰色の瞳を持ち、切れ長の目が特徴的な端正な顔立ちをしている。

 身長はハンスより少し大きいくらいだ。後ろの従者であろう二人の男の方がガタイも圧倒的に大きいのにどこか威圧感がある。

「気にする必要なんてないよ。もし私が負傷したのなら私の実力もその程度だってことだろう」

 男は涼しげな顔をしてそう言う。

「マルコ様......」

 従者の男は困った様に呟く。


 ハンスとかずさは前から歩いてきたその男たちを、車両の他の客達と同様に驚きながら見つめていた。

 すると赤髪の男が、目の前を通るとき、かずさ達の方を一瞥すると、その視線をピタリと止めた。

 しっかりとかずさを視線にとらえた赤髪の男に、ハンスは不審に思う。


「おやおや、この列車にも珍しい客がいるんだね。東の人間か......ん?」


 何か疑問に思ったのか、男はハンスの目の前でかずさに顔を近づけるとじっと見つめて呟く。


「しかし、東の人間の瞳はこんなに瞳の色をしていたかな......?」


 ごくり、とかずさの喉が鳴る。

 動揺を悟られないように努めて、かずさは何とか言葉を振り絞る。

「ち、父がこの地方の人間なので、瞳もこんな色なのです......」

 苦し紛れの弁明だが、一応嘘は言っていないため、嘘が苦手なかずさも大きな動揺は表に出なかった。

「へえ、そうかい。失礼したね、お嬢さん。良い旅を」

 そう言うと男は連れの者たちと共に颯爽と車両の中を歩き、去って行った。


「なんだったんだ......大丈夫か、かずさ」

 ハンスがかずさを見ると、かずさの顔には大量の汗が出ていた。

「き、緊張したぁ~!ふ、不意打ち過ぎるよ......」

「お、おう、頑張ったな。よくあの場でそれらしい理由を思いついたな」

 ハンスは鞄からハンカチを取り出し、かずさに渡す。

 ありがとう、と言ってハンカチを受け取ったかずさは額の汗を拭いつつ、ふう、と息をついた。


次回は明日の0時頃に投稿予定です。よろしくお願いします。

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