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トラウマ

誤字が消えない、、?!くらいに誤字だらけでいつもすみませんっ!

 やはりハンスの予想通り、主なキノコや木の実は大方採られていたため、仕方なく最低限の山菜を採ってから二人は来た道を引き返していた。


 ちょうど街の広場に差し掛かったところ、一人の女の子が噴水の前で立っていた。

 まだ7歳くらいだろうか。肩まである赤毛に翠の瞳の女の子は頭にピンクのリボンをつけている。

 淡い水色のワンピースの裾を両手でひっぱりながら、先ほどからずっと辺りを忙し無く見ている。よく見ると今にも泣き出しそうだ。

 泣く寸前の女の子を見つけて、かずさはすぐさま駆け寄ってしゃがむと女の子と目線を合わせた。

「君、大丈夫?どうしたの?」

「お、かあさ、おかあさんが…いなくなっちゃったぁぁぁ〜」

 女の子は必死に状況を伝えようと言葉を絞り出したが、話し出した途端、涙があふれてきてしまったようだ。

 泣き出す女の子をかずさは落ち着かせるように手で両手を優しく包み込む。

「大丈夫、お姉ちゃん達がすぐに見つけてあげるからね。お母さん、どんな格好してたかわかる?」

「うえっ...う...えっと...おねえちゃんと似た格好してて...でも黒のスカートで...」

「アンナ?!どこ行ってたの!探したのよ!」

 女の子が振り返ると、広場の反対側に息を荒げた、女の子に似た赤毛の女性が立っていた。かずさはもう大丈夫だと、女の子の手を離すと、駆け寄ってきた女性は女の子を抱きしめた。

「心配したんだからね...!」

「ごめん...なさい」

 安心したのかアンナと呼ばれた女の子は母親の胸で再び泣き出した。

 

 しばらく抱き合った母娘は、ハンスとかずさに向かって礼をする。

「娘を見ていただきありがとうございました」

「おねえちゃん、ありがとう」

 先ほどの不安そうな泣き顔から一変、女の子は晴れやかにはにかんだ。

 それを見たかずさは胸を撫で下ろす。

「いえ、私は何も。無事におかあさん見つかってよかったです。ね、ハンス」

 言葉を投げかけ振り向くと、そこには蒼白な顔で佇むハンスがいた。様子が明らかにおかしい。


 手を振って母娘と別れてから、二人は少し休憩しようと広場のベンチに腰掛けた。

「ハンス、大丈夫?体調悪いなら今日はもう家で休んだら?」

 俯いて座るハンスは首を振り、大丈夫、とだけ答えた。

 明らかに大丈夫そうではない様子に、かずさは心配しつつも本人がそういうのなら、とこれ以上何も言えなかった。

 すると、ハンスが弱々しく口を開く。

「ダメ...なんだ」

「?何が、ダメなの?」

「小さな女の子を見ると、偶に、どうしようもなく...ダメなんだ...」

 その言葉でかずさはハンスの言わんとすることを察した。

 先日、ヘルケから聞いたハンスの過去。妹のものであったろう殺風景な部屋。

 ハンスは小さな女の子を見ると、妹のことを思い出してしまい、”ダメ”になるのだという。

 ハンスはベンチの背にもたれ掛かって、広場の空を見る。

 辺りには建物やオイル灯などいたるところから祭り用のランタンやら、色鮮やかな花束がつるされている。

 それを見て思わずハンスは片腕で目を塞ぐ。


ーー思い出してしまう。いつかの(ルナ)と歩いた祭りの風景を。


『お兄ちゃん。めっちゃきれいやね』

 手を繋いで、ランタンに照らされた夜の道を歩く。

『お兄ちゃん、連れてきてくれてありがとうね。こんな楽しいことなかよ!』

 いつになく興奮して、足早に自分の手を引き振り向く妹の嬉しそうな笑顔。


「ルナ...ごめん、オレ...何もっ...!」

 

 それは、もう何処にもいない相手に向けた言葉。後悔の言葉。

 小さな女の子を見ることで開いてしまう記憶の蓋。

 

 かずさは女の子一人見ただけで、ここまで崩れるほどにハンスが追い込まれているとは思いもしなかった。

 そんな、ハンスの様子が悲しくて、痛々しくてーー。

 

 かずさはただ隣でハンスの震える手を握ることしかできなかった。

妹のルナはイメージで言うと福岡弁的な感じです。(〜ばい、とか言わせないので厳密には違います)

母親が別の地方出身なのでルナも母譲りの方言になりました。小さな子だけど、包容力と温かみのある子なのでそんなイメージも込めて。

さて、第一章終わりに向けて物語はこれから加速していきます。

お付き合いしていただけると大変うれしいです。


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