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思わぬ伝手

投稿遅くなりすみません!!よろしくお願いします!

 昼営業の片付けが終わると、かずさはエレナにこれから出かける事を伝え、鞄を持って店を出た。

 ちなみに本日のかずさの衣装は出勤二日目と同じ、黄緑色と白を基調とした、ひざ下ロング丈スカートの伝統衣装だ。

 「行ってきまーす!」

 長いスカートをふわりと翻し、かずさは元気よく外に出て行った。

 そんなかずさを修練のため一緒に行けないハンスは複雑な表情でキッチンから見送っていた。

 

 ハンスは未だにティナを信用していない。今回の件もティナがかずさをどんどん危険な方へと巻き込んでいっているようにしか思えなかった。


 かずさが外に出るとティナとマチルダが扉の前で待っていた。

「お待たせしました。......あれ、ソフィーさんは?」

 先ほどまでいた、初めて食べるレッカーの料理に感動していたソフィーの姿がないのをかずさは疑問に思った。


 ティナは不思議そうな顔をするかずさに答える。

「あの子は午後から別の講義があるから大学に戻ったわ。それにこの買い出しは決闘のためなんだから、一緒に居てもらっちゃ困るのよ」

 答えたティナになるほど、とかずさは納得した。

「じゃ、行くわよ」

 ティナは広場側を通って商店街の方に向かって歩き出す。

 その後にかずさとマチルダが続く。


 ティナの隣に並んだかずさは尋ねる。

「で、どこに行くの」

 ティナはかずさを一瞥してから笑って答える。

「以前、ここの公爵様から聞いてたのよ。そこに行けば何でも揃うってね」

 意味深な笑みを浮かべるティナにかずさは首を傾げながらもその目的地へと歩を進める。


 着いた先はかずさも何度も訪れた事のある、こじんまりした二階建ての木組み造りの店だった。

 かずさは思わず建物を見上げて口をあんぐりさせる。

「ここ……?」

 かずさの戸惑う声にティナはしっかりと答える。

「ここよ」


 そしてティナは扉に着いた鈴を鳴らしながら、扉を開け中に入って行く。

「お邪魔するわね」

 中に入ったティナとマチルダを追ってかずさも慌てて店に入る。

 

 けして広くはない店内のカウンターには腰が曲がった白髪の老婆が座っていた。グラスコードの付いた色つきレンズが特徴的な眼鏡をかけたこの店の店主、ヘルケだ。

 ティナはカウンターに迷わず行き、ヘルケに声をかける。

「あなたが、ここの店主ね。私たち、すぐに手に入れたいものがあるの」

 ヘルケはティナを見ると眼鏡越しに目を細め、しばらく見つめると、ああ、と声を上げた。

「アンタたちが欲しいもの......ね。ちょっと待ってな」

 そういうと店の奥へと消えてしまった。


 かずさは何が何だかわからずにただ二人のやり取りをただ見ていた。


 しばらくして奥から出てきたヘルケは何やら布に包んだ大きな物を持ってきた。その中からわずかに金属音がする。

 ガシャ、とそれをカウンターの上に置くと、ヘルケはティナを見て言った。

「お探しの物はこれかい?」

 布の中身をヘルケが見せる。

 中からはなんと、銀色に光る鎧兜(よろいかぶと)胸甲(きゅうこう)が現れた。

 更にそのサイズも成人男性用ではなく小ぶりで、それこそかずさにピッタリ合うサイズだ。

 

 それを見たティナはゴクリとつばを飲み込むと口角を上げた。

「ふ......何も言わなくても大丈夫、とは聞いていたけれど……さすがは公爵様お抱えの店......恐れ入ったわ......っ」


 そもそも甲冑(かっちゅう)などヘルケ商店のような街の小さな店が扱っているわけがない。

 度重なるあり得ない状況にかずさはもう訳が分からず、目の前にある鎧とヘルケとティナを何度も見る。


ーー公爵様お抱え......?どうして甲冑がここに......なぜヘルケさんが決闘の事を知って......?


 馴染みの店の初めて知る事実にかずさの頭の中は絶賛混乱中だ。


 ふと何かに気づいたティナがヘルケに尋ねる。

「この茶色いもしゃもしゃしたものは何?」

 ティナは鎧と一緒に包まれていた謎の茶色い毛の塊を指さした。

 その問いにヘルケは事もなげに答える。

「かつらだよ。万が一があっちゃいけないからね、持っていきな」


 なるほど、確かにフィンの髪質に似ている。

 

 それを聞いたかずさは混乱している頭の中で故郷で読んだ小説の老婆が死体から髪を抜き集めるシーンを思い出した。

「ヘルケさんが......手づから......?」

「なわけあるかね」

 ヘルケからすかさずツッコミとカウンター横においてあった手のひらサイズの定番伝統菓子”雪玉”がかずさの頭にスコーンッと飛んだ。


 ふうと、一息吐くとヘルケは言う。

「もちろん業者から仕入れたもんだよ、あとその毛も動物の毛さ」


 それを聞いたティナは不敵な笑みを浮かべて言う。

「さすが、抜かりないわね......」


 ヘルケも笑顔で返す。

「お姫様にお褒めいただけるとは光栄だね。お代は結構だよ。クリスティーナ様が尋ねてくるような事があれば助けるようにと公爵様から言われていたからね」


 その言葉にティナは呆れた顔になる。

「あの方も全部お見通しってわけね......」


 そしてまた、いつものように勝気な笑顔を作ったティナは言う。

「わかったわ。感謝しますわヘルケさん。マチルダこれを全部家まで持って行けるかしら。重そうなら持つわよ」

 マチルダは横から出てきてすかさず答える。

「問題ありません」

 二人が出ていく準備をしている間、ヘルケはかずさに静かに言った。

「この事は誰にも内緒だよ。ハンスにもさ」

 いつも店で見せてくれる優しい笑顔のヘルケに、ホッとしたかずさは少し困った笑顔で答える。

「わかりました。誰にも言いません」

 それを聞いたヘルケは満足そうに頷いた。



 店を出た三人は一旦解散することにした。

 別れ際、ティナはかずさに言う。

「今日、仕事が終わったら私の家にハンスさんと来てくれるかしら。早速決闘の練習をした方が良いと思うから」

 かずさが頷いて答えた。

「うん、わかった。私たち明日、明後日仕事お休みになったから大丈夫だと思う。ハンスに伝えておくね」

「お願いね。じゃあ、また夜に」

 ティナは手を振り、マチルダは静かに礼をして去っていく。

 かずさも手を振ってから、店へと戻って行った。



次回は月曜の朝までには投稿予定です!よろしくです。

あとかずさがあらぬ想像したシーン、後で消すかもです〜!

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