表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
消せない思い出をキミに  作者: 日向千秋
第二章 学生決闘編
PR
65/130

フィンの覚悟

 レオポルト達が隣の控室から無言で出て行ったのを見てからかずさ、ハンス、ティナ、マチルダの四人は再び控室に戻った。プライドをズタズタにされたレオポルトが何をしでかすかわからないと警戒したが、杞憂に終わった。


 身に着けていた防具とかつらを脱いだかずさはやり切った達成感でいっぱいだ。しかし、その顔には汗一つかいていない。

 脱ぎ終わったかずさに、ティナは言う。

「かずさ、怪我の具合はどう?よければ見せてくれる?」

 聞かれたかずさはいいよ、と答えると袖をまくり、右腕に巻いてあった包帯を取った。

 傷は深くはないが、手のひらほどあり小さくはない。


 ティナは申し訳なさそうに言う。

「痛かったでしょう......」

 そんなティナに対してかずさはケロリとした顔で答える。

「ううん、全然。こんなの怪我でも何でもないよ。明日には治ってると思うし。さすがに一時間くらいしないと傷はふさがらないけどね」

 そこは能力者。通常ではあり得ない人間離れした回復力を持つ。

「そう......でも痛めた事にはかわりないわ。今日くらいは安静にしときなさい」

「はーい」

 心配しているティナにかずさが素直な返事をした時、控室の扉がノックされた。

 

 慌てて鎧兜を再び被るかずさ。

 かずさがしっかり顔を隠した事を確認したマチルダは扉に近づき、開ける。

 するとそこには決闘前に来ていた二人、女装したフィンとヘンリーがいた。


 フィンは部屋に入ると、一番に鎧兜を被ったかずさの元へと近づいた。そして、深く頭を下げる。

「こ、ここ、今回は、本当にありがとうございましたっ!」

 突然のお礼にかずさは驚く。

「ボ、ボクのために、け、怪我までさせてしまって......ごごご、ごめんなさい!」

 フィンの謝罪の言葉に、言葉を返せないかずさは謝罪は必要ないと、首を降る。目の前の強く寛大な心を持った騎士(ナイト)にフィンは感極まる。

「騎士様ぁあ......」

 

 しかし、フィンはかずさの腕の傷に気づくと、途端に心配そうに尋ねる。

「その傷、すごく痛そうです......」

 フィンがそう言うとティナが前に出てきて言いにくそうに告げる。

「その傷、なのだけれど......あなたの代役が負った傷はあなたも持っていないとおかしくなるの......だから......」


 その話を聞いたフィンはティナを見てぽかんとする。

「今からあなたには同じ傷を負ってもらわないといけないの......」

 申し訳なさそうにティナは少し目を逸らして告げた。

 予想外の事態にフィンの顔は真っ青になる。

「ボ、ボク痛いの嫌だよぉ!あ、そうだ包帯だけ巻いとけばごまかせるんじゃ......」

 一連のやり取りを後ろから静かに見ていたヘンリーもフィンに言う。

「仕方ないじゃないか、フィン。決闘で受けた傷は大学の教授が医者として責任を持って経過観察するんだ。見せろと言われて傷がないんじゃ、疑われるだろう」

 ヘンリーの筋の通った答えにフィンは項垂れる。

「そ、そんなぁあ~......」

 かずさは落ち込むフィンに、怪我をしたのは自分の責任なのにフィンにも傷を負わせる事になり、この上なく申し訳なく思ったかずさは土下座をしようと片膝をついた。

 その様子をみたハンスが慌てて止める。

「おいおいおい、何やってるんだ。アンタが謝ることないだろう」

 無理やりハンスに立ち上がらされたかずさは、でも、と鎧の隙間から目で訴えかける。


 しかしハンスは、かずさは感謝されこそすれ謝る必要は無いと分かっているため、絶対に謝らせない、とかずさの腕を掴んだまま離さない。



 そんな二人のやり取りを見たフィンは弱々しく、何か口にした。

「......る」

「フィン、何か言った?」

 かずさを見ていた一同はフィンが何を言ったかよく聞き取れなかったため、ティナが聞き返す。

 フィンは今度は勇気を振り絞ったように大きな声を出す。

「する!するよ!傷、つくるよっ!き、騎士様がここまで身体を張ってくれたのに、ボ、ボクだけ逃げるわけにはいかないじゃないかっ」

 いつにないフィンの力強い言葉に一同は驚く。

 ヘンリーが確認する。

「本当に大丈夫なのか?」

 怖くて仕方ないのか既に涙目になった顔を上げ、フィンは大きく頷く。


 それを見たティナは、大きく頷いた。

「よく言ったわ、フィン。ごめんなさい、そしてありがとう。そんなあなたに敬意を表して、一番切れ味の良いナイフで一瞬で終わらせてあげるわね。マチルダ」

 呼ばれたマチルダは、スカートの下に隠された暗器の一つであろう、刃が研がれた小型ナイフを手に持つと、つかつかとフィンの元へと近づく。

「ひぃいい......っ!」

 迫りくるマチルダに思わず身を引くフィンをヘンリーが後ろから肩をもって逃げないように抑える。


 あまりに怯えるフィンが不憫で、かずさは心の中で思わず謝る。

 フィンに近づいたマチルダはそのままフィンの右腕の袖をまくり上げ、かずさの傷とまったく同じ位置にナイフを切り入れる。

「ひぃいいい~~~!!!」

 フィンの悲鳴が室内に響きわたった。



月曜に間に合わなくて本当に申し訳ないです......!次回は金曜投稿予定です。二章はたぶん次回かその次で終わります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ