出会い②
少女は片手で、男の腕をねじ上げていた。
ゴキッという不快な音が響き、男はそのまま地面でのたうち回る。
その様子を見た他の野盗たちは一気に殺気立つ。
「おい、仲間に何してくれてんだぁ?!優しくしてやろうと思ったが、お前はもう死刑だ!!弄んだらソッコー殺s…」
話ていた男は急に腹を抑えてその場に倒れ込む。
男の目の前にはいつの間にか少女がいた。
泡を吹く男をしり目に他の野盗たちが少女に襲い掛かっていく。
多勢に無勢。しかも少女一人だ。
にもかかわらず、その戦力差など事も無さげに少女は次々と野盗たちの剣を避けていく。
ハンスは影からその少女をずっと見ていた。
腰から二本の小刀を抜いた少女は向かってくる男たちを易々と避けながら、腕や足を切っていく。
切られた男たちは皆、剣を握れなくなったり、立てなくなったりしている。おそらく、少女は手足の腱を的確に切っていっているのだ。
身軽に飛び跳ね、淡々と敵を倒していくいくその姿はまるで剣舞でも舞っているかのように美しかった。
少女の首に下がっているネックレスが夕陽に反射し、赤く光る――。
最後に頭領らしき男の足を切った後、少女は夕陽を背に此方を振り返った。
少女の蒼い大きな瞳はらんらんと輝き、目が合った瞬間、ハンスは息をするのを忘れていた。
しかし目があったのは一瞬で、少女はそのまま倒れてしまった。
地面の上で少女は微動だにしない。
ハンスは一刻も早く立ち去りたかったが、偶然とはいえ救ってくれた少女を置いていくのには気が引けた。
野盗たちは気絶していたり、痛みで転げまわっていたりとまともに動けないようではあったが、このまま放置すれば危険である事には変わらない。
このまま置いていけないと、ハンスは勇気を出して草影から飛び出し、少女を抱えて急いでその場を離れた。