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子龍よ、天を頂け  作者: ハイカラ
螺天の永遠墓標
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5話 魔術講座

 国王が退室したあと、フェリスさんが声をかけてきた。


「さあじゃあこれからの毎日は楽しい楽しい訓練ですよ。」


「訓練ですか?」


「はい訓練です!神龍を討伐するにせよ、この世界に生きるにせよ。生き残る力を身につけなければ生き残ることなんてできませんから。明日からは私が魔術を教えて差し上げます。」


 魔術と聞いたとき雪の顔がパァっと明るくなり、すぐに元気になった。さっきまで変える可能性がなくなったことに悲しんでいた感じだったが今では目の前の魔術という餌に食いついている。


「魔術私でも扱えるようになるんですか?フェリスさんのように空を飛んだりも?!」


「風属性に適性がある人は誰でも扱える簡単な魔術なので、ユキ様も適性があればできますよ。適性がなくても他の属性の魔術もとても楽しいものですから。」


 魔術に関して女子トークが花開く、魔術に関してはちょっとした嫌な思い出があるので、風の適性は無くてもいいかなとも思ってしまう。


「扱える魔術にも個人差があるんですか?適性とか属性とか言ってましたけど」


「そういった話は明日にしましょう。本当は今からでもしたいところですが、今日までお二人はゆっくりとお過ごしください。それじゃ部屋まで案内しますね」


 その後部屋まで案内してもらいゆっくり過ごした。



 ―翌日―

「それでは、今から魔術に関しての授業を始めます。」


 翌日俺たちはフェリスさんに連れなれて城のある一室に来ていた。なんでも魔術の訓練で使われる部屋で特別勘定に作ってあるそうだ。

「すみません、その前に質問いいですか。」


 授業を始める前にこっちに来てからずっと気になっていたことを質問する。


「どうして言語が理解できるか、でしょ?顔に出てましたよ、ずっと。一昨日から不思議に思ってたんじゃないですか?」


 雪も同じく不思議に思っていたそうで、賛同する。よほど顔に出ていたのかそれとも簡単に推察できたのか。


「お二人がこの世界の言語を理解できるのは、天龍様がこの世界で不便を感じないように、子龍として二人を作り変えるとき頭の中に知識を流し込んだと師匠から聞き及んでいます。」


 子龍として作り変える。改めて聞くともう自分が人じゃないことを実感させられる。しかし言語の知識を流し込むことが出来るならこの世界の知識のことをもっとくれてもいいだろうに。


「天龍様は長いこと我々と関わり合いを持っていませんでした。最近になってようやく子龍様を連れてくるとおっしゃりその後すぐになくなられてしまいました。ですからあまり当世に関する知識を持ち合わせておらず言語のみになってしまったのかと思います。」


 また質問する前に答えられた。まあ、当然の疑問なのだろう。


「さてでは気を取り直して、魔術の授業といきましょう。最初に魔術とは何なのかということですが、簡単に言ってしまえば龍が行う行為の縮小版だと思ってください。」


「龍の模倣?」


「はい、龍の模倣です。龍は生命として完璧ともいえます。どのような環境でも生きることが出来、たちまちその生態系の頂点へと君臨することが出来ます。その龍が狩りであれ生活であれ行うことを人でも扱えるようにしたのが魔術というものです。」


 龍の縮小版それが魔術の正体それならこの世界の住人は誰でも魔術を扱えることなのか?


「まず最初に魔術の使用といきたいところですが、最初は魔力の運用それに属性の適性について確認しましょうか」


 そう言ってフェリスさんは水の入った二つの桶を用意する。


「この水は魔術で生成された水で、魔力を流すことで流れを作ることが出来ます。これは魔力が多ければ多いほど大きく渦を作り、魔術の扱いが丁寧なほど綺麗な水流が出来ます。多くの人がこれで自分の実力を測るんですよ。さあ水の中に腕を入れてください。その中にある魔力を感じて」


 俺たちは桶の中に手を入れ魔力とやらを感じ取る。なかなか俺の水は動かない。何か体の中に感じるがそれをうまく外に流すことが出来ない。対して雪のほうは


 天井にまで届くような綺麗な渦が出来上がる。


「見て見て天羽君こんなにすごいよ。天羽君のほうはどう!?」


 満面の笑みを浮かべてこちらを見てくるが、残念なことにまだ俺のほうは水流は全く起きていない。


「おおーさすがは子龍様と言ったところですね。私でもこんな魔力量は持ち合わせていないですよ。アモウ様のほうはどれどれしっかり見して下さい…こちらもすごいですよ。」


 そういったきりまじまじと樽の中をのぞく、まったく水流がない水が雪のと比べて一体何がすごいというのだろう。


「これは私は初めて見ましたが、魔力の飽和現象ですね。物や魔術に込めることが出来る魔力量超えた魔力を放出しようとするときに魔力が完全に鎮静化する現象です。」


「でも俺全然魔力を扱っている気がしませんよ。ただ体の中にある魔力のようなものを感じるだけです」


 まったく外に出せている感じがないただただ血のように体の中を駆け回っているそんな感覚しかない。


「アモウ様は体外の魔力の操作があまり出来ていないようですね。ですが大量の魔力が流れ出ていますよ。この水はつけていると段々魔力が流れ出るようになっています。少しでも魔力があるならばうっすらと渦が見えるはずですが全く見えません。子龍様が魔力が全くないとは思えませんのでおそらく飽和現象だと思います。要するにたくさんの魔力があるってことですよ。」


 多くの魔力を持っている。けれどそれを雪みたいに扱えないなら意味がない。どうにかならないものだろうか。この世界を助けるといった手前何もできないのはあまりにも無力だ。


「それではユキ様のほうは適性検査をしましょう。ここに5属性の初級魔術の術式が書かれた紙があります。この通りの魔力を流してもらって、発動してみてください。ここにあるものは適性があればだれでも簡単に扱えるものですので。アモウ様はもうしばらく自分の魔力と向き合ってください。」


「ふふんそれじゃあ天羽君お先―」


 俺に得意げな顔を見せつつ魔術を行使しようとする。フェリスさんにもにべもない言葉により、俺はまだまだ樽と向かい合っている。


「それじゃこの火の魔術から、『フレイム・アロー』」


 そう唱えると手の先から勢いよく火でできた矢が、壁に向かって発射された。ズゴンと大きな音を立て壁に穴ができる。


「ええと、大丈夫ですよねフェリスさん。この部屋がんじょうだって。」


 雪は壁に穴をあけ焦ったように恐る恐るフェリスさん尋ねる。


「大丈夫ですよ。ここの壁はあとで私の姉が直しておくと思うので気にしないでください。それよりどんどん行きますよー。次はどの属性にしますか」


 少し腰が引けたのか慎重に選んでいき木属性の術式を選ぶ。


「今度は魔力を弱めて慎重に『ウッド・スピアー』」


 もう魔力の調整なんかできるのかと驚きつつも、確かに言葉の通り威力は弱まり先ほどの穴に激突した。


「それじゃあ次は風なんてどうです。さあさあどうです。どうです。」


 強く風を勧めてきてよほど自分の属性を使って欲しいのだろう。魔術を教える前はとても理知的に見えた顔が今では理科の実験を楽しむ子供にしか見えない。


「さっきと同じような感じで、『ウィンド・カッター』」


 さっきと同じく最初よりも弱い威力で壁に着弾する。それにしても全部攻撃的な魔術だな。他にも色々ありそうなのに。


「これはもしかしたらありえるのかも…でもそしたらアモウ様は」


 少しフェリスさんが考え込む。このままいけば雪は5属性全部を扱えそうだ、その俺の考えが的中したのか、残りも水の『ウォーター・ウィップ』も土の『ストーン・フォール』も見事成功させる。見て見てと雪ははしゃいでいたが対照的にフェリスさんは考え込む。


「すみません、師匠をよんできますので少しの間いませんが、その間は樽の訓練だけでおねがいします。」


 そう言って部屋を出る。かなり急いで部屋を出ていきノルディックさんを呼びに行く。


「なんだと思う?天羽君もしかしてわたしの才能がすごすぎて教育できないとかかな」


 雪は昨日帰れないことが分かって落ち込んだのを忘れたのかもうにんまりと得意げに言ってくる。


「俺はこのままだと何もできずに世界を救えそうにないのが一番悔しいよ。まあ魔術が使えなくても何とかして見せるけど。」


 なんて冗談交じりに言ってみるも気分は有頂天なのかこちらの話を聞かずに樽に手を入れ渦の大きさを調整したりしている。


 しばらくたち、ようやくフェリスさんがノルディックさんを連れて戻ってきた。


「まずは雪君5属性全ての適性おめでとう。私も初めて見るよ。だがそれと同時に天羽君はおそらく魔術を使うことが出来ない。その顔を見るに理由は何となくだが察しているようだね。」


 やっぱりと思うと同時に少し残念に思う。


「子龍は親である龍からその力を受け継ぐ。なら雪が全ての属性を使えるなら、俺にはその適正はないってわけだ。半分を過ぎたあたりでフェリスさんが考え込んでいたのはこのためでしょう?」


「その通り、よく昨日の話を理解しているね。私も可能性の一つには考えていたけど本当にそうなるとは」


 俺だって魔術は少しは使いたかったがないものねだりしても仕方がない。雪は申し訳なさそうにしているが気にする事でも無いだろう。


「あの天羽君…」


「いいって雪ないものは仕方がない。それに魔術がなくたっていくらでも戦う方法はあるんだぜ」


 今後はどうするかを考えようとしたとき、


「いいことを言うね天羽君。よし、そしたら君は午後は私に付いてきてくれ。君に紹介したい人がいるんだ。」



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