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子龍よ、天を頂け  作者: ハイカラ
リヴィングス覇龍国
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41話 日の出前

「最終確認だ。俺が率いる第1第2兵団が西部砦の防衛。カウレスが率いる第3第4兵団が北部砦の防衛。第5第6兵団が南部砦の防衛だ。各兵団は各砦防衛部隊と連携し龍害の殲滅にあたれ。ドラグーン隊はうち漏らした龍の殲滅だ。いいな、絶対に中央には通すなよ」


大広間にて終末の龍害へ対応する兵団を分ける。この場にいるのはその兵団の団長たち、それと各砦の司令官、ドラグーン隊隊長、そして親衛隊と俺たち、それにヴォルフ。すでに西部戦線で戦っていた各兵団はテノティトに戻ってきている。元々最終決戦はこの都市でする手筈だったのだろう。


「龍域への対処法は考えなくていい。思う存分龍を殺せ。そして報告にあったと思うがアギナルドという先祖返りが龍側に付いてる。他にも仲間がいるかもしれねえ。現れ次第、中央へ報告を回せ。いいか無理に戦うな」


結局アギナルドとの戦闘はカウレスが担うこととなった。本人がそう言いだし周りもそれに納得している。その場合に備えて南部はかなり戦力が多い。親衛隊がヨウムさん以外全員いて第3第4兵団は損耗が一番少ないらしい。


「各砦に誘導している龍害の詳細は各自確認しておけよ。この戦いにこの国の存亡がかかっている。いいか必ず守り通せ。以上、解散だ。子龍の2人とレティシアそれとヴォルフ、お前たちは残れ」


他の人たちが退室していく。カウレスもダースニック王に声をかけることなくその場を去る。後押しした手まえ少しだけ気にしてしまう。カウレスとダースニック王の問題だとしても、だ。

全員が退室し終わった後、ダースニック王が話始める。


「で、だ。龍域の件了承してくれるか、ユキ」


「うん、するよ王様。それで天羽君たちが楽になるならそれでいいよ」


「助かる。正直これが無ければかなりきつい戦いを強いられてはずだ。改めて感謝する」


実際龍域での戦闘はあまりにも龍に有利過ぎる。それがあるかないかで戦い方に雲泥の差が出てしまう。もしあのまま雪が龍域を使えない状態だったら、果たして俺たちに勝ちの目はあったのだろうか。


「ユキとレティシアは中央だ。アモウたちは北部の応援。それでいいか?」


レティシアは魔法使いの伝達網の中心に抜擢されている。それに加えて雪の護衛も兼ねているのだろう。テノティト全域、それに戦闘区域も含めればそれはモースウィッグの比じゃない。龍域を刻印している間は雪の負担は計り知れない。だからこそ、再三ダースニック王は礼を述べているのだろう。

もちろん雪の護衛もレティだけではなく他にもいるのだろうが、友人がいるという状況はきっと何よりも心強いはずだ。


「問題ないです。ヴォルフもそれでいいか?」


「いいよ。まあユキのことは心配だけど、それはあなたたちに任せるしかないみたいだ」


「悪いな、おまえのこともこの戦争が終わり次第詳しく調べる。今は協力してくれ」


ヴォルフのことも結局まだ分からずじまいだ。記憶も戻らず、どこにいたかがわかる記録もない。そもそもこの国の人でないのなら、探しても無駄そうだけれど、あてはあるのだろうか

けれど彼が一緒に戦ってくれることに変わりない。出自不明だとしても強力な仲間に違いは無い。


「龍害がくるまであと数刻だ。おまえたちは急いで第5、6兵団と合流しろ。あそこは風龍と水龍の老級が居るはずだ。気を引き締めてかかれ」


「はい。レティ、雪のことよろしくな」


「任せて下さい。ヴォルフさん、アモウのこと頼みますね」


「頼まれたよ。まあ彼が僕の言うことを聞くかは分かりませんけどね。それじゃあユキ行ってきます」


「うん、2人とも気を付けてね」


俺とヴォルフは部屋を後にする。時間もあまりない、あいつに頼んだ魔術がどの程度作用するかも未知数だ。決まれば優位に働くし、気づかれても半日の猶予が出来る。後は観測している人たちの報告を待つしかないか。


「いいんですか、まだ話したりないこともあるでしょうに」


「別に、無いとは言わないけど死ぬつもりはないからな。帰った時に勝ったことを喜び合えばいいんじゃないか?」


誰にもこの戦いで死ぬかなんて分かりっこない。死ぬときは死ぬし、死なないときは死なない。でもなるべくは人が死なないように、犠牲が最小で済むように最善を選択していくしかない。


「それも、そうですね。なら先を急ぎましょう」


城にある龍舎へと走る。徒歩で南部砦に行くとなると時間もかかるし、開戦後しばらくはカノンに乗って戦うことだろう。老級が姿を見せるまでは数週間前のあの龍害と同じく、中級以下、もしくは上級を相手取るだけでいい。慣れ始めに足をすくわれることあるものの、もう何度も龍害と戦っている。


カノンに乗って南部砦へ向かう。今回は流石にアスターを雪に預けてきた。戦場では庇う余裕がないかもしれないからな。

北部砦は西部砦と同様に防衛設備が整っていた。上から眺めるだけでも備え付けの大砲がかなりの数あった。魔術的な大砲らしいが俺はそっち方向に明るくないからな、原理は分からない。


壁上に降下すると司令官と思しき人が出迎えてくれた。


「ようこそ子龍殿、それに異邦の協力者よ。南部砦を代表して歓迎します。私の名前はジーク・ゴドです。僭越ながらこの砦の司令官を務めさせてもらっています。平時ならば盛大にもてなしたいところですが、状況が状況ですのでね、すぐに作戦本部に案内します。どうぞこちらへ」


俺たち2人は見覚えのある部屋へと案内される。作りは殆ど西部と同じだな、迷うことはなさそうだ。

集まっているのはこの砦の司令官であるジークさん。そしてさっきの部屋にもいた第5兵団団長のケルン伯爵。同じく第6兵団団長のドミニカ侯爵。そして俺とヴォルフ。

席が近かったケルン伯爵が話しかけてきた


「また会いましたな御二人。ともに戦えること光栄に思います」


「ええ、俺も光栄に思います。ともにリヴィングスを守りましょう」


「ふふ、子龍殿そう気負われることもない」


俺の返しが堅苦しかったせいか、ドミニカ侯爵は緊張をほぐすように微笑みを浮かべている。


「気負い過ぎないのもどうかと思いますよ、侯爵殿。さて本題に入りましょう。我々が戦わなければならない龍の数は4000ほど、多くは無いが今のリヴィングスの戦力を見るに、勝率は高いとは言えません」


「とはいえこちらには子龍殿もいる。そう悲観することもないだろう。我々第5兵団は右翼から攻める。左翼は任せても構いませんか侯爵」


「ええ、もちろん。お二人は龍が減った方の陣営から回り込みそのまま老級の対処をお願いしたい。構いませんか」


戦術的なことは俺には分からない。そういうことは今までもほとんどカウレスに任せていたし、ちゃんと学んでいるわけでもない。こういうことは任せたほうが良い。下手に担ぎ上げられるよりかはましだ。


「もちろん、俺はあなたたちの決定に従いますよ。ヴォルフもそれでいいか?」


「大丈夫ですよ。僕は何でもいいです」


「道は我々が切り開きます。それにしても子龍殿はいいご友人を持たれましたな。実に羨ましい」


「ええ、頼りにしてます」


その後は細かいところの詰め。準備はし過ぎて損は無い。唯一の懸念点はやはりアギナルドだろう。戦場での不確定要素ほど怖いものは無いとカウレスは言っていた。いつどこかに現れるかもわからない。老級が見える脅威だとすればあいつは見えない脅威だ。そのことを常に意識しておかないと足元をすくわれかねない。

まだあいつが龍害の先頭に立ってきてくれるのなら幾分かはマシだっただろう。けどあいつは確実に最初は姿を現さない。もしかしたら、ブラックモアを使う可能性もある。本当に厄介だ。


「そうだアモウ、あの約束忘れていませんよね」


無事に準備は整い、後は龍害の出現を待つというところでヴォルフがそんなことを言ってきた。


「あの約束?悪い、また忘れてる。何かしてたか」


「ベルクスの時、何かおごってくれると言ってましたよね。この戦いが終わった後で構いませんから守ってくださいね」


ああそういえば、言っていた。咄嗟の約束だったし覚えてないのも無理はないが、言った本人が忘れるのは問題だろう。でも確かにまだあの約束は果たせていなかったな。とはいえリヴィングスの食糧事情はひっ迫している。あまり豪華なものはおごれそうにないな。


「もちろんいいが、あまりたくさんは無理だぞ、テノティトももう避難所のへの配当でほとんど尽き欠けているらしいから」


「構いませんよ。誰かに貰えることが嬉しいので、何ならアモウの手作りでも構いませんよ」


「いや、それは止めといたほうが良い。食えなくはないが食材の無駄だ」


俺は下手だからな、料理が。孤児院でももっぱら配膳の手伝いしかしていなかったし、こちらでも雪に頼りっきりだ。1人で出来るようになるべきなんだろうが、いささか苦手意識が付きすぎている。


「そこまで下手なんですか?逆に興味がわきましたね。雪の料理と食べ比べするのもいいかもしれません」


「やめてくれ、惨めな気持ちになるだけだ。でもそこまで食べたいなら、いいよ、作る。けど後悔するなよ」


「しませんよ。いざという時は無心で食べます」


「そうしてくれ」


そこで少し会話が途切れる。後に残るのは互いの龍が発する息遣いのみ。元から多弁な方でもないし、沈黙は苦じゃない。けど無性に誰かと話したくなるのは緊張しているからだろうか。

気負うな、と言われても気負ってしまうのはどうしようもないことだ。こればかりは個人の人間性だから。けどそれで動きが鈍らなければ問題は無い。結局後悔する原因を残すなと言いたかったんだろう。死ぬなら死力を尽くしたうえで死んだ方が確かに後悔はなさそうだ。


「きっと大丈夫ですよ」


「だな、悲観していたって仕方ないな」


遠くにかすかに見える山に黒々とした靄がかかる。それは西日に照らされ、燃えるような輝きを見せ、ここからでも鱗に反射する光に目がくらみそうになるほどの大群だった。

見渡す限りの色とりどり龍。人とは相容れない存在。俺や雪がきっかけとなり世界を終末へと加速させる龍害が姿を現した。


そして刻限を迎え、太陽が沈む(太陽が昇る)


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